IF15話 楽しいから
オレは飛んでくる斬撃を、付与魔法と強化魔法で硬くした木剣で斬る。
「飛んでくる斬撃なんて、イゼベル先生しか出来ないと思うんですか」
「お前も出来てるだろうが。いつから気付いていた?」
「さぁ? それを教える必要は無いと思いますが」
「それもそうだな。なら行くぞ!」
イゼベル先生は木剣を持ってこっちに来る。オレは木剣を構えてイゼベル先生の攻撃を防ぐと、イゼベル先生の木剣は折れる。オレはすぐに反撃をするが、イゼベル先生は避けて後ろに下がる。
「おいおい。マジで木剣が折れたぞ。ロザリーが言ってた通りか」
「エリオットさん。すぐに2人を起こしてください。3対2でも何とかなるかもしれませんが、こっちの負担を減らしたいです」
「3対2!? よく分からないが、2人を起こせばいいんだな!」
エリオットはすぐにテントに行って、2人を起こす。
「いやいや。流石に3人はキツイと思うんですが」
「そっちにプリシラがいるだろうが。少しはこっちが有利にならねぇとな」
「だからと言って。第3騎士団の団長がこっちに、来ますかっ!?」
横から来る攻撃を木剣で防ぐ。オレが防いだのは木槍だった。木槍の先端は折れてた。
「あららら。本当に折れちゃった。これならかなり楽しめるねぇ・・・」
「何かヤバい人が来たんだけど。あの人はプリシラに任せていいか?」
「いいぞ。あのちと危ない奴は妾が潰しておこう」
「間違っても殺さないでくれよ。あの人第3騎士団の団長だからな」
「分かっておる。ほれ小娘。妾が相手してやろう」
「小娘って・・・。でも精霊様との勝負ねぇ。今日は運がいい、わ!」
プリシラと第3騎士団の団長が戦い始める。
「ところでロザリー様は何処にいるんですか?」
「アイツはエリオットたちの方に行ったぞ」
「あぁそうですか。なら少しは楽ですね」
「よくそんな事が言えるじゃねぇか? いくぞ」
イゼベル先生はこっちに来て、素手で攻撃をしてくる。オレはそれを避ける。隙を見て木剣で攻撃をするが、避けられる。
「その木剣に何をした!? わたしの木剣が折れたじゃねぇか!」
「ただ硬くしただけですよ! 先生の木剣を折ってすみませんでした!!」
オレは隙を見て後ろに下がる。オレが下がるとイゼベル先生は、水魔法で大きな水玉を投げてくる。オレは木剣で大きな水玉を斬る。斬った後はすぐに構えるが、イゼベル先生がいない。オレは左右後ろを見て最後に上を見ると、イゼベル先生がいた。イゼベル先生はもう殴る体勢に入っていた。オレはすぐに後ろに避けると、イゼベル先生は地面に拳が当たる。
「ってー。避けるんじゃねぇよ」
「避けなかったら、痛いじゃ無いですか」
「いてぇに決まってるだろ。今日はここまでにしてやる。他の生徒の所に行かねぇといけねぇからな」
イゼベル先生はそう言って、ロザリー様がいるであろうテントに行く。オレはプリシラの方に行く。
げっ!? プリシラが悪役がやるような持ち方をしている!?
「主か。待っていろ。今すぐ此奴を殺める」
「殺すな。オレは殺すなと言っただろ」
「だが此奴が・・・」
「いいから離せ。その持ち方は危ないだろ」
「仕方がない。おい小娘。主に感謝しろよ」
プリシラはそう言って、第3騎士団の団長を投げ飛ばす。
「投げ飛ばすな!」
オレはすぐに第3騎士団の団長の所に行く。
「大丈夫ですか?」
「・・・・・・だ、大丈夫だよ。流石精霊様は強い。あたしをゴミのように扱われたよ・・・」
「すみません。うちのプリシラが・・・」
「あぁいいんだよ。あたしは楽しかったから。じゃあ次はお前だね」
「はい? そんなボロボロで戦うんですか? 死にますよ」
「別に死んでもいいよ。戦って死ねるなら、大体何だってするよ」
あぁこの人ちょっと壊れてる。
「おいルトリ。ラザを困らせるな」
「はいはい。他の生徒たちが待ってるもねぇ」
ルトリと呼ばれた人が立ち上がる。
「じゃあね。ラザちゃん、プリシラちゃん」
3人は他の生徒たちの所に行く。オレたちはエリオットたちの所に行く。
「おいルトリ。顔がニヤケてるぞ」
「ニヤケてた? そうだよねぇ。あんな強い精霊様がいるならニヤケるよねぇ。あの様子ならラザちゃんも強いはずよね?」
「強いんじゃねぇの? 言っておくが。アイツと戦うなら気配察知を鍛えておけよ。じゃあねぇと話にならねぇ」
「へぇ暗殺者向けの人ね。まぁ何だっていいや。強ければどうだっていいよ」
「お前は相変わらずだな・・・。お前のその戦いの執着は何だ? 初めて会った時かなり引いたぞ」
「そんなの簡単。楽しいからよ。それ以外の理由ってある?」
「聞いたわたしが馬鹿だった・・・」
「・・・えぇと。ルトリさんは何故騎士になったのですか?」
「な~にロザリーちゃん。あたしが騎士になった理由が聞きたいの?」
「よせ。聞いても碌な理由じゃねぇ」
「でも言っちゃうけどねぇ。理由は簡単。合法的に殺し合いたいから」
「はい・・・?」
「驚くよねぇ。普通はそんな理由で騎士になろうって言わないよねぇ。でもあたしはこの理由で騎士になった。だってそこらにいる人を殺したら、犯罪者じゃん。それは嫌だから騎士になったのよ。冒険者もいいけど、お金がねぇ・・・」
「その腕なら冒険者になっても問題はねぇだろ。ロザリー。今聞いた事をすぐに忘れろ。憶えていてもいい事はねぇ」
「いいや憶えてもらうよ。いいロザリー。騎士になりたい人が、皆が人を護りたいって訳じゃないの。あたしみたいな屑が騎士になる人もいる。給料が良いとか、ある程度の安全が保障されるとか、出世して早く仕事を押し付けたいとか、貴族との繋がりが持ちたいなどなどと。そう言った理由で騎士になる。国民の命なんてどうでもいい、ただだた自分さえよけばいいのよ。あたしは合法的に殺し合いたいから、騎士になった。結果的に国民を護っているけど、国民の命なんてこれっぽちも考えた事は無いわ。これを聞いてどう思う? さぞ屑だと思うよねぇ? それは合っているわ。それを分かった上で騎士になりたいの?」
「・・・・・・それでも私は騎士になります。騎士になる理由は個人で違う事は、理解してます。ルトリさんはルトリさんの理由で騎士になった。なら私は私の理由で騎士になります」
「単純だねぇ。それが良いんだけど。じゃあ先輩からの助言ね。休みの日は盛大に楽しむこと! そうじゃ無いと長続きしないからねぇ」
「そうですか」
「じゃあ次の所に行こうかねぇ。強い生徒がいればいいけど」




