IF52話 怒りの視線
1日目の合宿が終了して、2日目の合宿の夜。
去年あんなことがあったのに合宿をやっている。っと言うのも。生徒たちが合宿をしたいという、意見が多かった。これを聞いた学園長は条件つきで、合宿をする事になった。本来は強制参加のところを自主性になり、合宿期間を短くして去年と一緒で騎士団による護衛が付く。これで参加する人としない人に別れると思ったが、騎士科と冒険科は全員参加。これはこれでどうなんだろうか? 参加したオレが言うのは可笑しいけど。だが合宿期間は3日だったので、合宿は明日で終わる。
風呂から上がったし、部屋に戻ったら寝ようかな。・・・そう言えば、モリス先輩たちが宿題をやるって言ってたな。今日は眠れないかな。
「―――おや。ラザは今風呂上りですか?」
「はい。マルル先生は今から入りに行くんですか?」
「いえ。ぼくはもう入りました。今は見回りしているようなもんですよ」
「そうですか。ではオレはこれで」
「あぁそう言えば。イゼベル先生はぼくの事を、何か言ってましたか?」
「いえ何も。そもそもそう言った話は全然出ませんよ。口を開けば冒険者についての話ばっかですよ」
「冒険者に関しての話だけですか・・・。イゼベル先生自身の話は?」
「それもほぼ冒険者時代の話ですね。こっちは参考になるので、真面目に聞いてますが」
「本当に恋とかの話は出て来ませんね・・・」
イゼベル先生はそう言うの興味無いからなぁ~。
「やはり一度はデートに誘った方が良いでしょうか?」
「何もしないよりかは、いいかもしれませんね。ただ行くか知りませんが」
「一度くらいは良いと言うと思いますがね。何処か良い場所はありますかね?」
「オレに聞きますか? 全くそう言うのは分かりませんよ」
「そうですか。これは他の人たちに聞いてみます」
「ぜひそうしてください。オレはこれで」
「はい。あまり夜更かしはしないでください」
マルル先生は見回りを再開する。マルル先生とプリシラがすれ違って、プリシラがこっちに来る。
「何をしておった?」
「マルル先生がまたイゼベル先生の事で話をしてた。未だにデートしてないみたい」
「まだしてなかったのか。まどろっこしいなぁ。サッサと告ればいいものの」
「何事にもタイミングが必要なんだろ。でもなぁ。肝心のイゼベル先生は、全くマルル先生の事が好きじゃ無いんだよなぁ・・・」
「前に聞いていたな。確かに好きとは言って無かったな。さっき告ればいいものの、と言ったが。訂正しよう。告ればフラれるな」
「フラれそうだな。・・・そろそろ出てきたらどうです?」
「―――立ち聞きしていて、すみませんでした」
「サラサ様でしたか。盗み聞きするほど、面白い話しだと思いましたか?」
「はい! 面白い話です!」
「随分と言い切るなぁ。他者の恋バナしが好きなのか?」
「好きです。数少ない自分の趣味です!」
「趣味ときましたか。これは他の人に言わないでくださいよ。マルル先生が困ると思いますので」
「分かっています。なので詳しく教えてください」
「口止め料だな。先ずは何処から話すんだ?」
「そうだな―――」
オレはサラサ様にマルル先生が、何故イゼベル先生の事が好きなのかを話す。
「完全に片思いですね。でもイゼベル先生は好きでは無い。これって告白しても断られるのでは?」
「断られますね。これを言わないでただ話を聞くのは、ちょっときついですよ」
「言えばいいだろ」
「言ったらかなり落胆するだろ・・・。本当にどうしたものだろうか」
「何も言わない方が良いかと」
「ですよね。とりあえずもう部屋に戻りますね。この話は誰にも言わないでください。言うとしても、エメリー様たちだけにしてください」
「エメリーさんたちにも言いません。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
サラサ様と別れて、オレたちは部屋に戻る。
次の日。午前は騎士科と模擬戦をして終わったら、王都に帰る。
「今回は何も無かったな」
「遭ったら困るのはこっちなんだが」
「困る事なんてあるのか? すぐに何とかするだろ。それに今回来ている騎士団は、第9より数は多いだろ」
「確かに多いな。全員女性だけど」
「珍しい騎士団だな。その騎士団におのこが入れば、さぞ大変な事になるだろうな」
「なるだろうな。仮にエリオットたちの中で、誰かがその騎士団に入団したら。頑張れとしか言えないな」
「他人事のようだが。まぁそれしか言えな。ところで主よ。そろそろ現実と向き合うべきではないか?」
「プリシラさん。折角忘れていたのに、何で現実に戻そうとするんですかね? このまま知らないフリをしますよ」
「主がそれいいなら良いが。向こうはそうはいかないようだが」
「なら位置を変わってれ。さっきからジッと見てくる人の隣なんて、オレは嫌だぞ・・・」
「そのようだな。なら変わるか」
オレとプリシラはお互いに位置を交代する。
「・・・・・・主よ。やっぱり元の位置に戻そう。無理ならもう少し前に行くぞ」
「どうしたプリシラ。何で少し青ざめているんだ?」
「あのおなごの過去を見たら、ちと隣にいるのはよくないと分かった」
オレはチラッと馬に乗っている女性を見る。
さっきとは打って変わって、優しそうな顔でプリシラを見てる・・・。 何かヤバい人だな・・・。よし前の方に行こう。
オレが前の方に行くとプリシラは付いて来る。付いてこないと思っていたが、女性騎士は付いて来る。
「普通に付いて来るんだけど・・・。とりあえずプリシラは精霊界に帰ってくれ」
「そうしよう」
プリシラは精霊界に帰る。プリシラが精霊界に帰ったことで、女性騎士から怒りの視線を感じる。
やめてくれぇ・・・。何でそんなに怒りの目で見るんですかぁ・・・?
オレは聞くのが怖いので、王都に着くまで我慢する。