第11話 何で?
素振りをしていると、イゼベル先生と他の複数の先生が来て、その後ろにはケージを11個を引きずってこっちに来る。
「すまん、少し持ってくるのに時間がかかった。今回オメェーらにはこの『ホーンラビット』を殺してもらう」
少し大きいケージを1個をオレたちの前に置く。
「せ、先生。さっきから『殺せ』と言ってますが『倒せ』じゃないんですか?」
「どうでもいい質問だな。わたしの中では『倒せ』っと言うのはどうも虫唾が走る。まるで惰弱が言うような台詞に聞こえる。だから『殺せ』だ。まぁもっと単純な事を言うなら、倒せより殺せの方が解りやすいだろ」
「は、はい」
確かに解りやすい。
「他に質問は無いか?」
イゼベル先生はそう言う。オレ含め生徒たちは特に何も言わなかった。
「なら始めようと思うが。ラザ。何でお前は剣を持っている?」
「もしものためです。必ずしもオレの方に魔物が襲ってこないって、保証はありません。自衛するために武器を持ちました」
「なるほど・・・。その判断は間違ってない。そういう判断はこの先も忘れずにいろ」
「はい」
「よし。これから流れについて説明をしておく。3年生から順にホーンラビットを殺してもらう。殺し終わったら各自で解体をして貰う。3年生と2年生はもう解体の事は、去年教えてもらっているだろう。もし忘れていたら、解体の本を貸す。分かったか?」
「「「「「はい」」」」」
「なら最初はスティース。お前から始める」
「おう!」
「他の生徒は少し離れていろ」
オレに質問してきた人が、スティースって言う人なのか。あ、オレも離れないと。
スティース先輩以外は離れる。他の先生はケージを開けて、中にいるホーンラビットを解放する。ホーンラビットはケージから出て、真っ先にスティース先輩の方に行く。
「はっ! おせぇよ!!」
スティース先輩は槍でホーンラビットを串刺しにする。
「――――――ッ!」
オレは串刺しにされたホーンラビットを見て、自分の口を手で押さえる。
は・・・吐きそう・・・。串刺しをあんな間近で・・・見る事になるなんて・・・思わなかった・・・。
「・・・ラザはこれが初めか。吐かないように口を押えた事は褒めてやる。スティースはこっち来い。ナイフを渡すから、ホーンラビットを解体をしろ。無論離れた場所でな」
「へぇ~い」
「引き続き他の生徒は、ホーンラビットを殺してもらうぞ」
先輩たちはホーンラビットを殺していく。オレはそれを見ながら、何とか吐かないように我慢をする。
「大体終わったな。最後はラザだが・・・。今日は解体だけでいい。ホーンラビットの方はわたしが殺しておく」
「はい・・・」
イゼベル先生はケージの所に行って、ケージの蓋を開けてホーンラビットを殺す。
「――――――しまった!?」
ケージの蓋が開いた事で、すぐにホーンラビットが飛び出して、オレの方に来る。
「逃げろっ! ラザ!!」
「―――ちっ!」
「スティース!?」
こっちにイゼベル先生とスティース先輩が来るけど、間に合わない・・・! 考えてる暇は無い!
オレは剣を持って構える。ホーンラビットはこっちに来るタイミングを見て、ギリギリのところで左にズレて剣でホーンラビットの首を斬る。
「「――――――っな!?」」
オレは剣をその場で落として地面に座る。
「ハァ・・・ハァ・・・」
何で? 何でホーンラビットを殺せた? 剣を持つところまでよかった。ただ殺すんじゃなく攻撃を防ぐためにやるつもりだった。でも実際はどうだ? オレは左にズレてホーンラビットの首を斬って殺した。殺した? オレはホーンラビットを殺したのか? この手で?
オレはホーンラビットを殺したという、事実を受け入れられずに両手が震えだす。
殺した。殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した。小さい虫を殺すのとは訳が違いすぎる・・・! 血が、血がドバーって出てきてる・・・。無理だ。オレには無理かもしれない。ずっと日本で平和に暮らしていて、自分の手で動物を殺した事なんて無い。そんなオレがこの先魔物を殺せるのか? そんなの―――。
「―――おいラザ! しっかりしろ!」
「! イゼベル先生・・・。オ、オレ・・・」
「いい喋るな。今はそのままでいろ」
オレは頭を縦に振る。
「っんだよラザの奴。普通に殺せると思っていたら、初めて殺したやつかよ・・・」
「・・・なぁスティース」
「あぁ何だよ?」
「お前ってさぁ・・・。実は優しいじゃないのか?」
「はぁぁぁ? なに言ってるんだ? 俺の何処がやさしぃって言うんだよ?」
「だってよ。あの1年生を助けようとしてたんじゃないか。ほら前におれたちを―――」
「はっ! そんな俺の気まぐれだっ!」
「あっスティース!」
数分後。
「―――イゼベル先生。もう大丈夫です」
「そうか。意外と早く立ち直ったな」
「はい。少し思うところがあったので」
「それならわたしも聞きたい事がある。ラザ。お前は初めて魔物を殺した、でいいんだな?」
「はい。オレは今日初めて魔物を殺しました」
「・・・わたしにはそうは思えない。あの動きは少し戦いを知っている動きだったぞ。素人がギリギリで相手の突進を避けて、攻撃をするのは難しい。それをいとも簡単に出来た。実は魔物を殺したことがあるじゃないのか?」
「無いですよ。あったらこんな事で震えたりしてませんよ。それにこんな質の悪い演技もしません」
「まぁとっさの判断っで動いたとしよう。聴く順序が違うが、何で剣を構えて戦おうとした?」
「本当なら攻撃をしないで剣でホーンラビットの攻撃を、防ごうと思ったのですが・・・」
「―――そこから勝手に身体が勝手に動いたのか。分かった。ラザ。謝罪を言うのが遅れた。すまなかった。わたしの不注意でラザを危険な目に遭わせてしまって・・・」
イゼベル先生は頭を下げる。
「いえ、大丈夫ですよ。オレは何処も怪我をしてないので」
「・・・そうか。今日は解体をしてもらうつもりだったが、今日は無しだ。この死体はわたしが持っておく。明日やってもらうぞ」
「分かりました」
「他の生徒は解体は終わったか?」
「終わっています」
「・・・・・・時間も丁度終わりだな。今解体した物は空間の中にしまっておけ」
「せ、先生! 2年生の私たちはまだ空間収納魔法が使えません!」
「使えないぃぃぃ? 1年の時に何故教えてねぇのかよ・・・。分かった。解体した肉はわたしが預かるから持ってこい」
2年生の先輩たちはイゼベル先生の所に行く。
「明日は昼飯を少なくしろよ。明日は今日殺したホーンラビット肉を、焼いて食べてもらう。では解散!」
イゼベル先生はそう言う。オレはすぐにイゼベル先生の所に行く。
「どうした? まだ何かあるのか?」
オレは空間から前に貰ったプリントを出す。
「前に貰った使い魔の届出書です」
「はぇーな。期限は少し先だが、早くやる事は良い事でもある。だが早くやればいいって訳でも無い。そこの事は憶えておけよ」
オレはプリントをイゼベル先生に渡す。
「午前中も言ったが、午後の授業が終われば帰りのホームルームは無い。気を付けて寮に戻れよ」
「はい。さようなら」
「あぁさようなら」
イゼベル先生は職員室に戻って行くだろう。
それにしても何で殺せたんだろ? もしかして【ラザ】は過去に魔物を殺した経験があるのか? そんな設定は無かったはずだけど・・・。まぁいいや、夏休みに家に帰ることが出来るから、その時にトーマスさんに聞くか。
オレは更衣室に行く。