IF23話 度肝を
休みの日。部屋で合宿中に付与した木剣を出す。
「この木剣どうするか。並大抵の硬さで叩くと、叩いた物が壊れるな」
「壊れるだろうな。そう言えば。かなり前に誘拐された後、騎士団任せたが。あの後どうなった?」
「あれなら手紙が届いて、手紙に書いてあったよ。簡潔に言うと。オレを誘拐の指示した貴族は捕まった。これでイベントは潰せただろ」
「それ以降出るイベントもか?」
「丸々潰れたな。プリシラはオレの過去を見てるんだろ。結末も知ってるだろ」
「そうだが。もう少し体験したいものだな」
「別に体験しなくてもいいだろ。体験しなかったからと言って、死ぬわけじゃ無いし。そもそも結末が分かっているもを、わざわざ体験したいと思うか?」
「したくないな。だか予想外な事も出来るだろ」
「そこまでしたくないし。何回か死にそうになる所もあるから、オレはそんな目に遭いたくないよ」
「それは妾も困るな。やっぱりそのイベントは、無かったことにしよう」
「そうしてくれ。さてこの木剣をどうするか」
「空間の中に入れとけばいいだろ。それともその辺に捨てるか?」
「その辺に捨てるのはヤバいだろ。仮にこれを拾った人が使って、これは国宝級だー! 何て言われたら。かなり困るぞ」
「この程度国宝級などと言うとは思えんがな。それにそこまで硬くは無いだろ」
「試して無いから分からないな。試してみるか」
オレは空間から剣を出す。
「鉄の剣だけど。これ絶対に純度100の鉄じゃ無いだろ」
「そうだろうな。純度100の鉄何てそう簡単に、あるわけが無かろう。常に部屋には結界を張っているぞ」
「どうも。木剣持ってくれ」
プリシラは木剣を持つ。オレはプリシラから離れて、剣で木剣を斬る。剣が木剣に当たると、剣が折れる。木剣の方は特に何ともなかった。
「嘘だろ。鉄の剣が負けたぞ」
「この木剣の硬さが異常だな。これは鋼を使うべきではないか?」
「鋼か。オレは持って無いな。そもそもこっちにあるのか? 一応あれは合金だが」
「あるぞ。実際に鋼系の武具はあるからな」
「あるんだ。なら鋼系の武器を買いに行くか」
「この雨中を歩くのか。妾は止め方がいいと思うが」
オレは外を見る。プリシラが言ってた通り、外は雨が降っている。しかもかなり強く。
「止めておこう。実は台風でも来てるんじゃないのか?」
「いやただの雨だが。この大陸で台風はそう来ないだろ」
「来るときは来るんだな。話がそれたけど。次は貸与魔法と強化魔法を使って、剣を硬くするか」
オレは折れた剣をしまって、刃を拾って空間の中にしまう。違う剣を取り出して、貸与魔法と強化魔法で剣を硬くする。硬くした剣で、木剣を斬るがまた剣が折れる。
「この木剣硬すぎるだろ・・・。精霊魔法恐ろしすぎる・・・」
「ここまで木剣が硬いと、この木剣だけで戦えそうだな」
「無理があるだろ。相手がミスリル並みに硬かったり、オリハルコン並みに硬かったら。この木剣は折れるだろ」
「折れるだろうな。だがそれ以外の相手なら、折れる心配は無いだろ」
「かもな。それにしてもこの木剣は、傷1つついてない。周りを研いだら斬れるだろ」
「だがこれを研ぐには、普通の砥石では研げんだろ」
「逆に砥石が壊れそうだな。・・・普通の砥石って言うけど。他にも砥石ってるのか?」
「あるぞ。ミスリルの砥石や、オリハルコンの砥石とかな。中々手に入らないと品物だな」
「そんな砥石があるんだ。本当に砥石か?」
「砥石だとも。それらを使わないと、ミスリルやオリハルコンの武器を研げないだろ」
「あぁやっぱり普通の砥石じゃ研げないんだ。そもそもミスリル製などの武器って、そう簡単に売ってないだろ」
「その辺に売っていたら。今頃安値で売られているだろうな。明日はいつも行っている武器屋にでも行くとするか。あのドワーフなら持っているだろ」
「マジか。いつあのドワーフの店員の過去を見たんだ?」
「そんなもん忘れたよ。憶えていても、何も役に立たんからな」
「役に立つものなら憶えるんだ。明日行くとして、この木剣を研ぐのか?」
「それ以外に何がある。気にならんのか? この木剣はミスリルの砥石とかで研げるのかを」
「気になるけど。その場で帰れって言われそうだな」
「そのドワーフの目の前で、木剣を使えばいいだろ。それであのドワーフを黙らせる事が出来るだろ」
「確かに黙るだろうけど。度肝を抜かれないか?」
「それは無いだろ。相手はドワーフだ。この程度で度肝を抜かれては、この先でも度肝を抜かれだろ」
えっ。この木剣よりもっと凄い物を見せる気ですか?
「もっと凄い物を見せる気でもいるが。何か問題はあるのか?」
「あ、顔に出てたんだ。問題はあるだろ。ドワーフがぶっ倒れたら、当分その店がお休みになるだろ」
「平気だろ。とにかく明日行くぞ」
「・・・明日だな。片付けるか」
木剣を受け取って空間の中に入れる。折れた剣と刃を空間の中に入れて、残った時間は暇潰しをする。
次の日。出かける準備をして、オレたちはドワーフが営業している、武器屋に行く。