第10話 冒険者
空間収納魔法や他の授業をやり午前中は終了した。昼休みは食堂で昼飯を食べて、その後は職員室に行く。
「失礼します。1年Cクラスのラザ・メルト・カルバーンです。イゼベル先生はいらっしゃいますか?」
「あぁ~わたしならここだ。こっちに来い」
「失礼します」
オレはイゼベル先生の所に行く。
「来たか。よし教室に行くぞ」
「イゼベル先生。何でオレは職員室まで来ないと、いけなかったんですか?」
「今年の冒険科の新しい学習者はお前だけだ。他は2年生と3年生だ。流石にお前だけ教室に行かせるわけには、いかなかったからな。その話は移動しながら話そう」
イゼベル先生は立ち上がり移動する。オレはその後をついて行く。
「お前を先に行かせなかった理由は、辺境伯の3年生がいるからだ。教室内でそいつをトップとしカーストが構成されている。その中でお前を行かせてみろよ、すぐにそいつらの餌食になる」
「そうでしたか。何かすみません、オレが冒険科を選んだせいで面倒になってしまって・・・」
「別に謝る事じゃない。これに関しては些事に過ぎない。どうせお前じゃなくても他の生徒もこうなっていたさ」
「そうですか」
「まぁ更にメンドクサい事になる前に、先に先手を打つさ」
別校舎の冒険科の教室に行く。
「全員揃っているか?」
イゼベル先生は教室のドアを開けながらそう言う。そのまま返事を聞かずに中に入る。オレはそれについて行く。
「ぜ~いんそろってますよ」
「そのようだな。今日は新しい学習者が来た。ラザ。自己紹介をしろ」
「はい。ラザ・メルト・カルバーンです。1年間よろしくお願いします」
「はいは~い、しっつもんいいっすか~」
「どうぞ」
「爵位はなんっすか~?」
「子爵ですが」
「ブハッ!! しししし子爵って正気かよ! あぁ~三下の振りして損した」
「そうですか」
「あぁ? オメ―ナメてるの? 俺が誰か解ってるの?」
「知りませんよ。今は自分の事で精いっぱいなので」
「んだとオメ―――」
「自己紹介はそこまでだ。お前らに言っておく。お前らのくだらねぇー私情で、ラザを巻き込むなよ。巻き込めば殺すからな」
イゼベル先生は怖い顔で、オレに質問してきた生徒と、その取り巻きを睨む。
「「「う、うっス・・・・・・!」」」
「―――よし。ラザ。空いてる席に座れ」
「分かりました」
オレは空いてる席に座る。
「今日は1年生がいるから、何処から説明を始めるか・・・」
「先生『冒険者』とは何かって所からでいいと思います」
「それもそうだな。他の奴らには悪いが学び直しになるが、しっかり聴けよ。『冒険者』っと言うのは、目的を持って冒険をしたり利益または名誉得るために、様々な冒険をするのが冒険者だ。が、今は魔物の討伐や利益と名誉の方を求めるのが、冒険者と言ってもいい。ただ冒険をしていたら金と食用が尽きる。それをなくすために『冒険者ギルド』がある」
「先生。冒険者ギルドと言うのは何ですか?」
「『冒険者ギルド』と言うのは、冒険者を支援するためにギルドだ。ギルドでは様々な依頼がある。例を挙げると『雑用』『魔物の討伐』『採取』『護衛』などがある。冒険者はギルドで一般人や商人や貴族からの依頼を受けて、それを仕事にして金を手に入れる事が出来る。他に情報やパーティを集める場所にもなっている。ラザ。解ったか?」
「はい」
「・・・次だ。基本的に冒険者はパーティで動く事が多い。その方が危険を減らすことが出来るからな。だがそれは上手く連携が出来ればの話であり、出来なければ危険になる。逆に1人で動くとなると危険が多い分、報酬はその人の物になる。パーティで動くか1人で動くかは実際に経験をしてみないと分からない。次は―――」
その後、冒険者は一体何が必要か逃げる時は。などの話をしてもらい、気付くとチャイムが鳴っていた。
「次は第5アリーナに集合だ。以上解散」
イゼベル先生は教室から出る。
冒険者も楽じゃないな・・・。でも貴族や王族などにほぼ縛られることは無いから、やっぱり冒険者だな。授業が終わったらちゃんと図書室に行って、復習しないとな。
「おいラザ! オメ―に聞きてぇことがあるんだが、聞いてもいいよなぁ?」
「何でしょうか?」
「オメ―とクリス様が付き合っているのは本当か?」
「・・・・・・はい? オレとクリス様が付き合ってる? 何の冗談ですか?」
「当方人が知らねぇだと!? オメ―はふざけてるのか?」
「いえふざけてませんが。オレが知ってる噂は『クリス様と仲が良い』ってだけですが」
「いつの話をしてるんだよっ!? とにかくオメーとクリス様との関係は無いんだな!?」
「オレの中でそうですが、向こうはどう思ってるか分かりませんよ」
「あぁ? オメーが否定的な事を言えばそれでいいんだよっ!」
そう言ってその人は移動して教室から出る。
あの人。一番最初に質問してきた人だな。最初はパシリにしようとしてたかもしれないけど、イゼベル先生に釘を刺されたから、これだけで終わってるのかな? イゼベル先生には本当に感謝しかないな。そろそろ移動しないと。
オレは立ち上がり、第5アリーナに行く。
「全員いるな。この時間は魔物を殺してもらう」
「「「「「えっ・・・・・・?」」」」」
イゼベル先生以外は驚く。
「何だその驚いた顔は? 冒険科にいるんだ。魔物の1匹や2匹殺せなくてどうする?」
「せ、先生・・・。魔物を倒すのは2年生の2学期からですよね。それに1年生はまだ魔物すら見た事ないと思いますが・・・」
「これからその魔物を見せるんだよ。それにラザの為に一々時期の調整をするのがメンドウだ。よって今から魔物を殺してもらうが、ラザだけは明日から魔物を殺してもらう」
明日? マジで!?
「その肝心の魔物がいないのですが~」
「まぁ慌てるな。武器無しで戦えなんてことは言わない。素手で殺したいのならそうしろ。今から出す箱に武器が入ってる。自分にあう武器を使え。わたしは魔物を連れてくる」
イゼベル先生は空間から武器が入った箱を出して地面に置く。置いた後は魔物を連れにアリーナから出る。その間他の人は箱に入ってる武器を手に取って、各自で素振りを始める。俺も武器を取りに行く。
オレは明日からになっているが、魔物が襲ってこないって保証は無いよな。とりあえず武器は剣にするか。
俺は剣を手に取って少し離れた場に行って、その場で素振りをする。
・・・うん。ラザの一部の記憶があるお陰で剣を扱うことが出来る。実際は木剣で練習をしてたんだろうな。
イゼベル先生が来るまで、各自素振りをして身体のコンディションを整える。