IF27話 写真
「それにしても高い。これはいくら何でも、高いのではないか?」
「あんまり言うなよ。変な目で見られる」
「既にこれだけで変な目で見られてますよ。ところでラザさんは気付かれませんでしたね」
「気付いてくれませんでしたね。私は普通にしてるだけなのに、普通にメイドとして見られましたね」
「声を変える必要は無かったな。こっちにクリスが来てくれるなら、まだこのままでいいだろ」
「来てくれますかね。ロザリーお嬢様の姿が見えないのですが。午後の方ですかね」
「ラ、ラザさんがお嬢様と言ってます・・・」
「仮とは言え今はメイドだから、お嬢様や坊ちゃんとかは言うだろ」
「言わないと怪しまれますからね。っとクリスお嬢様が来ましたよ」
クリス様がこっちに来て、料理をテーブルに置く。
「ねぇエメリー。このお2人は?」
「ラザさんとプリシラさんですよ」
「!? こ、声が違う・・・。失礼しました! 知り合いだと勘違いしてました」
クリス様がそう言うと、プリシラは笑うのを我慢しながら。オレたちにかかっている魔法を解く。
「気付かんか! 全く妾らに気付いておらんようだな!」
「えっ、まさか本当にラザとプリシラ!? 変わり過ぎでしょ・・・。でもエメリー声が変わっていたよ」
「魔法で声を変えていたんですよ。私はいつも通りにしてたんのですがね」
「全然いつも通りじゃないよね。メイクするとここまで変わるんだ・・・。仕事に困ったら、ボクの所に来る?」
「御冗談を。私ごときがメイドは務まりませんよ」
「出来ると思うけどなぁ」
「ところでロザリーお嬢様はいないのですか?」
「お嬢様・・・。ロザリーは現在休憩中でございます」
「そうですか。ありがとうございます」
オレはお礼を言うと、クリス様は一度会釈をして違う所に行く。オレたちは出された料理を食べて、少ししてから会計に行く。会計が終わったら教室から出て、違う所に行く。
時間が来たら、エメリー様と別れて外に行く。外に出て客引きをしている、クラスメイトを見つける。
「交代の時間ですよ」
「おぉ・・・やっと救いが来た・・・」
「大丈夫ですか?」
「全然大丈夫じゃ無い。精神がもうズタボロだ・・・」
「この程度で精神がズタボロになっていると、明日はもう死んでますよ。明日は生徒以外の人も来るのですから」
「それを言うな! 折角忘れていたのに・・・」
「忘れていても明日は来ますよ。変わってください、貴方は休むべきです」
「あぁそうするよ」
オレは看板を受け取って、客引きを交代をする。
「客引きか・・・。やった事無いんだよな」
「無いのか・・・。まぁなるようになるだろ。丁度あそこにモリスとクリオがおるぞ」
「あ、本当だ。モリス先輩クリオ先輩! ちょっとこっちに来てください!」
オレが声をかけると、2人はちょっと怪しそうにこっちに来る。
「えっとラザくん、だよね?」
「ラザですよ」
「何でメイド服を着てるのよ。何かのイジメ?」
「違いますよ、クラスの出し物ですよ」
「確かおかしな喫茶店だっけ? もしかしてメイド服を着た、男性がいるの?」
「来店してみれば分かりますよ」
「ここで答えを言いなさいよ。気になるじゃない」
「答えを言ったらつまらいですよ。来店してみれば分かりますよ」
「・・・そこまで言うなら行ってみようじゃない。ほら行くわよ」
クリオ先輩は先に行く。
「ま、待ってよ!」
モリス先輩はその後を追う。2人がいなくなったら、他の生徒たちがこっちに来て質問してくる。一通り答えを言ったら、生徒たちは教室に行く。
「何か疲れた・・・」
「質問攻めにあったからな。妾はただ笑顔でいただけだな」
「それだけで何人の人が落ちだろうか」
「主が落ちなければ意味がないだろ。中々落ちんな」
「簡単に落ちてたたまるか」
「―――そろそろ交代の時間です」
交代で来た運動会実行委員こと、アリスさんと交代をする。
「ラザさん。一体何をしたんですか? クラスに人が沢山来て、悲鳴を上げてましたよ」
「私はただ客引きの仕事を全うしただけですよ」
「お陰で男性生徒は使い物になりません。ラザさんもそっちをやってもらいますよ」
「丁重にお断りします。では失礼します」
オレとプリシラは教室に戻る。教室の前に着いたら男子更衣室に入って、制服に着替える。プリシラは着替え終わっていた。
「む、写真を忘れておったわ」
「明日でいいんじゃない?」
「そうだな」
1日目の文化祭が終わり、帰りのホームルームが始まる。終わったらオレとプリシラは寮に戻り部屋に入る。
次の日。文化祭2日目は生徒以外にも王都の人たちが来る。クラスの準備をしようとしたら、放送でエメリー様とオレが呼び出されて職員室に行く。職員室に入ってイゼベル先生の所に行く。呼ばれた理由はオレとエメリー様が攫われる危険性があるからだ。オレとエメリー様は教室に戻る。オレは男子更衣室に入って、メイクをしてメイド服着替える。着替え終わったら男子更衣室から出てプリシラを呼ぶ。呼ばれたプリシラは既に着替えていた。
「今日はあの日だな」
「あの日だな。何とかしないとな」
「妾おるんだ。そう危ない事は無かろう」
「頼りにしてるよ。でもまずは客引きだ」
オレは看板を持って教室から出て、外に行く。まだ始まってないが、既に何人か客引きが待機していた。
「もう待機してるな。朝からちょっとした客引きの激戦か?」
「朝はそんなに人は来んだろ。門の所はまだそんなに―――。朝からかなりおるな」
「文化祭だからな。遠くて見えないけど、人は沢山いるのか?」
「おるな。朝から大変な事だな」
放送が入り2日目の文化祭が始まる。門が開いて人がどんどん入って来る。オレとプリシラは客引きを始める。数分後交代の人が来る。オレはその人と交代をして教室に行く。
「あ、ラザとプリシラさん。今戻り?」
「今戻りですよ。今日はこれで終わりですよ。クリス様は午後からですか?」
「午後からだよ。客引きの仕事は早く終わってるねぇ。このままボクたちのクラスを手伝わない?」
「怒られるので止めてください」
「良い客引きになると思うんだどなぁ~」
「分からなくもないけど。ラザはアタシたちの、クラスメイト何だけど」
「ハイハイ。ラザとプリシラはどうするの? このまま一緒に回る?」
「あぁ他にやる事があるので、一緒には回れませんよ。それでは」
オレとプリシラは教室に戻る。
「(・・・アレは何かやるね)」
「どうしたの?」
「何でもないよ。それより科目の友達がキミを呼んでるけど」
「本当だ。じゃあね!」
エディスは科目の友達の所に行く。ボクはラザたちの所に行く。
オレとプリシラは着替え終わったら、中庭に行く。中庭に着いたら気配遮断を使って物陰に隠れる。
「何でも屋はあれだな。客引き中に会ったな」
「まさか会う何て思わなかったな。しかも普通に学園に入って来てるし」
「彼奴とっては造作もないんだろうな。ほれ早速捕まえに行くぞ。どうせ逃げれんだろ」
「だといいけど」
「―――アレが何でも屋? 意外と普通のおじさんだね」
後ろからクリス様の声が聞こえて、オレとプリシラ後ろを向く。
「ちょ!? 何でここに来てるんですか!? そして何でオレが見えるんですか?」
「キミのお陰で気配察知が上手くなったからね。それであのおじさんが何でも屋でしょ。なら早く合図札を使わないと」
「使ったバレるだろ。先ずは仕留めてから使うべきだろ」
「じゃあ行ってくる」
「待ってよ!? 行動が早いよ!」
オレは何でも屋ことルイスの背後にすぐに近づき、足払いをしてから捕まえて気配遮断を解く。
「確保っ!!」
「えっ、ちょ。何でおっさんが確保されているわけ? おっさんは一般客だょ!」
「しらばくれなくていいぞ。何でも屋のルイスよ」
「な、何の事かなぁ~。おっさんは一般客だよ」
「そうか一般客か。なら昨日は何故とある貴族と一緒にいた?」
「ききき貴族? さぁ知らないなぁ・・・」
「ならゼップ・ヴェルナー・カイスラーを知っておるか?」
「っ!? 知らないなぁ・・・」
「嘘を言うな。さっきの名前で小僧は反応したぞ」
「いやいやおっさんは本当に何も知らないよぉ。だから放してくれないかな?」
「・・・そう言えば最近は歳に敵わぬのか、そろそろ引退を考えておったな。これが最後に仕事だったか?」
「あれ~何か最近の事情を知ってるぅ~? もしかして、おっさんの追っかけ?」
「死にたいと見た」
「冗談、冗談だって。あぁここまでバレてるなら、素直に言いますよ。おっさんは『ルイス』何でも屋のルイスだ」
「知ってますよ。とりあえずここで捕まってください」
「逃げようと考えるなよ。逃げだしたら、うっかり殺めてしまうかもしれんぞ」
「こぉわ。そこの女性は随分と怖い事を言うねぇ~」
「いつもの事ですよ。今から合図札を使います」
「―――その必要はねぇよ。もうわたしが来た」
いつの間にかイゼベル先生が来ていて、何か道具を使って何でも屋のルイスを捕まえる。
「イゼベル先生、その道具は何ですか?」
「ただの魔力を封じるための魔道具だ。ほらオメェーらは残りの学園祭を楽しめ。ここからは大人の仕事だ。それとクリスに怒られてこい」
既にクリス様はこっちに来ていた。しかも怒っている。
「あ、はい・・・」
オレは何でも屋のルイスからどいて、地面に正座をしてクリス様から説教をされる。それが終わったら残りの時間で、文化祭をプリシラと一緒に回る。数時間後文化祭の終了の放送が入る。大部分は端折るが、1年Cクラスの出し物は全学年で2位。1位はロザリー様たちのクラス、2年Bクラスだった。教室に戻り片づけをして終わったら、またオレはメイド服を着る。プリシラも着替えをして、写真を撮るためにカメラと三脚を出す。
三脚もあるのかよ。
「これでいいだろ。後は隣に立つだけだな」
プリシラはオレの所に来て、一緒に写真を撮る。カメラで何枚か撮って、撮影は終わる。
「わざわざ教室やらなくてもよかっただろ」
「なにただの当てつけだ。小娘どもが悔しがるだろ」
「いや悔しがるわけ無いだろ。・・・って顔がちょっと怖いですよ」
「ズルくない? ズルいよね」
「ズルくは無いぞ。これは妾のカメラで撮ったんだ。誰も文句は言わせんぞ。あぁ其方らだけなら撮ってやるぞ」
「・・・・・・っお願いします」
悔しそうにエメリー様がお願いをする。エメリー様とエディスさんは並んで、プリシラはカメラで撮影をする。
「なぁプリシラ。4人で撮ってもいいんじゃないか? それくらいは許容出来るだろ」
「・・・まぁいいだろう。だが他の奴らは絶対に撮らんぞ。そこの教師もだ」
「わたしは撮られたくねぇよ。オメェーらだけで撮ってろ」
プリシラは撮影をするために少し準備をする。オレはエディスさんの隣に行く。少ししたらプリシラはこっちに来て、写真を撮る。終わったら教室から出て寮に戻る。写真は後日渡した。