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IF51話 最後にもう1回

 8月8日。オレは部屋で準備をしている。


 ダンジョンから帰って来てから、何か色々大変だったな・・・。ドワーフたちに可変鉱石を渡して、武器を作ってくれるように依頼をしただろ。何か遭った時のポーションの生産しただろ。ダンジョンの受付の教育をしただろ。何で教育はオレがやらないといけないんだ・・・。オレはまだ学生だぞ。他の人に教えるほどそんなに習って無いんだよ。後はネルディアさんに鉱石を売ったり。色々と面倒だったな。


「準備はこれくらでいいかな」

「そうだな。で、主よ。この状態をどう思う?」


 オレは後ろを見ると。今年4月にウチに来た人たちが揃っている。


「別に良いじゃない? 皆悪さをするわけじゃないし」

「いや。だからと言って、これは気楽すぎるだろ」

「えぇ~? だってラザさまが気楽で良いって言ってるんですよぉ~。アタシたちはそれに従ってるんですよぉ」


「限度があるだろ。それに見ろあの3人を。其方らに対して、怒りを感じるぞ」

「お前らそこまで怒る事ねぇだろ。坊ちゃまは全然気にしてねぇぞ」

「トラヴィス。いくらラザ様が気にして無いからと言って、堂々とベッドに横になるか?」


「なるな。だってこのベッドフカフカだぜぇ。一度はこんなベッドで寝てみてぇだろ」

「そちらのベッドはそんなに、フカフカじゃ無いんですか?」

「あんまりだな。多分そこらのベッドよりマシってやつだな」


「そうですか。御三方もどうです?」

「「「遠慮させていただきます」」」

「流石真面目。頭がお堅~いぃ」


「これが普通の対応です。分かったら立ったらどうです。特にヴィクトさん」

「いやでぇ~す。アタシはベッドに座ってまぁ~す」

「・・・ところでアレックさん以外は、何でオレの部屋にいるんですか?」


「オレとクレトリーは、明後日ダンジョンに潜るから。その間休みを貰った」

「わたしたちは働き過ぎと言われ、明後日まで休みです。寝る時間が早いので、かなり疲れは取れると思うのですが」

「傭兵時代はほぼ寝る暇なかったんですよぉ~。それが急に沢山寝る時間を貰うと、かなり元気になるんですよぉ~」


「凄いですね。そんな早く元気になるんですね」

「そうですよ。ところでお2人は何をしてるんですかぁ? 特にラザさまは何で練習着に着替えてるんですか?」

「これからダンジョンに潜るからですよ」


「「「「「えっ、ダンジョンに潜る?」」」」」

「何で?」

「「「ミシュが喋った!?」」」


「オレとプリシラは明日には王都に戻るので、最後にもう1回ダンジョンに潜ろうと思ったんですよ」

「また潜るんですか。何処まで行くんですか?」

「前回と同じで、地下1階層だけですよ。そうすればすぐに帰れるので」


「そうですかぁ・・・。じゃあちょっと準備してきますねぇ~。あ、先にダンジョン出入口に行ってください」

「準備? 何で?」


 アレックさん以外全員部屋から出る。


「まさか付いて来るんですかね?」

「そのようですね。僕は既に準備は出来ております」

「分かりました・・・。では行きましょうか」


 オレたちは部屋から出て、ダンジョン出入口に行く。着いたら全員が揃うのを待って、揃ったらダンジョンに潜る。


「今回は草原か。見晴らしは良いけど、隠れてやり過ごす事はほぼ出来ないな」

「いいではないか? どうせすぐに帰るんだからな」

「そうだな。ところで思ったんですか。イリナさんたちは、メイド服のままで良いんですか? 動きづらく無いんですか?」


「大丈夫です。このメイド服は特注なので、動きやすくなっています。既にヴィクトの動きを見ていると思いますが」

「見ていましたけど。よく動けるなぁとは思いましたが、まさか特注だったとは・・・」

「んで坊ちゃま。今回はどうするんだ?」


「今回は出入口からあんまり離れないように、周りを歩いて行きます。襲ってくる魔物は問答無用で殺してください」

「「「「「「了解」」」」」」


 オレたちは移動をする。場所が草原なので、魔物の動きがよく分かる。


「初めてダンジョンに潜ったけど中はスゲェな。どうなってるんだ?」

「知らん。考えた所で何も答えが出ないだろ」

「そうだけど。いつものお前なら、考えるだろ・・・」


「永遠に答えが出そうにない物を考えても、仕方が無いだろ。今はラザ様の護衛と周りの警戒に集中したい」

「それもそうだな」

「・・・・・・クレトリーさんとトラヴィスさんって。帝国の出身でしたよね?」


「はい。私とトラヴィスは同じ帝国の出身です。去年までは帝都の騎士団にいました」

「なぁんで帝都の騎士団にいたのに、こっちに来たの?」

「大量解雇にあったんだよ・・・」


「大量解雇・・・。もしかして帝国の財政が・・・」

「あぁ違いますよ。新しい組織を結成するために、解雇されたんですよ」

「新しい組織ですか。でもそんな事をしたら手薄になるのでは?」


「そんな事無いんだよなぁ。帝都には巨大な結界が張ってあってな、その結界のお陰で大体の攻撃とかは防げるんだよ」

「初めて知りました。でもそれを維持するためには、どれだけの魔力が必要なんでしょうか?」

「さぁ。何分私たちは知りません」


「極秘なのでしょう。ラザ様。左から魔物が来ます」

「お、魔物か! ならオレとクレトリーでやるぜ。クレトリー、良いよな?」

「良いに決まってるだろ」


「ではお願いします」


 2人が剣を構える。こっちに来る魔物はラージボア。2人は二手に分かれて、ラージボアをすぐに仕留める。


「早い。2人の実力はかなりあるのか?」

「あのラージボアだけじゃ判断出来んな。だが強いだろうな」

「ラザ坊ちゃま。肉が出た!」


「肉ですか。どうぞ、その肉はお2人に上げますよ」

「良いんですか?」

「ラージボアを殺したのは2人ですよ。その肉をどうこうする権利は2人あります」


「なら貰おうぜ」

「そうだな。有難く頂きます」

「他の皆さんも。自分で殺した魔物から出た素材は、そのまま持って行っても構いません」


「わぁ~い。小遣いが出来る~」

「ヴィクトは前に沢山貰いましたよね? 今回はわたしたちですよ」

「そんなの早いもん勝ちだよ。もたもたしてたら、ぜぇ~ぶアタシが殺すよ」


「ヴィクトさんは何もしなくて良いと思いますよ。代わりに僕が殺しておきます」

「はぁ? 何でアンタがやるわけ? 寧ろアンタが何もするなよ」

「黙れよクソアマ。お前がいるだけで足で纏いなんだよ。大人しく帰って休んでろよ」


「足で纏いはアンタだろ。何ならここで戦うか?」

「望むところだクソアマ。負けたらサッサ帰れよ」

「アンタが、な!」


 ヴィクトさんは右手で、アレックさんは左手で殴りかかる。オレは2人の間に入って、2人を止める。


「2人とも。喧嘩するなら、2人で家に帰ってもらいますよ。それが嫌なら喧嘩は止めてください」

「「はい。すみませんでした・・・」」


 オレは2人から離れる。


「命拾いしたなクソアマ」

「アンタがね」


 本当に仲が悪い。このパーティは大丈夫か?


「喧嘩はいいが、今ので地獄耳の魔物に気付かれたぞ。右から来る」

「地獄耳過ぎるだろ!?」


 右から足が速い鳥系の魔物が4体くる。オレは武器を構えていたら、ヴィクトさんとアレックさんがすぐに殺しに行く。


「・・・待ってようか」

「その必要は無いようだな」


 2人はすぐに魔物を殺す。2人は出た素材を回収して戻って来る。


「ッチ。余計な事を」

「それはこっちの台詞ですよぉ」

「頼むから。喧嘩しないでくれよ・・・」


 オレはそう思いながら、近くにいたスライムを、剣でスライムの核を刺す。スライムは核を刺されて、死んで消える。


「今のはアサシンスライムですね。気付きませんでした」

「ラージボアがこっちに来てから、徐々に近づいて来てましたよ。アサシンなので気配遮断が上手いでしょう。今度は空からです!」


 オレがそう言うと、ミシュさんが弓で鳥系の魔物を撃ち落とす。


「一撃・・・。凄いな」

「ミシュは弓に関してはかなり腕が立つので、この程度ならすぐに殺せますよ」

「頼もしいですね。でしたら、前から来る魔物も殺してほしいですね」


「前? あ、本当だ・・・。数は10です!」


 ミシュさんは一度に10本の矢を持って、その10本の矢を放つ。放たれ矢は全て魔物に当たる。


「嘘だろ・・・。10本同時に放って、全部命中させたとか・・・」

「凄いが。よく10本も持てたな」

「ミシュが使ってる矢は普通の矢より、少し小さいのです。威力や飛距離などは落ちると思いますが、魔法で強化してるので、問題はありません」


「小さいんですね・・・。それにしても間髪入れずに襲って来ますね、今度は右からです。しかもかなりの数ですよこれ」

「オイオイマジかよ。まぁこうなる事くらい分かっていたがなぁ!」

「トラヴィス。確かサンダーストームが使えたよな?」


「使えるぜ。そうだよな。これで一掃した方がはぇか!」


 トラヴィスさんは雷魔法と風魔法を使って、サンダーストームを使って、右から来る魔物を一掃する。


「どうよ! 帝都の騎士団にいた時は、魔法騎士団に入った方が良いって、言われる程の実力あるぜ!」

「本当に何で騎士団いたんだよ」

「んなもん単純だ。オレがなりたかったのは騎士だ。断じて魔法騎士じゃねぇ!」


「そう言えばそうだったな・・・」

「まだ来ますね。今度は後ろから来ます。それに―――」


 オレはイリナさんに飛んでくる矢を斬り落とす。


「見た通り、遠くから弓を使う魔物もいます! ここにいたら危険です。すぐにダンジョンから出ます!」

「「「「「「了解!」」」」」」

「プリシラ。弓を使う魔物を殺してくれ」


「既に終わっておる。後はこのまま走れ」


 オレたちは走り、ダンジョン出入口に行く。移動中に魔物が襲い掛かってるが、すぐに殺して先に行く。中には待ち伏せをしている魔物がいた。オレはすぐに待ち伏せている魔物を見つけて、皆に指示を出す。


「これって指揮官がいませんかねぇ? さっきから待ち伏せが多いですよぉ」

「いるぞ。そいつは既に見つけておる。ダンジョン出入口付近におる」

「またか! 奴らは出入口付近にいるのが好きなのか!?」


「知らんな。相手はコマンダーオークだな。アイツを殺さないと、また待ち伏せされるぞ」

「分かってる! 今から行ってくる」

「お待ちを。そのコマンダーオークはわたしが殺します。ラザ様は皆さんと一緒にいてください」


「殺せるんですか?」

「はい」

「分かりました。コマンダーオークの所まで、一気に行ってもらいますよ」


 オレは剣を鞘に戻して少し前に出て、後ろに振り向いて両手を合わせて魔法で身体を強化する。イリナさんは分かったのか、オレの所まで走って来る。オレの両手にイリナさんの右足が着いたら、オレはコマンダーオークがいる所まで打ち上げてる。オレは再度剣を抜いて、魔物と戦う。


 良いところまで来てますね。・・・アレですね。


 わたしは強化魔法で身体を強化して、コマンダーオークの頭上から剣を振り下ろし、一刀両断にする。地面に着地して剣に付いた血を振り落とす。


「おや雌のコマンダーオークでしたか。通りでメイドのわたしたちが狙われる訳ですね。では残りの魔物も始末しますか」


 わたしは残っている魔物を殺し、ラザ様たちが来るのを待つ。


「―――イリナさん無事ですか!?」

「無事です。これでダンジョンから出れますね」

「無事なら良かったです。では帰りっ」


 オレはすぐにイリアさんの右腕を掴んで、イリナさんを引っ張りながら前に出る。オレはお腹にナイフが刺さる。


「っ・・・!」

「ラザ様!?」

「ゴブリン風情がっ! 楽に死ねると思うなよっ!」


 プリシラ様がすぐに木の根っこでゴブリンを捕まえる。捕まったゴブリンは身体中に木の根っこが刺さり、体内に入って行く。


「すぐにポーションを!」

「はいポーション!」


 わたしはヴィクトからポーションを受け取って、ラザ様のお腹に刺さっているナイフ抜いて、ポーションの蓋を開けて傷にポーションをかける。傷はすぐに治り、ラザ様は起き上る。


「あー死ぬかと思った・・・」

「死ぬかと思った。じゃないですよ! 何してるのですか!?」

「何って。イリナさんを助けただけですよ」


「その必要は無かったのですよ。わたしは元傭兵。身体に傷がつくのは日常茶飯事です!」

「今はメイドですよね。オレは嫌ですよ目の前で、親しい人が死ぬのは」

「わたしの命は価値何てありません・・・」


「ありますよ。命に価値があるないは言わないでくださいよ」


 どの口が言ってるんだろうな・・・。


「とにかく後にしてくれませんか。今はここから出て家に帰りましょう。ところでプリシラは何してるんだ? それアサシンゴブリンだよな?」

「生き地獄を味合わせているだけだ。このまま栄養失調で死ぬまで生きてもらう」

「酷い事をする・・・」


「普通だ。それにこの状態いるとな、先ず他者から殺され事はない。傷はすぐに治るし致命傷になるものは、すぐに防ぐ。代わりにこのゴミの栄養を奪って、最終的には栄養失調で死ぬ」

「酷い・・・。アレックさんたちに聞きたいのですが、何してるんですか?」

「このゴブリンに痛みを与えてるだけです」


「もうその辺にしたらどうですか? オレはもう平気なので」

「駄目ですよぉ。コイツには死ぬまで苦痛を味合わせないと、こっちの気が治まらないですよ」

「本当にその辺にしてください。もう帰りますよ」


「・・・ラザ坊ちゃまが言うなら、しょうがねぇか」


 アレックさんたちは武器をしまう。


「プリシラ。それって死ぬまでそのままなのか?」

「そうだが」

「楽にしろって言っても、どうせしないだろ。ならせめて他の所に置いてくれ。ここに来た冒険者たちが驚く」


「仮にここに来た冒険者たちは、見る事は無いだろうが。一応移動させておくか」


 プリシラは木の根っこに捕まっているアサシンゴブリンを、他の所に移動させる。移動が終わったらダンジョンから出て、家に帰る。家に帰った後はイリナさんに怒られた。


 次の日。今日はオレとプリシラは王都に戻る。家の門の所でトーマスさんたちが、見送りをしてくれる。


「親父たちは忙しいか」

「はい。旦那様からある物を預かっております」


 トーマスさんは空間から、手押しポンプを10個と説明書を出す。


「・・・・・・おのれ親父。オレになすりつけたな!!」

「旦那様曰く。『いつでも良いから献上してくれ!』との事です」

「冗談だろ・・・。国王陛下にそう会えるもんじゃないだろ・・・。とにかく分かりました」


 オレは出された手押しポンプと説明書を、空間の中に入れる。


「それでは行ってきます」

「「「「「「「お気をつけて」」」」」」」


 そう言えばイリナさんがいない。仕事中か?


 オレとプリシラは馬車の所に行って、馬車に乗るためにドアを開ける。開けるとイリナさんがいた。


「何してるんですか?」

「わたしも王都に行きます。また無茶をすると思うので、監視のために同行します」

「駄目ですよ。学園には使用人は連れて行けませんよ。なので降りてください」


「・・・・・・」

「メール! ちょっとこっちに来て!」


 メールがすぐにこっちに来て、イリナさんを降ろさせようとするが。中々降りない。ヴィクトさんとミシュさんを呼んで、ようやく降りた。お礼を言って、オレとプリシラは馬車に乗る。馬車は動き出して王都に行く。

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