IF30話 浮遊魔法
冬休みが終わり、2月中旬。午後の第2アリーナにて。
「ラザのやつかなり飛ぶのが上手くなってるな。ラザは空中戦でもやるつもりかぁ?」
「ただの移動手段かもしれませんよ。空中戦をするのはあまり無いと思いますよ」
「そうかぁ? ラザの事だから。空中戦でも戦えるように、練習をしてると思うけどなぁ」
飛ぶのもかなり慣れてきたな。ここから剣を振ったり槍を振ったりをして、空中戦出来るようにしないとな。
オレはプリシラの所に行って降りる。
「飛ぶことに慣れてきたな。これなら移動が楽になるだろ」
「プリシラが浮遊魔法を教えてもらってから、ずっと練習をしてるからな。空を飛ぶのは楽しいな」
「主は疑似的だが、経験をしたことはあるだろ」
「あれは空を飛んだとは言わないぜ。ただ乗り物に乗って、レールの上を通るだけだからな。実際に空を飛ぶと、かなり違うからな。風の抵抗はほぼ無いのが凄いな」
「身体を浮かせるだけではなく、ほぼ風圧を無効に出来る魔法だからな。これは風魔法でも代用できるな」
「プリシラから教えてくれなかったら、そっちを使っていたかもな」
「次は空中戦でもやるのか?」
「そのつもり。ただ何処ま出来るか分からないな」
「焦る必要は無いだろ。先ずは魔法からやってみるといいぞ。的は作ってやる」
「魔法からか。そうだな。魔法からやってみるか」
オレは浮遊魔法を使って空に飛ぶ。プリシラは的を出してもらい、空中に浮かせる。オレはその場で止まって風魔法を使う。止まって撃ってるだけなので、少し移動しながら撃つ。オレが移動して撃っていると、的も動き出す。攻撃を止めて的の動きを見て、分かって来たら風魔法で偏差魔法攻撃をする。
「当てるか。ならもう少し複雑な動きにするとしよう」
的の動きが少し複雑になる。オレはまた攻撃を止めて、的の動きを憶えようとするが。動きがランダムのお陰で、憶える事が出来ない。オレは風魔法の風の槍で、いつもより速く撃ち出して的を壊していく。
動きを憶えられないなら、的が動く速さ以上の速さで攻撃をすれば、的は壊せるな。その代りに魔力消費が早くなるけど。代わりに木剣で斬るか。
空間から研いでもらった木剣を出して、的を斬っていく。
「やっぱり空中戦の練習じゃねぇか。ラザはドラゴンでも戦うきかぁ?」
「いやドラゴンと戦う事は無いだろ。何かあった時の為だろ」
「・・・あの状態で魔法攻撃をして来たら、かなり厄介になりますね」
「ラザの事だ。普通の攻撃なんてしないで、変わった攻撃のしかたをするぜ」
「それで魔物や盗賊と戦うんだよな。何か可愛そうに思えてくるぜ・・・」
何とかバランスを崩さずに的を斬れてるけど、少しでもバランスを崩すと地面にぶつかるな。
バランスを崩さないように的を斬っていくが、的の動きが更に速くなりオレに襲いかかる。オレは何個か的を避けるが、攻撃を食らってバランスを崩し、地面の方に落ちていく。オレは何とかバランスを整えようとするが、整える事が出来ないまま落ちていくが、プリシラに助けられる。
「まだまだだな」
「初めてやるんだから、上手く避けられる訳が無いだろ」
「最初の方は上手かったと思うが。だが目の前の的ばかり見ていると、下から攻撃をされるぞ。現にあの教師が攻撃しようとしてたぞ」
「イゼベル先生ならやるな。攻撃される前に終わらせてくれたのか?」
「そうだ」
「ありがと。お陰で死なずに済んだ」
プリシラは地面に着地して、オレは下ろされる。オレとプリシラは少し休憩をする為に、アリーナの端の方に移動する。
「そろそろ進級に近づいてきたな。何か1年生でいる間は、かなり色々あったな・・・」
「その中で妾が召喚される事が、一番の予想外だったか?」
「その通り。だって絶対にエリオットの方で、召喚されると思ったんだぜ。予想外にもほどがある」
「・・・仮にそのおのこの所で召喚されていたら、妾はあのおのこが好きだったのか?」
「知ってるくせによく聞くよな。確かにプリシラは・・・・いやフランシスカは、エリオットの事が好きだったな。ただゲームだと他人と付き合う事が出来るから、フランシスカの恋は叶う時と叶わない時があったな。それは他の攻略対象も同じだな」
「・・・何とも言えん事だな。だがこれは現実だぞ」
「そんな事言われなくても分かってるよ。触っている感覚があるし、痛みもある。これを現実とは言わず、何と言うんだよ。これが現実じゃ無かったら、今すぐにでも目覚めたいものだよ」
「やはり元の場所に戻りたいのか?」
「そりゃ戻りたいよ。オレがいる所はここじゃ無く、元いた場所だよ。でもそれは永遠に叶わないと言ってもいいだろう。ならせめて前世よりも楽しまないとな」
「そうか・・・。ほれ練習を再開するぞ」
オレたちは浮遊魔法の練習を再開をする。
3月20日。今日は3年生の卒業試合。この学園は少し変わっている。それは卒業式は19日にやって、その次の日に卒業試合をやる事になっている。普通逆だと思うけど。まぁ元々ゲームだからいいんだけど。
その卒業試合が終わって外に出て、エメリー様とエディスさんと別れる。オレとプリシラは昇降口から校門に行く道の中心あたりの左端の方に行く。待っていると冒険科の2年生の先輩が来る。挨拶をして卒業生が来るのを待つ。待っていると卒業生が来る。拍手をして見送っていく生徒もいれば、卒業生と話している生徒もいる。
「―――ようオメーら。俺らは今日で卒業だ。あんまり良い言葉は出ねぇーが、一先ずこの1年間ありがとうな」
「スティース先輩、そしてお2人も。こちらこそ1年間ありがとうございます。午後の授業は楽しかったですよ」
「お、そうか。次は2年生になるな。後輩が入って来るといいな!」
「入って来ることを願ってますよ」
「そうだな。そんで2年生。ラザがまた無茶をやる事があったら、その時はちゃんと止めろよ」
「言われなくても分かってますわ」
「何か酷くないですか!?」
「酷くは無いですよ。何せラザは何回も無茶をしてるので、他の人たちにもこう言っておかないと。知らない所で無茶をすると思うので」
「た、確かに無茶をしましたが。何も言わなくても・・・」
「妾がいるんだ。無茶したところで妾が護ってみせるさ」
「無茶する前に止めてほしいんだけどな」
「そんな事より、写真でも撮るか?」
「写真撮れるんですか? ぜひお願いします」
オレたちは列から抜けて、離れた場所で写真を撮り始める。最初はスティース先輩たちだけで撮って、次は冒険科全員で撮る。
「イゼベル先生がいねぇなぁ」
「オレ探してきます」
オレは急いでイゼベル先生を探す。イゼベル先生を見つけたら声をかける。
「イゼベル先生。写真撮りませんか?」
「写真? ・・・まぁ卒業記念だ、わたしも写ろう」
許可を貰って、すぐにスティース先輩たちの所に戻る。戻ったら並んで冒険科全員で写真を撮る。
「―――ほれ。写真が出来たぞ」
「はやっ!? 前は時間がかかるって言っただろ」
「あれはただの嫌がらせだが」
「お前な・・・」
プリシラは皆に撮った写真を皆に配る。配り終わったら、スティース先輩たちは校門の方に行く。その後卒業生たちを見送ったら、教室に戻り春休みの注意事項を聞いて寮に戻る。