IF25話 メイド服
待っているとドワーフの店員さんが戻ってくる。
「研げたぞ。これが研いだ木剣だ」
ドワーフの店員さんは、オレに木剣を渡してくる。オレは木剣を受け取る。
「普通の剣と一緒だ。木剣だと形だけだから、斬る事は出来なかったな」
「主よ。丁度ここに木の板がある。これで試し斬りをしてみろ」
「・・・プリシラは空間収納魔法でも使えたのか?」
「使えるが。逆に使えないと思うたか」
「マジかよ・・・」
オレはプリシラが持っている木の板を、木剣で斬る。斬ると木の板は綺麗に斬れる。
「木剣で木の板を斬れちゃったよ・・・。何かあった時に使うか」
「それにしても。何だぁその木剣は? 一体何をしたって言うんだ?」
「あぁ実は。精霊魔法を試すために、この木剣に付与魔法と強化魔法を使ってみたんですよ。そうしたら想像以上の効果がありまして・・・」
「そんでこの硬さか・・・。お前さん。今後人前で精霊魔法を使って、武具に付与すんじゃねぇぞ。ヘタすると国宝級と思われるぜ」
「肝に銘じておきます」
「んじゃ代金だがよぉ。今回は特別価格で銀貨20枚だ! 無論今回使った剣の代金は入ってねぇ。これはミスリルの砥石を使った代金だ」
オレは空間から銀貨が入った袋を出して、銀貨20枚を出してドワーフの店員さんに渡す。
「すんなり出したな。負けてくるかと思ったぜ」
「まだ懐に余裕があるからですよ」
「そうかよ。ところでミスリルの砥石は必要か? 1個銀貨500枚で売ってやるぜ」
「あ、そこまでお金はありませんよ」
「何だねぇのかよ。ならしょうがねぇな」
「お金が貯まったら、買いに行きますね。ではオレたちはこれで」
「おう。何か入用ならまた来よ」
オレたちは店から出る。ついでにこのまま他の店に行く。
9月20日。男子寮の自室にて。
文化祭の出し物が決まってから、色々準備をしてきた。今手元にあるのは文化祭で使う衣装だ。
「まさか女装する日が来るとはな・・・。何でこんな喫茶店に決まったんだろ・・・」
「確か男装女装をする喫茶店『おかしな喫茶店』だったか。決まったのは、あのエメリーがやりたいと言ったからだろ。その結果おのこの生徒たちは、賛成をしたんだろ。あの後後悔してたがな」
「何でエメリー様の言葉で決まるんだよ」
「第2王女だからだろ。で、着るのか? メイド服を着るのか?」
「着るしかないだろ。サイズが合って無かったら、作り直しって事があるだろ。着たくないけどな。先にメイクをするか」
オレは空間からメイク道具を出して、自分でメイクをする。
「主はメイクをすると化けるな。本当はおなごだったのではないか?」
「どう見ても男だろ。メイド服に着替えるけど。後ろ向いとけよ」
「別に見られても平気だろ」
「・・・お前さぁ。お前みたいな美人な人に肌を見られるのは、凄く恥ずかしいだろ。だから後ろを向いていろ」
「ほぉ~肌を見らえるのが恥ずかしいのか。その感情も持っていたか。持って無いと思ったがな」
「絶対にそう思って無いだろ。人の過去を見れるんだ。そう言ったものは既に知っているだろ。分かったら後ろを向いていろ」
「分かった分った。後ろを向いていればいいのだろ」
プリシラは後ろを向く。オレはすぐにメイド服に着替える。着替え終わったら、プリシラをこっちに向かせる。
「――――――何とまぁ変わるものだな。初見では絶対に見抜けないぞ」
「すぐに見抜いてほしいな。可笑しなところはあるか?」
「無い。後は髪を梳かしてサラサラして、胸に詰め物を入れれば。完璧なおなごになるな。喋るとボロは出るだろうがな」
「詰め物は流石にやらないぞ。・・・さっきからじわじわとこっちに来てるが、何か顔に付いてるのか?」
「なにちと顔に触れたくてな。そう怖がるな。悪い事はせんよ」
「いや来るな。真正面からお前が来ると、恥ずかしいからな。鼓動が大変な事になるからな」
オレがそう言うと、プリシラは無言で更に近づく。
「おいおい何で更に近づいて来るんだよ!?」
「なに。一部の貴族はメイドを愛でたりする奴もおるのだろ。妾はそれをやろうとしてるだけだ」
プリシラはオレに近づき、両手で顔を優しく触る。オレは顔を赤くする。
「なななななな何をする気だ!?」
「ここまでくれば分かるだろ。それとも、言わないと気付かないのか?」
プリシラは顔を近づけてキスをしようとする。オレはキスされそうになるが、すぐプリシラを突き放す。オレは顔を両手で顔を隠してしゃがむ。
「―――はぁ。反応がおなごそのものだな。初々しいと言えば聞こえが良いが、逆に根性無しや度胸無しとも受け取れるぞ」
「キスは駄目だろ・・・。そう言うのはまだ駄目だろ・・・」
「まだ、か。いつかキスもまぐわいもしてくれるのか?」
「・・・・・・やっぱり永遠に駄目かな」
「主が駄目と言われても、妾が手を出すかもな」
「止めてくれ・・・。後ろは何か変な所は無いか?」
オレは顔を両手で隠した状態で立って、後ろを振り向く。
「特に可笑しい所は無いぞ。初めて着た割にはすぐに着こなしてるな」
「オレもそう思ってるよ。後は動いても大丈夫かだな」
「(それにしても切り替えが早いなぁ)」
オレは両手を顔から離して部屋の中を歩き回る。動きづらい事は無かったので、メイド服から私服に着替える。オレは本番当日まで着ないと決める。




