IF41話 駄々を
家に戻ったら親父の所に行って報告をする。報告が終わったら、部屋に戻る。部屋の前に着いてドアを開けると、ベッドの上にヴィクトさんが横になっていた。
「あぁ帰ってきましたか。勝手に部屋を掃除しておきましたぁ~」
「掃除は良いですけど。凄いですね。堂々と悪びれることなく人のベッドに横になってますね。良く出来ますね。しかもオレが戻って来ても、顔色1つ変えずにいられるのも凄いですね」
「ラザさまだから良いかなぁって思いまして。このままでいるんですぅ」
「まぁこの程度なら怒りませんけど」
オレたちは部屋に入る。オレは椅子に座って少しゆっくりする。2人はベッドに座る。
「ところでラザさまぁ。ベッドの下に何で如何わしい物が、無いんですかぁ~?」
「ある訳ないじゃないですか。実は漁るのが目的で、掃除は二の次だったんですか?」
「そ~んな事は無いですよぉ~。掃除が一番ですよぉ」
「そうですか。掃除するのは良いですが、あんまり漁るような事をしないでくださいよ。漁るような事をするなら、出禁にしますよ」
「二度と漁るような事はしません(優しく言ってるけど、かなり怒ってるぅ)」
「分かったならこれ以上は言いません」
何で女性が男性の物を漁るんだ? 普通は逆だろ。やったら殺されそうだけど。
「―――さっきから思ったんですが。2人から何か甘い匂いがするんですが。何か甘い食べ物でも食べました?」
「帰って来る前にクレープを食べたな。それのせいだろ。美味かったぞ」
「えぇ2人だけ食べたんですかぁ? ズルくないですか?」
「主も食べたが」
「ラザさまも? 意外と食べるんですねぇ」
「甘いものは好きですからね」
「意外ですね。それでアタシの分は?」
「無いですよ」
「無いんですか!? 折角部屋を綺麗にしたのに!」
「そう言われても困りますよ。部屋が掃除されているとは、思ってなかったので」
「アタシもたーべーたーいー!」
ヴィクトさんが駄々をこねていると、ミシュさんがヴィクトさんの頭を叩く。
「イッタイー・・・」
「ヴィクトが駄々をこねるからだろ。ちと反省をしろ」
「うぅ・・・」
そんなにクレープが食べたかったのか。いつか買った方が良いか?
「―――そう言えば。ダンションに潜っていた、第3騎士団が戻って来ましたよぉ」
「戻って来たんですか。丁度良いので挨拶しに行きますか」
「第9にか?」
「第9だな。第3は知ってるだろうし、向こうも顔を見れば分かるだろ。分からなかったら、自己紹介すればいいし」
「意外ですね。王都の騎士団と関りがあったんですね」
「去年の合宿中にちょっと・・・」
「合宿中に何があったのか知りませんが、あまり関わると勧誘されますよ」
「もう勧誘されてますよ。ヴィクトさんはどうするんですか? そのままベッドでお昼寝ですか?」
「お昼寝も良いですねぇ。と言うより。アタシがこのままお昼寝するとして、夜はこのベッドで寝るんですよね?」
「寝るベッドがそれしかないので、そのベッドで寝ますよ。何か問題でも?」
「いや寝るのが平気なのかなぁ~って思ったのですが。平気じゃないですよね」
ヴィクトさんはニヤニヤしながら言う。
「別に平気ですよ。何で平気じゃないと思うんですか?」
「えっ!? こう言うのは平気じゃないでしょ・・・。絶対に可笑しい」
「可笑しいですかね?」
「可笑しいだろうな。普通なら顔を赤くするぞ。まぁ主はもう慣れているから、どうって事は無いだろうな」
「慣れている? どう言う事ですかぁ~?」
「簡単な事だ。常に一緒に寝てるからな」
「ちょ、なに勝手に言ってるんだよ!?」
「あぁやっぱり一緒に寝てるんですねぇ~」
ヴィクトさんは驚いて無いが、ミシュさんは驚いている。
「何でヴィクトさんは驚かないんですか?」
「驚いてますよぉ。ただ予想がある程度出来ていたので、あんまり驚いて無いんです。で、何処までやりました?」
「まだ何もやって無いが」
「えぇ一緒に寝てるのに、何もしてないんですかぁ~。初心なのか、それとも生殺しする系ですか?」
「生殺し・・・。そうか度胸無しとか根性無しではなく、生殺し系だったか」
「いやいや何でそう言う風に考えるんだよ!?」
「そう考えるしか無いだろ。だが生殺しもほどほどにしてもらおうか」
プリシラは立ち上がってこっちに来る。
「な、何をする気だ・・・? ヴィクトさんたちがいるんだぞ・・・」
プリシラは何も言わずにオレの顔を掴んで、キスされ口の中にプリシラの舌が入って来る。
「・・・もしかしてキスされてますぅ?」
アタシはラザさまたちの所に行って、2人を見るとキスどころかディープキスしてた。
「わぁー。わぁー! ガチのディープキスしてるぅぅぅ! これ絶対にラザさまパニックなってるじゃん~」
プリシラはオレから離れる。
「・・・オマエ、オマエェェェェェェ! マジでキスをしやがったなぁ!? しかもディープキスだろこれ!」
「ごちそうさま。と言うべきか。聞くが、初めてだったよなぁ?」
「初めてだよ! ちくしょうぉぉぉ・・・。まさかこんなやりかたで奪われるとは・・・」
オレは両手で顔を隠して、椅子の上で体育座りをする。
「ねぇラザさまぁ。初めてのディープキスはどうでしたぁ? さっきクレープを食べていたそうなので、かなりあっまあまだと思うんですけどぉ。あっまあまでしたぁ?」
「うるさいっ!!」
オレは左手でヴィクトさんの顔を掴んで、そのまま左手に力を入れる。
「イダダダダダダダッ!? ごめんなざい!!」
オレは謝罪を聞いて、左手の力を抜いて顔から離す。
「イタタタ・・・。顔が歪むと思いましたよ・・・」
「調子に乗ったヴィクトが悪い。ちと反省しろ」
「お前もだよプリシラ。―――騎士団の所に行くか」
「立ち直りはやっ!? さっきまで恥ずかしがっていたのに・・・」
「さっきのアイアンクローで、大分スッキリしました」
「えぇ・・・」
オレは立ち上がって、全員で部屋から出る。ヴィクトさんは別の場所に行く。オレたちは騎士団の方に行く。
「えぇっと第3と第9騎士団の場所は・・・」
「あの造りかけの場所じゃないか?」
「アレか。ならあそこに行けば会えるんだな」
「―――あれぇ? なぁんでラザちゃんとプリシラちゃんがいるのぉ?」
オレは聞いた事がある声が聞こえて、背筋が寒くなる。




