IF39話 手押しポンプ
医者、建築家、料理人などの挨拶が終わり、オレたちは家の方に行く。
「何か手紙には書かれてない事が多かったですね」
「手紙に全て書きますと読む方も大変なので、少なくしたのですよ」
「確かに読むのに苦労しそうですね。これでここは終わりですか?」
「はい。ラザ様たちはこれからどうすのですか?」
「特に決まってませんが。親父の所に行ってみます。多分また書類作業をしてると思うので」
「してそうですねぇ~。その旦那さまは向こうにいますよぉ~」
ヴィクトさんが指を指す方を見る。親父とトーマスさんとドワーフたちがいる。オレたちは親父の方に行く。
「親父。こんな所で何してるんだ?」
「おぉラザか。丁度いい所に来たな。この手押しポンプを、ちょっと使ってくれ」
手押しポンプだって!? 一体誰だこんな知恵を教えた奴は? 絶対に転生者がいるだろ。
「主よ。主が思っている奴はいないぞ。そこのドワーフたちが自力で、造ったみたいだぞ」
「マジか。凄いな・・・」
オレは手押しポンプの所に行って、ハンドルを持って上下に動かす。何回か上下に動かしていると、水が出てくる。
「何だ知っていたのか。実は王都にもあるのか?」
「えっ! か、勘で使ってみただけだよ。それに王都には無かったぜ」
「そうか」
あぁヤバかった。オレは使い方を知っていたから、普通に使ったけど。本来は知らない方が普通なんだよな・・・。
その後プリシラたちが手押しポンプを使う。
「便利ですねぇ~。これがあれば井戸から水を汲むのが、楽になりますよ」
「別にヴィクトさんは元傭兵なんですから、手押しポンプを使わなくてもいいでしょ」
「一々ロープを引っ張るの面倒なんですよぉ~。これを井戸に設置すれば、かなり楽になりますよ」
「・・・ラザはどう思う?」
「オレは賛成だ。オレも井戸の水を使ったことはあるけど、ロープを引っ張るのが大変だった。でも筋トレにはなるんだよなぁ・・・」
「あぁ言われてみればそうですね。僕もたまにそう言った使い方をしますね」
「ミシュもそんな使い方をしてたなぁ~」
「お前らはちゃんとした井戸の使い方をしろ。これを領民たちが使うには適しているか?」
「適しているだろ。今までロープを引っ張って水を汲むより、早く水を手に入るだろ。それに子供も出来そうだな」
「そうですかねぇ? 力の無い人が使っても、水は出るかな?」
「大丈夫じゃろ。不安なら他のメイドにやらせりゃあいい」
ウチで雇っているドワーフのリーダー、クライブがそう言う。オレはヴィクトさんにお願いをして、他のメイドを連れてきてもらう。
メイドの人たちがやったからと言って、子供たちも出来るって、証明にはならないと思うけど。
「・・・これは売れますな。これをマキレイ商会に卸して、王都に売るのはどうでしょうか?」
「手押しポンプをマキレイ商会に卸して、王都に売るか・・・。少なくても国王陛下に献上せねばならないな」
「献上は親父たちでやってくれよ。オレは学生だから、勉学の方に励ませてもらうぜ」
「なっ!? お前も来ないのか!?」
「行くわけないだろ! 何でオレも国王陛下に会わないといけないんだよ!? そう言うのは兄たちにやらせろよ!」
「アイツらを同行させるやけにはいかんだろ。その点お前は大丈夫だろ。第1王女と第2王女とは仲が良いんだろ。国王陛下もお前には変な事はしないだろ」
「それでも行かないよ。そんなに顔を合わせて無いんだぞ・・・」
「いや。去年は何回も顔を合わせておるし、何なら会話もしていただろ」
「こらプリシラ。余計な事を言わない!」
「頼むラザ!」
「絶対にやだ。国王陛下に会うたびに、心臓が持たないんだよ! それに手押しポンプは、まだ数がそんなに出来て無いんだろ」
「坊ちゃま。手押しポンプくらぇなら、すぐに出来ますぜ」
「クライブさんも余計な事言わないでくださいよ!」
「おぉそれはすまんな。だが出来るもんはしょうがねぇし、既に何個か造っている」
「嘘だろ・・・」
「―――えぇなにこれ・・・? 何であんなに盛り上がってるんですか?」
「戻ってきおったか。あの手押しポンプの献上の話で、色々話合ってる所だ」
「やっぱり献上するんですねぇー。ラザさま連れて来ましたよ」
「良い所で来てくれました! メイドの皆様にはあの手押しポンプを、使ってもらいます」
手押しポンプの使い方を説明をして、実際にメイドたちにやらせる。メイドたちはからの評価は好評。終わったら仕事に戻ってもらう。
「好評だな。よし。先ずはウチの所にある井戸に設置するそ。騎士団には一度聞いてから検討しよう。その後は街に設置する」
「街に設置するの良いけど。税金が上がるって思われるんじゃないか?」
「この程度で税金は上げる訳ないだろ。こっちは少しでも良き暮らしが出来るなら、それで良いんだ」
親父って意外と領民思いだよなぁ~。世界中にいる領主が、こうだといいんだけど。
「では街の手押しポンプの設置の際は、よろしく頼むぞ」
「・・・はい? オレが設置をするのか!?」
「何もお前1人でやる訳じゃ無い。ちゃんとドワーフたちが設置する。お前の役割は、実際に手押しポンプを使ってほしいんだ」
「マジかよ・・・。まぁそれだけならやるけよ」
国王陛下に会うよりかなりマシだな。
「じゃあオレたちは部屋に戻るよ」
オレたちは家に戻って部屋に戻る。