IF34話 大事
7月中旬。休みの日。オレは部屋で実家から届いた、手紙を黙読してる。
「何て書いてある?」
「家の状況が書いてあった。何か今年は騎士と執事とメイドに、新人が来たらしいよ」
「新人が来たのか。珍しい事もあるものだな」
「普通に人数は足りていたからな。特に増やす理由は無かったし。今回何で雇ったんだろ」
「今までいた人たちが辞めたか、能力が高かったかのどっちかだろ」
「そうだろうな。これよりもっと大事なのが『ダンジョン』が出来た」
「ダンジョンとな。街の中心に出来たわけではないよな?」
「街の近くだってよ。ダンジョンが出来たのは、丁度7月入ったくらいに出来たらしいな。今は何処が所有するかで揉めてるみたいだな」
「ダンジョンは見つけた人が、どうこう出来る権利があるのではないのか?」
「そうだよ。見つけたのはウチの騎士団だから、騎士団に権利があるけど。そのまま親父の方に譲渡したみたいだな。ただ冒険者の方にも情報が行って、ギルドマスターが家まで押し掛けたみたい。裁判まで発展してるみたいだけど」
「大事ではないか。まだ終わってないのか?」
「まだ終わって無いみたいだな。オレが帰って来るまでには、決着をつけるみたいだな。後は王都の騎士団が来たみたいだな。目的はダンジョンにある、宝とかが目当てかな」
「王都の騎士団も来たのか。やはり街の騎士団では足りぬか。王都の騎士団が来ても、騎士の宿舎が無いのでは?」
「そこは王都の職人と材料を持ってきたみたいで、今は新しい騎士の宿舎を造ってるみたいだぞ」
「完成するまで何処で寝泊まりをしてるのやら。今年は帰ると色々大変ではないか?」
「大変だけど。ダンジョンに潜ってみたいんだよなぁ~。騎士団に同行出来るかな」
「出来たとしても。親からは許可を得られるのか?」
「・・・得られないかも。王都の騎士団が来たって事は、あの第3騎士団も来てるのか?」
「どうだろうなぁ。あの第3騎士団団長なら、真っ先に行こうとするだろうな。流石に命令されなければ、行く事はないか」
「どうだろうな。もし来ていたら、家で会う事になるな。ちょっと怖いな・・・」
「貴族相手に変な事はせんだろ」
「そう思いたい。そろそろ行くか」
オレは手紙を空間の中に入れて、部屋から出る。
行く所は森だ。今日は魔法科と冒険科の合同で、魔物を狩る。そこは騎士科でもいいだろ。って思ったが。魔法科にはエメリー様がいるから。冒険科にはオレとプリシラとサラサ様がいるから、冒険科に頼んだんだろうな。それプラス。変なお誘いが無いからって言うのもあるだろう。
「あの小娘は主とサラサがいるから、冒険科に頼んできたのか?」
「それもあるだろうけど。騎士科の生徒より、冒険科の生徒の方が強いからじゃないか? 人数はこっちの方が少ないけど」
「騎士科にはおらんかったか。まぁ妾らも余りおらんがな」
「4人しかいないからなぁ。それ以外は誰って感じだしな。仲良くなる気は無いけど」
「妾らに近づくのは大体は、悪質な勧誘だからな。最近は減って来たな」
「減って来ることは良い事だよ。勧誘してくる奴らは、何言ってるか分からないんだよ」
「ちゃんとした言語を使ってほしいものだな」
オレたちは森の方に行く。着くと何人か人が集まっている。オレはよく喋る先輩を探すと、ナタル先輩を見つける。
「おはようございます。ナタル先輩」
「ご機嫌よう。まだ全員は揃っていませんわ」
「集合時間にはまだ余裕があるからな。ちと早すぎたか」
「もうちょっとゆっくりすればよかった。今回参加する魔法科の生徒は、2年生だけですよね」
「そうですわ。魔法科の1年生はまだ基礎が終わったばかりなので、この森での魔物討伐には参加出来ませんわ」
「やっと基礎が終わったのか。ちと遅すぎるのではないか?」
「冒険科と魔法科を一緒にしてないか? 冒険科はイゼベル先生が教えてるんだ。基礎とかそんなの、すっ飛ばすに決まってるだろ。お陰で自分で調べることになったな」
「わたくしたちにお聞きになさればよかったのですが。あの時はそうもいきませんでしたね」
「あの時は雰囲気が最悪でしたね。スティース先輩が変わってくれたお陰で、雰囲気がガラリと変わりましたね」
「そのきっかけを作ったのはラザさんですわ。ラザさんがきっかけを作ってくれなければ、このような状態にはならないと思いますわ」
「きっかけを作ったのは確かですが。その後行動したのはスティース先輩ですよ。オレよりスティース先輩が凄いですよ」
「主よ。そう遠慮するような事を言っとると、ただの嫌味に聞こえるぞ。もうちと素直にならんか」
「あぁ・・・。うん。そうだな。ありがとうございます」
「はい」
待っていると魔法科と冒険科が集まって来る。先生たちも来て今回の行動を話しをする。先ずはパーティを作り森に入る。森に入るのは1つのパーティが入ったら、時間をずらして違うパーティが入る。イゼベル先生は先に森に入って、手に余るような魔物は先に殺しておくそうだ。オレはエメリー様たちとパーティを組んでいるが・・・。
オレはチラッとエメリー様たちを見る。少し場所が離れているから、全ては聞き取れないが。見るだけでエメリー様を、讃えてる事が分かる。
「まだ何も始まて何のに、もうご機嫌取りをやっているよ」
「あの小僧どもは駄目だな。先に死ぬやつだな。だがまぁあのエメリーが苦笑いをするのは、中々良いではないか。ちと困るが良い」
「酷い事を言う・・・」
時間になり、オレたちのパーティは森に入る。