IF10話 何してるんだ?
7月26日。オレは馬車から降りて実家の門前に着く。門をくぐり玄関を開けると、両親と執事のトーマスさんとメイドのメールがいた。
「お帰り~。元気にしてた~?」
「元気にしてたよ。色々問題と言うか、予想外の事があったから。ちょっとどうしようか考えてる」
「精霊を召喚したんだろ。お前は凄い事をしたんだ。もう少し胸を張ったらどうだ?」
「親父は気楽でいいなぁ・・・。学園でたちの悪い勧誘があったんだぞ」
「何ですと!? ラザ様。そいつは何処の貴族ですか! 探し出して縛り首にして来ます!」
「それをやればメールが捕まるだろ。メールが捕まると、オレ泣くよ」
「止めておきましょう」
「そうしてくれ」
「ラザ坊ちゃま。一先ず部屋に荷物を置いてから、リビングでお話をしましょう」
「そうですね。一度部屋に行って荷物を置いてきます」
オレは一度部屋の方に行く。
「はっ! 今年は学園に王族が2人もいるんだ。確か第2王女様とは同じクラス・・・。ラザの奴、何か変な事はしないだろうな。い、イカン・・・! 考え出したら、胃が痛く・・・」
「あなた。もう皆行っちゃいましたよ」
「な・・・に・・・? 私たちも行くぞ・・・」
オレは部屋に入り、とりあえず空間から荷物を出して片づけをする。その後プリシラを呼び出す。出て来たプリシラは、周りを見る。
「ここが主の部屋か。普通の部屋だな」
「普通の部屋で充分だよ。変に何かあるような部屋なんかに、いれる気がしないよ」
「それもそうだな。この後何処かに行くのか?」
「リビングにな。少し休憩をしたら行くよ」
オレたちは少し休憩をして、リビングに行く。リビングに行くと両親とトーマスさんとメールが、畏まっている。
「・・・何してるんだ?」
「精霊様の前で畏まっているだけだ」
「あっそう。プリシラはそんなに偉いのか?」
「妾は別に偉い訳ではないが。あれが普通の態度なのだろ。そう畏まるな。妾は気にしない故、いつも通りにしてくれ」
「ありがとうございます」
皆はいつも通りにする。オレとプリシラは椅子に座る。
「それでラザ。第2王女に何か粗相な事はしては無いだろうな?」
「粗相なこと? あぁ~・・・。オレなんかしたっけ?」
「別に何もしてないだろ。寧ろあの小娘どもが主に近づいてきてるだろ」
「やっぱり? 何でだ?」
「主が物珍しいからだろ。普通の貴族は王族相手に媚びへつらうだろ。だが主の場合はそんな事はしてこなかっただろ」
「確かにしないな。したところで特に意味が無いからな。媚びへつらうって言事は、何かしら自分にメリットがあるから、媚びへつらっているんだろ。今のオレには何にも無いから、特にやって無いな」
「そのせいでちと気に入っているのだろう」
それってオレの心が庶民のせいだからか? しょうがないだろ。今更貴族にみたいにやれって言われても、出来ないぞ。どっかで絶対にボロが出る。
「お前。今自分がどれだけ凄い事になってるか、分かってないのか!?」
「分かりたくないな。分かったら何か恥ずかしくなる」
「あらラザちゃん。何でそんなに恥ずかしくなるのかしら?」
「いやだって・・・。って言う訳無いだろ」
「あぁ確かに恥ずかしくなるな。いっそのこと逃げたらどうだ?」
「それを本気でやれば傷つくだろ。やるならちょっとづつだ」
「意外と優しいのだな。とは言え。ちと近づき過ぎるな・・・」
「プリシラさん。ちょっと怖い事を考えてませんか?」
「いや。そんな事無いぞ」
「絶対に嘘だ・・・」
「お話しのところ失礼します。旦那様とラザ坊ちゃま宛に、手紙が届いております」
トーマスさんは親父とオレに手紙を渡してくる。
「これはどう見ても王家の家紋だよな・・・」
「送って来る相手が容易に想像できるな。さてどのような内容かな」
オレは手紙の封を切って中身を確認する。
何々に。「明日、私とエディスと姉さんとクリスさんで。ラザさんの家に行きます。エメリーより」・・・・・・何だって? 簡潔に言ってるけど、エメリー様たちがウチにくるだと? 何の冗談だ?
「おおおおお、おおおおおうぉぉぉお!?」
「親父落ち着けよ・・・」
「おのれ小娘共め・・・。これはちと教育が必要か?」
「怖い事を言うな。しかし何でウチに来るんだ? 来ても特に何も無いだろ」
「主がいるからだろ。それ以外の理由が無いな」
「いいのか? 男性がいる家に来ても?」
「親が許可を出せば、何にも問題はないだろう」
「ととととととととにかく! ウチはいつも通りにするぞ!」
「いつ通り? 歓迎のパーティーはしなくても?」
「手紙には「無駄な歓迎をするな」っと書いてあった。よっていつ通りだ。問題は明日だ。明日はお前の兄達が帰って来る」
「兄たちが? あの2人か。あんまり記憶にないな。てか帰って来るんだ」
「お前が帰って来る1週間前、手紙が届いたからな。私達は第1王女様達に粗相が無いように、接するぞ。では解散」
オレとプリシラは立ち上がって、家の中を案内をする。
その日の夜。オレたちは執務室に行く。
「親父。何の用だ?」
「来たか。そこの座ってくれ」
オレとプリシラはソファに座る。
「ラザ・・・。今まですまなかった!!」
親父は謝りながら頭を下げる。
「何で急に謝ってるんだ!?」
「お前を蔑ろにしていたことに対しての謝罪だ。今までお前は才能が無く、この家の者として相応しくないと勝手に判断していた」
「あぁだから今まであんな事を。あんなの虐待と変わらないだろ。何で急に謝る気になったんだ?」
オレはほぼ憶えて無いけどな。
親父は頭を上げる。
「お前が学園に入学する1週間前だ。お前が騎士になるんじゃなく、冒険者になりたいと言った日だ」
「あぁあの日か」
「あの日からお前は人が変わったように、トーマスから気配遮断を学んでいただろ。私がお前を見た時、お前は1から生まれ変わろうとしていると。私の目にはそう見えた」
「そんな風に見えたか。それよりやっぱりオレは変わったか?」
「変わり過ぎだ。今まで飽き性ですぐに放り出す奴だったぞ。それに喋り方もな」
「言われてみればそうだな」
「お前が変わっていくのに、私だけ何も変わらないのは。この先後悔するだろう・・・。だから私は。ラザに謝罪をし、1からやり直すことにする。お前にとっては許せないだろう。殴ってくれも構わない」
「・・・今までやってきたことは、もうどうやっても戻せないぞ」
「解っている。過去はどうやろうと、変える事は出来ない。だが未来は変えられるだろ」
「変えられるな。オレは親父を許すよ。ずっと親父と仲が悪いのは、オレだって嫌だからな」
「ありがとう」
「親子関係が元に戻ったのは良いが。ドア越しで色々聞かれているぞ」
「「なっ!?」」
オレは立ち上がってすぐにドアに行って、ドアを開けて誰かいないかを確かめる。
「――――――誰もいない」
「何処かに行っただろ」
「聞かれたのなら仕方が無いだろ。時間を取って悪かった」
「別にいいよ。じゃあお休み」
「お休み」
プリシラは立ち上がる。オレとプリシラは執務室から出て、部屋に戻ってベッドに座る。
「なぁプリシラ。オレは今までどんな事をされていたんだ?」
「それはだな」
プリシラはオレの耳元で、今まで何をされてきたかを言う。
「・・・そこまでやるか? これは許せるわけが無いだろ」
「だがあまり記憶には無いのだろ」
「無いな。あったら許して無いな」
「そうだろうな。ほれ寝るぞ」
「寝るのはいいけど。ここでも添い寝か?」
「あたり前だろ」
寮と同じように、オレとプリシラは一緒に寝る。