第13話 種目
5月29日。教室にて。運動会実行委員は黒板に何かを書く。
「今黒板に書いたのは、6月25日に開催される『運動会』の種目です。今日から明後日までにどの種目に出るか、決めてください。何分か考える時間を設けるので、どの種目に出るか考えてください。最低でも1人2種目は出てください」
黒板には種目が書かれているのは、徒競走、障害物競走、借り物競走、使い魔徒競走、二人三脚、使い魔と二人三脚(人型の使い魔)。後は団体競技のリレー、綱引き、玉入れ。聞きなれない種目が2つあるが別に難しい事ではない。先ず『使い魔徒競走』は人の代わりに使い魔が走る。使い魔の主はゴールの所に待機して、ゴールした使い魔を抱きしめる為にゴール前にいる。ただし空中移動する使い魔は出場禁止。『使い魔と二人三脚(人型の使い魔)』は使い魔の主と人型の使い魔で二人三脚をする。この2つ以外は普通の運動会だな。
「ラザはどの種目に出場するの?」
「あぁーオレは・・・。徒競走と使い魔徒競走に出ます」
「エメリーは?」
「私は障害物競走と借り物競走に出ようと思います。エディスは?」
「アタシは二人三脚と借り物競走かな。ねぇエメリー、一緒に二人三脚出ようよ~」
「ダダダダダメですよ! 私は足が遅いので足を引っ張っちゃいますよ!」
「いいのいいの。こういうのは勝ち負け気にせず、楽しんでやるのがいいんだよ」
「エ、エディスがそう言うなら・・・。私も二人三脚出ます」
「ありがとう!」
エメリー様とエディスさんは随分と仲が良い。ゲームではエメリー様は1人でいる事が多かったけど、現実ではエディスさんがいたおかげで1人じゃ無くなってる。これはこれでいい事だ。
「ところでラザは何で徒競走にしたの?」
「ただ走るだけですから。特に物凄く疲れる訳じゃ無いので、徒競走にしたんですよ。エディスさんは何で借り物競走に?」
「楽しそうだから!」
「・・・そうですか」
「そうだよ」
そんな理由で決めていいのか?
「えっと、私には聞かないんですか?」
「さっき足が遅いって言っていたので、運動は苦手だと思ったのですが・・・。合ってますか?」
「は、はい・・・」
「そろそろ時間ですので、出る種目を決めて行きます。自分が種目を言っていきます、その時に挙手をお願いします。先ずは徒競走から」
俺は手を上げる。運動会実行委員は黒板に書いてある種目の横に、人の名前を書いていく。
「・・・3人ですが。あと3人ですね。次は障害物競走です」
障害物競走、借り物競走、一つづつ言っていく。使い魔徒競走の時に俺は手を上げる。
・・・オレは無事に使い魔徒競走に出れるようだ。
「今日はここまでです」
そう言って運動会実行委員は席に着く。すると椅子に座っていたイゼベル先生が立って、教卓の方に行く。
「実行委員も言った通り、明後日までには決めろよ。決めたからには全力でやれよ。それとラザ、午後の授業はアリーナで走り込みな」
「はいっ!?」
あ、あの目は、完全に獲物を捕まえる目だぁぁぁ・・・。
「ラ、ラザさん。顔が青いですが大丈夫ですか?」
「ううううううん、だだだだだ大丈夫ですよ」
これは今日から午後の授業は死にそうになるな・・・。
「さて6月1日から24日までは、午前の1時間目と2時間目は普通の授業だ。3時間目と4時間目は種目の練習になる。午後の授業も普通だ。他クラスと一緒に練習になる可能性があるが、そこは気にせず練習をしろ。色々大変だが・・・、まぁオメェーらなら大丈夫だろ」
「「「「「(大丈夫じゃない・・・)」」」」」
イゼベル先生以外はそう思った。
「まぁそういう事だ。とりあえず明後日までは普通の授業だ。早速やっていくぞ」
イゼベル先生にそう言われ授業が始まる。
午前中の授業と昼休みが終わったあと、午後の授業が始まる。
「ひいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「クウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」
「ほらほらどうした? そんな遅い動きだとすぐに死ぬぞー」
「・・・何だアレ?」
「何かラザは『徒競走』と『使い魔徒競走』を選んだらしいよ」
「あぁ? アイツはマゾヒストか?」
「多分違うと思うが・・・」
「よーしそこまでだ。少し休憩してろ」
「は、はい・・・」
「キュー・・・」
イゼベル先生は違う所に行く。オレとペールはその場で座り込む。
し、しんどい・・・。イゼベル先生の動きが可笑しい・・・。何だよ追いつかずに離れずについてくるなんて、まるで幽霊か何かだろ。おまけに魔法で攻撃してくるし。まさか徒競走と使い魔徒競走を選んだ結果、こうなるとは。あれは完全に殺しに来てる・・・。
「オメ―生きてるか?」
いつの間にかスティース先輩がこっちに来ていた。
「なんとか生きてますよ」
「オメー何で徒競走とか選んだんだよ。あのヤベー先生に死ぬまで走らされるって、解っていただろ?」
「オレはただやりたい種目がこれしかなかったんですよ・・・。でもこれはこれで良い練習になりますよ、逃げる為の」
「お、おう・・・。何かキモチワリィな・・・」
「酷くないですか?」
「オメーがワルイ」
「ラザ、ペール! 今すぐ立ってこっちに来い!」
「はい!」
「クゥ!」
オレとペールはイゼベル先生の方に行って、また走りの練習が始まる。
「・・・アイツ練習中に化物になってんじゃねぇか?」