IF16話 討伐隊
3日目の夜。
知らない貴族に呼び止められて、かれこら1時間ペラペラ話を聞いてるけど。ほぼ同じような内容何だけど。よく飽きずに喋れるな。口の中乾燥しないのか? 絶対に乾燥してるだろ。それにしても1人で部屋に戻るのは失敗したな。まさか未だに勧誘をしてくるとは。そんなにプリシラが欲しいのか?
「――――――という訳なんだけど。どうかな? 君にとっても良い話だと思うが」
「すみません。後半何言ってるか分からなかったので、お断りしますね。それにオレは冒険者になるので、誰かに仕える気は無いですよ」
「なっ!? 君は貴族だろ! なんで君は危険がある冒険者を選ぶ?」
「騎士だって危険があるじゃないですか。オレは騎士より冒険者の方が良いんですよ。分かったら、そこをどいてくれませんか? それともオレがどいた方がいいでしょうか?」
オレは左側にズレる。男性生徒は同じように左側にズレる。
「待て待て。本当に私の所に仕えないと? これでも私は伯爵家を継ぐ人間だぞ。私に仕えておけば、君の親だって喜ぶだろ」
「その程度で喜ぶとは思いませんよ。どうせなら第1王女と結婚した方が、親は喜ぶと思いますよ。する気は無いですが」
「ぐっ・・・」
「まぁ身分が自分より上の人と結婚するより、心の底から愛している人と結婚した方が。親は喜ぶと思いますがね。もういいですか?」
「まだ終わって無いぞ!」
「いいや終わりだ」
後ろからプリシラの声が聞こえた。オレは後ろを振り向くと、プリシラとスティース先輩とナタル先輩がいた。
「小僧。主に下らん勧誘するのはそこまでにしておけよ。まだやるのなら、分かっておるよな?」
プリシラは男子生徒を睨む。男子生徒は怯える。
「きょきょきょ今日はこれで失礼するよ・・・。気が向いたらいつでも声をかけてくれ!」
そう言って男子生徒は走って何処かに行く。
「ったく。またラザを勧誘しようとしてたか」
「あそこまでしつこいと気が滅入るのでは?」
「少し慣れてきましたよ。流石に合宿中に勧誘されるとは、思いませんでしたけど」
「あぁいう勧誘は無視しとけっての。どうせ下らねぇ内容なんだからだよぉ」
「そうだぞ主よ。今度から無視をするといいぞ」
「あんまり無視をすると。今度は喧嘩になりそうだな・・・」
「それは無いと思うが。ほれ部屋に戻るぞ」
オレたちは部屋に行く。途中で悲鳴声が聞こえる。
「また覗きに行ってたのかよ。何で行こうと思うんだ?」
「わたくしに言われましても分かりませんわ。ただ低俗だという事は分かりますわ」
「オレからしたら、自殺願望があると思えるんですよ」
「それは無いと思いますわ。ではわたくしはあちらなので。ごきげんよう」
ナタル先輩は部屋に戻っていく。オレたちも部屋に戻る。
4日目。オレは起きて寝間着から練習着に着替えたら、食堂に行く。移動してる途中でイゼベル先生に会う。挨拶をしたら、冒険科の生徒を全員食堂に来るように伝えろと言われる。オレはすぐに冒険科の生徒がいる部屋に行って、先輩たちに伝える。それが終わればオレは食堂に行く。
時間が少し経つと、騎士科の生徒と冒険科の生徒が集まって来る。待っていると騎士科の1人の先生が話し始める。
「皆さんおはようございます。朝早くから起こして申し訳ないですが、緊急事態の為皆さんを食堂に集まってもらいました。驚かずに落ち着いて聞いてください。今から1時間前に宿の近くに『ゴブリンの集落』が見つかりました」
それを聞いた生徒たちは驚く。オレも驚く。
おいおいマジで集落があったぞ!? どうなってるんだよ。この辺はちゃんと騎士団が調べたんじゃないのか?
「ねぇラウルちゃん。この辺の調査を任せられていた騎士団って、確か第5騎士団?」
「第5騎士団です」
「ッチ。役立たず騎士団。プライドは高くても良いけど、せめて仕事くらいは真面目にやってほしいねぇ」
話声は聞こえないけど、第3騎士団の団長が怒ってる・・・。確かルトリさんだっけ?
「団長とぼくたちで話し合った結果。ここから逃げる事にしました」
「(あたしは納得してないけどねぇ)」
「せ、先生。こっちは第3騎士団がいるので、迎え撃つことは出来ると思うのですが」
「出来るかもしれませんが。第3騎士団は数が少ないです」
「あたしたちは常に最前線で戦ってるから、数が多いとそれだけ死者が増えるんだよねぇ。気付いたら精鋭何て言われてるねぇ」
「そう言う事もあり。こっちから仕掛ける訳にはいきません」
いくらルトリさんが強くても、数には負けるよな。一応プリシラを呼んでおくか。
オレはプリシラを呼んで、今の状況を説明をする。
「ゴブリンの集落があるのは驚いたが。良い機会ではないか。精霊魔法を思いっきり使える、またとない機会ではないか」
「いやそうだけど。流石に許可が出ないだろ」
「出るだろ。丁度あの戦闘好きを唆せば、簡単に許可が出るだろ」
「乗ってくれると思うか?」
「乗るだろ。主はやる気はあるのか?」
「まぁあるけど。攻撃魔法系の威力も見ておきたいからな」
「先生! こっちは精霊を召喚したラザがいます! 彼らと騎士団が協力すれば、ゴブリンの集落を潰せるのでは?」
「精霊ですか・・・。ただラザは複数の魔物と戦えますか?」
「それはわたしが保証しよう。前にオークの群れを1人で潰してるからな。実力は確かにある」
「ですが精霊との連携は取れるのでしょうか?」
「精霊が勝手に合わせるだろ。連携を取る前に相手が死ぬがな」
「なるほど。あの2人ならゴブリンの集落を軽く潰せるでしょう」
「ならあたしも参加しようかな。一応何人か騎士を連れて行くけど」
「団長!? 死ぬつもりですか!」
「あたしが簡単に死ぬと思う?」
「死ぬわけが無いですよ! どうやったら貴女様が死ぬんですか!?」
「でしょ。逃げるのは副団長ラウルにまかせます。たた今からすぐに早馬で王都に手紙を持って、行ってください」
「分かりました」
「あ! すみません。その早馬に貸与魔法と強化魔法を使っていいですか?」
「頼む! 付いてきてくれ!」
オレとプリシラは副団長と一緒に外に出る。出たら外で待機している騎士の所に行く。
「ハドラ。お前が乗っている馬は速いだろ」
「速いが。それがどうした?」
「今からこの手紙を持って、王都の他の騎士団に渡せ。出来れば機動騎士団に渡してくれ」
「りょーかい。んじゃ行ってくるぜ」
「あぁ待て。今からその馬に貸与魔法と強化魔法を使ってもらえ」
「そいつは嬉しいな。で、その生徒がやるのか?」
「オレがやります」
オレは貸与魔法と強化魔法で馬に速さと体力を強化をする。次は騎士に耐風圧強化をする。
「俺にも強化するのか?」
「念のためですよ。一時的とは言え、絶対に馬から落ちないでください。落ちたら死にます」
「そこまで強化してるのか? まぁいいや。んじゃ今度こそ行ってくるぜ!」
ハドラさんは馬を走らせると、普通の馬以上の速さで走って行く。
「・・・あれは可笑しいと思う」
「オレも可笑しいと思います」
「お前もそう思ってるのか。すぐに戻ろう」
オレたちは戻って、先生たちの所に行く。
「戻って来たね。じゃあ討伐隊だけど、生徒たちはこうなったよ」
オレとプリシラは生徒を見る。
「スティース先輩たちは残るだろうと思ってましたが、まさかロザリー様も残るとは思いませんでしたよ」
「先輩方が出るんだ。私が逃げる訳が無いだろ」
「逃げてほしいのですが。イゼベル先生は逃げる方なんですね」
「わたしも参加しかったが、ルトリに止められてな。言ってることは間違ってねぇから、反論が出来なかった」
「イゼベルがいると過剰戦力になるからねぇ。後はあたしのところの騎士達だね」
「生きて帰ってこいよ。じゃねぇとわたしたちの首が飛ぶ」
「大丈夫大丈夫。キッチリ皆殺しにしてから、帰って来るって。じゃあ皆殺しに行こうかぁ」
うわぁ嬉しそうだな・・・。