IF18話 笑いながら
魔法による一斉攻撃が終わる。人数が少ないので、魔法での殲滅は期待できないが、何もしないよりましだと思った。残ったゴブリンは白兵戦で戦う。団長はすぐに前に出てゴブリンを殺す。団長に続き騎士と先輩たちが行く。オレは空間から剣を出して、戦いに行こうとするが、ロザリー様がその場から動かなかった。
「どうしたんですか? この数を前にして動けなくなりましたか?」
「・・・・・・そうだ。あの数を見て私は動けないんだ」
「初めてなのか? だが慣れねばこの先生きてはいけんぞ」
「わ、分かっている。分かっているが・・・」
「このままではここでボッ―と見るつもりか? 別に構わんぞ。初めてだからな。そう言う事もある」
「だ、だが私は・・・」
「無理せんで良いぞ。誰だって最初はそうだからな」
あぁこれは長引くな。しょうがない。
オレは何も言わずに、ロザリー様の背中を叩く。
「い、いきなり何をする!?」
「ただ叩いただけですよ。で、少しは緊張は解けましたか?」
「す、少しは・・・」
「ならそのまま走って、戦えばいいと思いますよ。そうすれば慣れますよ。そんな事しなくても、オレが無理やり連れて行きますが」
オレはロザリー様の腕を掴んで走り出す。
「ちょ! 待て。自分で走れる。その手を放してくれ!」
「プリシラ。ゴブリン近づいてきたら」
「殺めればいいのだろ。任せるがいい」
「どうも!」
オレはロザリー様を連れて、中心の所に行く。
「よく周りを見てください。誰も1人で戦ってはいません。仲間と一緒か使い魔と一緒に戦ってますよ。1人で戦う必要は無いんですよ。ロザリー様も使い魔がいますよね」
「あぁ。私にアルマンがいる」
「ならそのアルマンを呼んで戦ってください。そうすれば怖さを分ける事が出来ますよね」
「(怖さを分けるとは一体?)」
オレはロザリー様の腕から手を放す。
「・・・来い、アルマン!」
ロザリー様は使い魔のアルマンを呼び出す。呼び出されたアルマンは、ロザリー様に近づく。
「おぉライオンだ。ロザリー様。もう戦えますか?」
「ここまで無理やり連れて来られたんだ。嫌でも戦うさ」
「そうしてください。慣れれば普通に戦えますよ。あの団長みたいに」
「アハハハハハハッ! そんな鈍い動きで殺そうとしたの!? そんなんじゃいつまで経っても、あたしを殺せないねぇ!」
団長は笑いながらゴブリンを殺して行く。
「・・・・・・あそこまでならなくていいです。あれはちょっと異常です」
「分かっている。すまないな。手間を取らせて」
「大丈夫ですよ。こっちは1体でも多くのゴブリンを、殺してくれるならそれでいいので」
「そうする。行くぞアルマン!」
ロザリー様とアルマンは先に行く。オレたちもゴブリンを殺しに行く。
「あれでよかったのか?」
「良かったと思うぜ。トラウマになるんじゃないかと、ヒヤヒヤしたけどな」
「違う方法があったと思うが」
「それを考えるより、先に行動した方が早いだろ」
オレは走りながらゴブリンを斬っていく。途中で団長を見る。
団長は凄いなぁ・・・。オレが2体づつ殺していると、団長は6体まとめて殺してる。使っている武器は・・・、ハルバードか? やっぱり武器が長いとまとめて殺す事が出来るな。
「アハハハハハハッ! 弱いお前たちが数で殺しに来ても、意味が無いんだよ!」
こわ。何で団長は戦いながら笑ってるんだ? 怖すぎるだろ。団長が味方で良かった・・・。
オレは後ろから襲ってくるゴブリンを殺す。空間からもう1本剣を出して、ゴブリンを殺して行く。プリシラは水魔法で片っ端から殺して行く。オレは時々団長を見る。
槍? ハルバードから槍に変わってる。武器を変えたのか?
オレは団長の武器を見ていると、槍からハルバードに形を変える。
はぁぁぁぁぁ!? 槍からハルバードに変えるだとぉぉぉぉぉ!? かっこ良すぎだろ。オレも使ってみたい。
「団長が使っている武器かっこ良すぎだろ。一体どう言う原理で武器の形を変えてるんだ?」
「知らんな。精霊界とこっち世界では、ある物とない物がある。あれは多分ない物だろ」
「やっぱりある物とない物がちゃんとあるんだ。それにしても数が多いな」
かなり殺したが減ってる感じがしない。これでも家や洞窟を囲んだり塞いだりしてるが、かなりのゴブリンが外にいたのか。それとも他にも集落があるのか?
「プリシラ。まだ他にも集落ってあるのか?」
「無いぞ。このゴブリンどもが異常にいるだけだ。家や洞窟または地中には、人の死骸が無い事から。ゴブリンだけで繁殖したのだろう」
「あぁだから雌もいたのか。・・・何で家や洞窟を見てないのに、ゴブリンだけで繁殖してるのが分かるんだ?」
「『透視魔法』を使ったからな。これを大体使えば透けて見えるぞ」
「なるほど。オレには使って無いだろうな」
「使って無いぞ。使えば怒られるからな」
「分かっていて良かったよ」
「妾はそこまで戯けではない。しかしこのままジリ貧だな。他の魔法で一気に殺めるか」
プリシラは魔法を使う。2本の氷の剣を出して、それを飛ばしてゴブリンを殺す。その2本の剣は消えることなく、また違うゴブリンを殺して行く。
「何で自動追尾してるんだ?」
「普通だろ。妾らでは普通にやっていたぞ」
「自動追尾が普通なんですか。何それこわ」
「主も出来るようになる。今はゴブリンどもを殺めるぞ」