第14話 練習
6月12日。第2アリーナにて種目別の練習をする。
「は、はえええええ! 相変わらずラザとアイスフォックスが速すぎるぞ!!」
「ホントだよなー。何であんな速く走れるんだ? ってか残像が見えるような・・・」
「まさか魔法でも使ってるんじゃ・・・」
「いや運動会では魔法は禁止だろ。運動力だけで運動会をやるんだから」
「でも使い魔は? あれは魔法を使って召喚したから、魔法扱いになるんじゃん」
「召喚は魔法だけど、使い魔は魔力で作られたわけじゃないから、魔法扱いにはならないだろ」
「あっそう」
「いや~ラザとペールは速いね~。何であそこまで速いんだろう?」
「多分ですがイゼベル先生のせいかと」
「あぁ・・・。アタシたちは借り物競走や二人三脚で良かったね」
「そうですね。じゃあ私たちは二人三脚の練習をしましょう」
「そうだね!」
アタシは自分の左足とエメリーの右足を布で結ぶ。
「「せーのっ」」
アタシとエメリーは息を合わせて走って行く。
「お! エメリー様が走ってるぞ」
「エディスのこと忘れてないか?」
「あれは論外だ」
「ひ、酷い言い方だね。それよりもボクたちも練習をしましょう」
「そう言ってもおれら全員違う種目だろ。あとカウルはイゼベル先生の所に行けよ」
「あっ! そうだった」
カウルはすぐにイゼベル先生の所に行く。
「で、エリオットはフランシスと一緒に二人三脚か?」
「おう! フランは足が速いから、早く練習をしないとな!」
「ほれ主。もう布で足を縛ったぞ」
「悪いなフラン。じゃあ走って来るぜ!」
そう言ってエリオットは走って行く。
「美人の精霊と一緒は走れるとか・・・。羨ましいぜ・・・!」
「何言ってるんだアイツは?」
「さぁ? 彼女が出来なくて少し精神が、可笑しくなってるんじゃないか?」
「そうかそれであんな事を言ってるのか。こっちも早彼女を作らないと、可笑しくなりそうだな・・・」
「聞こえてるぞお前らっ!?」
おれは二人三脚で走るパートナーの方に行く。
「――――――ストップ!」
「クゥ!」
オレとペールは止まって休憩に入る。
「最初に比べてかなり速くなったよな」
「クゥクゥ~」
「魔法攻撃とか当たらなくなったよなー」
「クゥクゥー」
「剣や槍や矢とかも当たらなくなったよな~」
「くぅ~」
「・・・正直最初は死にそうになったし、あんなの普通は避けられないような攻撃が来ると思ったら、急に攻撃が終わって凄く近くでジッと見られる恐怖を憶えるし、ついこっちが攻撃をすると先生は避ける、なんならしっかり反撃をしてくる。よく生きていたな・・・」
「クゥ・・・」
オレとペールは明後日方角を見る。
「これも全てイゼベル先生のお陰です。冒険者として生きていく覚悟が少し出来ました」
「クゥ」
「ほぉ~。ならもっと覚悟が出来るようにしてやろうか?」
「ひゅい!?」
「クフッ!?」
オレとペールは後ろを見る。後ろにいたのはイゼベル先生だった。
「さっきの言い方はまるでわたしがこの世から、去ったような言い方だよなぁ?」
「は、はい・・・」
「クゥ・・・」
「午後の授業楽しみにしておけよ」
「ハイ・・・」
オレは返事をするがペールは返事が出来ない。
「今は他の生徒に教える必要があるが・・・。ラザとペールに手伝ってもらおうか」
「手伝うって言いますが、何をすればいいですか?」
「なに簡単だ。わたしらが午後の授業で同じ事をするだけだ」
そう言えばまだやり始めて無かったな。オレとペールが怖い思いした事を、他の生徒と使い魔に同じ目に遭わせる・・・。
「―――手伝います。全力で手伝いさせていただきます」
「クゥ!」
「そうか。おい! 徒競走と使い魔徒競走に出る生徒と使い魔は、こっちに来い!」
そう言うと生徒と使い魔がこっちに集まって来る。イゼベル先生は走るコツなどを教えて、実際に走らせる。その後でイゼベル先生と一緒に、走っている生徒と使い魔の後ろを走る。
「お、おい。後ろからイゼベル先生とラザと使い魔が、走って来るぞ」
「道を開けるか?」
「待って。私たちを追い抜こうとはしてないわ」
「じゃあ何で走ってるんだ? ラザとその使い魔は解るが、いぜ―――」
始まった・・・、イゼベル先生の攻撃が。人と使い魔に当たらないギリギリのラインで攻撃をする。あれは人間業か?
「「「「「わあああああああっ!?」」」」」
「「「「「!!??」」」」」
「死にたくなっかったら、全力で走れ!!」
「こんなことあったか!?」
「さっきまで普通だったのに!!」
生徒と使い魔は驚きながら全力で走る。オレとペールは特に攻撃しないが、違う事をやる。
「も、もう無理・・・」
1人の生徒が疲れて遅くなってる。イゼベル先生とペールは、まだ走れる生徒と使い魔を追いかける。オレは疲れている生徒の方に行って、ピッタリ横に付く。
「えっ・・・。ラ、ラザ君何かよう? ボクちょっと・・・つ、つかれて・・・」
「気にせずにそのまま走ってください。ただ貴方の横にピッタリと付いてくるだけですから。あ、止まるのは無しですよ。止まったらイゼベル先生に殺されるので」
「う、うそだよね・・・!? ボク・・・つかれて・・・」
「言い忘れてましたが、このままずっと遅いままだと。終わるまで横にいますよ」
「ひぃ・・・!」
「怖いですか? 怖いですよね。何せずっと横にいるんですから。例えるなら・・・「知らない人に永遠に追い掛け回される恐怖」ですかね?」
「・・・・・・」
あれ? そんなに怖くなかったか。流石に素人の演技じゃあ無理か。
「あああああああああああっ!!!!」
何か叫び声を上げながら、全力疾走して先に行く。オレはペールとイゼベル先生の所に行く。
「お前は何をした? カウルが奇声をあげながら走ってるぞ」
「ただの怖い演技をしただけのですが・・・」
「お前ってやつは・・・」
イゼベル先生よりマシだと思うけど。しかしあそこまで怖がるとは・・・。変な自信を持ってしまいそう。
「うわぁー・・・。徒競走と使い魔徒競走は大変だね。アタシらは本当に選ばなくて良かったね・・・」
「はい・・・(ラザさんが楽しくやっていたのは、気のせいでしょうか?)」