IF38話 変人
アレックさんに付いて行って、知らない建物に着く。オレたちはその建物の中に入って、人がいる所に案内される。
「げっ、アレック・・・」
「ヴィクトさん。メイドの仕事をサボって何してるんですか?」
「サボって無いでーす。アタシは手が空いていたんで、ここの人達の手伝をしてたんですぅー」
「あぁそうですか・・・」
「うぅわ全然信用されてねぇー」
「ここでは何をする場所ですか?」
「ここはダンジョンで手に入った、クズ石から微妙に入っている鉱石を取り出しています」
「微妙に入っている鉱石を取り出すだと? そんなこと出来るのか?」
「出来ます。と言っても、僕は出来ませんが」
「アタシも出来ませぇーん。出来るのは精々整理でぇーす」
「じゃあヴィクトさん入りませんね。サッサとメイドの仕事に戻りなさい」
「はぁ? 何でアンタに命令されなといけないわけ? ラザさまなら話は別ですけどぉ。よっぽどじゃない限り、アンタに命令されなくないわぁー」
「このクソアマが・・・。前の戦いで死ねばよかったものの・・・」
「アタシはしぶといので、中々死にませんよーだぁ」
「なぁプリシラ。この2人はかなり仲が悪いな。オレたちが帰って来るまで、何があったんだろうな?」
「さぁな。他者の事などどうでもいいわ。それより責任者は何処におる?」
「呼んでくるので、少々お待ちください」
アレックさんは責任者を呼びに行く。
「こう言うの大体ドワーフだろうな。他のドワーフも雇ったのか?」
「ドワーフ。ドワーフかもしれませんねぇ。ラザさま。一応言っておきます。かなり引きますよ」
「引く? そんなに色々可笑しい人なんですか?」
「かなり可笑しい人ですよ。この種族は全員そうなのかと、思うくらいにですよぉ~」
「そんなに変な人なんですか?」
「ものすご~っく変な人ですよ。あまり肩入れとかしない方が、いいですよぉ~」
「―――変とは失礼な。ワタシは普通のエルフですよ」
声が聞こえた方を見ると、耳が尖がっている人が何人もいる。
「ドワーフじゃなくてエルフだ。初めて見た。王都じゃ意外といないんだよなぁ」
「冒険者ギルドに行ってないだけだろ。ちとエルフはいたぞ」
「マジで? オレは一度も見てないんだけど」
「たまたまだろ。で、其方が責任者か?」
「はい。ワタシが責任者です。エルフ族のネルディアです」
「ラザ・メルト・カルバーンです。この家の三男です。隣にいるのが精霊のプリシラです。時と場合によっては敬語をなどは、使い分けてください」
「精霊・・・。ちょっとは羨ましいですが。その精霊は何か特殊な能力を、持ってませんか?」
「持ってるっけ?」
「妾を召喚した初日に喋ったが」
「あぁアレは特殊能力になるんだ」
「アレを特殊と言わず何と言う? アレが特殊能力じゃなければ、他者も使えるだろ」
「それもそっか。他の人も使えたら、かなり困るな」
「その特殊な能力は何ですか!? 例えば鉱石をポンっと出したり、鉱石の場所が簡単に分かったり、石を鉱石に変えたり出来たり。まさか・・・、まさか鉱石を創ったり出来るんですかっ!?」
「そんなもん出来んぞ。何だ鉱石を創るって言うのは。妾は出来んぞ」
「出来ない? そうですか。では些事ですね」
「・・・この小娘。随分と失礼な奴だな。ちと殺めいいか?」
「止めろ。ところでネルディアさんは何で、鉱石にこだわるんですか?」
「そりゃ鉱石が好きですからね。人の肌とは違って、綺麗なままですし。何よりも自然体ですからね! カッコいい形をしてる物あれば、厭らしい形をした物もあります!」
「厭らしい形とは!? カッコいい形なら分からなくもないですか、厭らしい形何て分かりませんよ!」
「分からない? はぁ~。これだから素人は」
分かるか! そもそも鉱石でそんな考えをするか普通!? 何なんだこの人は・・・。
「あぁラザさまも全く理解してない。アタシも全く理解出来ないけどねぇ」
「同感です。僕もどうやっても理解出来ませんね」
「アレを理解をするには、きっと人間性をとか捨ててるよ」
「もしかして。エルフ族の皆さんは、こんな感じなんですか・・・?」
「全く持って違います! この馬鹿が可笑しいだけです! 我々は至って普通のエルフです」
「可笑しいとは何ですか? ワタシだって至って普通ですよ!」
「貴女の何処が普通よ! 貴女が鉱石の話を始めると、皆引いた目で見てくるよ! 少しはこっちの事を考えてよ!」
「あぁ~。鉱石の仕事ばっかやっているから、常識が綺麗に消えていったんですねぇ~」
「「「「「それはお前だ!!」」」」」
ネルディアさんたちは喧嘩を始める。
「・・・オレたちはこれで失礼します。まだ他の所を見に行くので」
「あ、そうですか。お暇になりましたら、一度見学しに来てください!」
「じゃあアタシも失礼しますねぇ」
「書類整理ありがとうございます!」
オレたちはネルディアさんたちから離れて、建物から出る。
「やばいって・・・。絶対にエルフは頭の可笑しい奴らって、思われてるよ・・・」
「また俺達は肩身が狭くなる・・・」
「だ~じょうぶでしょ。少なくてもここの貴族はそんな目で見ないって。一部を除いて」
「ネルディア。ほんっとうに頼むからな。またクビされたら、こっちが困るんだ・・・」
「はいはい。分かってますよ」
「本当に分かってるのかぁ?」
「―――さっきの人かなり凄かったな・・・」
「あの失礼なエルフの事か? 確かに凄かったな。変人としてな。あの変人がいなければ、もうちと楽にはなるだろう」
「アハハハ・・・。アレックさん。今度は何処に行くんですか?」
「今度は医者達の所です。ところでヴィクトさんは、メイドの仕事に戻ったらどうです?」
「ラザさまの傍にいるも、メイドの仕事でぇーす。逆にアレックが執事の仕事に戻ったら? 後はアタシが引き継ぎますよぉ」
「戯言を申しますね」
本当に仲が悪い・・・。この2人は一緒にしない方がいいな。