IF9話 平気だろ
7月上旬、休日。オレはイゼベル先生の監視のもとで、森で魔物と戦っている。
「プリシラさん! これはいくら何でも数が多すぎるのだがっ!! ちょっと木から下りて手伝ってくれませんかね!!」
「これくらいは平気だろ。この数のオークを殺せなくてどうする?」
「だからと言って、この数は異常だろ!?」
最初の方は良かった。ただ時間が経つにつれ、オークの数がどんどん増えてくる。オレは魔法を使わず剣だけで戦う。
「魔法も使えばいいだろ。主ならすぐに一掃出来るだろ」
「折角の素材を無駄に出来るわけ無いだろ!」
「なら文句を言わずに、両手両足を動かして戦え」
「分かってるよ!」
襲ってくるオークを片っ端から殺して行く。
「それにしても数が多いな。この辺に巣でもあるのか? 教師はどう思う? ってもうおらんか」
「イゼベル先生はどっかに行ったのか!?」
「大方オークの巣を探しにでも行ったのだろう。ほれ、右から来るぞ」
プリシラが言った通り、右からオークが来る。オレはすぐにオークに近づき、足を斬って跪かせて首を斬る。斬った瞬間剣が壊れる。
「やばっ!?」
オークはニヤつきこっちに来る。オレはすぐに氷魔法で氷の棒を作り、右手で持って右腰に密着するように構えて、先端から魔法陣を出して氷の粒を撃ち出す。撃ち出された氷の粒は複数いるオークに当たる。
「変わった魔法だな。・・・あの氷の棒はただ氷の棒。先端から違う魔法使っているのか」
「見ただけでよく分かるな! 確かに別々の魔法だよ!」
左手を氷の棒で支えて、他の場所から来るオークにも撃ち出す。あまり長くは持たないので、氷の棒を槍に変えてオークを殺して行く。
「棒から槍に変える事も出来るのか。中々面白い事をするものだな」
「ラスト!!」
オレは最後のオークを殺す。殺し終わって、オレはその場で座り込む。
「はぁ・・・はぁ・・・。し、死ぬかと思った・・・。何でこんなにいるんだよ」
オレは水魔法で頭上から水をかける。頭上から水をかぶっていると、プリシラがこっちに来る。オレは水を止める。
「良く殺めたな。偉いぞ」
「偉いだけで済ませるなよ・・・」
「なら頭で撫でてやろうか?」
「髪が濡れているのに、頭を撫でるのか?」
そう言うと。プリシラは風魔法で髪と服を乾かしてくれる。乾いたら頭を撫でられる。
「あぁなるほど。これなら頭を撫でられるな」
「何なら抱きしめてやるぞ」
「止めてくれ。それよりイゼベル先生が戻って来ないな。一体何処まで行ったんだ?」
「もう少しで戻って来るだろ。それまで休んでろ。主が殺めたオークを、妾が解体しておく」
プリシラは頭を撫でるのを止めて、周りにあるオークの死体を解体をする。オレは一度浄化魔法で服や身体を綺麗にする。休憩をしていると、イゼベル先生が戻って来る。
「イゼベル先生。今まで何処に行ってたんですか?」
「ちょっとオークの巣を壊滅しにな。ほら土産だ」
イゼベル先生が何かを投げつける。オレの近くまで落ちてきたのは、オークの生首だった。オレはそれに驚いて後ろに下がる。
「いきなり生首なんて投げないでくださいよ!」
「いいじゃねぇか。そいつは『オーククイーン』だ」
「オーククイーン!? オーククイーンって。オークの中でも上位と言うより、最上位の存在じゃないですか」
「今回はこのオーククイーンがいたせいで、ここから近くに集落が出来ていた。こっちに来たのは・・・。まぁプリシラのせいだろ」
「すみません。プリシラが魔法で、魔物をここに集めさせてしまって・・・」
「別に気にする事じゃねぇよ。お陰でこっちは楽しめたんだ。まぁ後がメンドクセェーのは確かだが」
「ほら。妾は悪くはないぞ」
「少しは悪いと思え。このまま報告しに行くんですか?」
「そうなるな。オメェーらも付いてきてもらうからな」
「分かりました」
残っている死体と壊れた剣を回収をして、すぐに王都に戻って先ずは門番に報告をする。それが終わったら、騎士団の所に報告しに行く。
「あぁ~疲れた! 報告したついでに説教なんてすんじゃねぇよ・・・」
「しょうがないですよ。説教されるような事をしたんですから」
「壊滅させたから良いじゃねぇか」
「壊滅をしたしてないではなく。何故勝手に戦ったかとか何故逃げなかった事で、説教してるんですよ」
「んな事一々説教すんじゃねぇよ・・・。ラザ。今日はもう終わりだ。解っていると思うが、当分森で魔物と戦う事は出来ねぇぞ」
「解ってますよ。それでお先に失礼します」
「気を付けて帰れよ。また誘拐されるなよ」
「もうされませんよ」
オレとプリシラは先に寮に帰る。
7月25日。終業式が終わり、教室に戻った後はホームルームやる。それが終われば、オレはすぐに寮に戻って部屋に入る。終業パーティーの受付時間終わり時間までギリギリ待つ。時間になったら部屋から出て終業パーティー会場に行く。受付でカウンターに置いてる紙に、出席したことを証明するために空欄に丸をする。本当はこのまま帰りたかったが、受付の人に、正当な理由が無い限り参加してくださいと言われる。オレは会場に入る。
「騒がしい所だなぁ。もう帰ってもいいのでは?」
「どうだろうな。一応イゼベル先生に報告をしないとな」
「そんな些事な事もせんでもいいだろに・・・。ほれ、あの教師は向こうにいるぞ」
「どうも」
オレたちはイゼベル先生がいる所に行く。イゼベル先生に挨拶をして少し話をする。それが終われば食事を取って、テーブルに座る。
「・・・・・・やはり帰った方がいいだろ。さっきから妾らを見ているぞ」
「まぁ見るだろうな。だって精霊サマだぜ。誰だってお前を見るよ。そしてオレはお前の主で貴族だ。何とか自分の所に置けないかを考えてるだろ。庶民だったら簡単に行くが、貴族のオレはそうもいかないだろ。貴族に転生して初めて感謝したよ」
「そうは言うが。主は貴族から何回誘いが来た?」
「約5回くらいだろ。エディスさんはもっと誘われてそうだな。第1と第2王女と公爵令嬢と仲がいいんだ。嫉妬の目からちょっと変えるだけで、すぐに利用出来るだろな」
「確かにそうなるな。それに主との繋がりも持てそうになるな」
「持てるな。でもお三方がそうはさせないだろうな。隣にいるだけで相手を、黙らせることが出来るからな。オレはプリシラに護られるし」
「当然。あのような連中を主に近づけさせるものか」
「助かるよ。それにしてもあんまり美味しくないな」
「料理の技術が進んでいる国から来たんだ。こっちの料理が美味しいと感じるのは、ちと難しいだろ」
「料理をちゃん学んでいれば、少しはまともになったんだろうな。美味しく感じたのは一部だけだぞ」
食べていると、ロザリー様たちがこっちに来る。一緒に食事をしたり雑談をする。