第1話 サポートキャラに転生
学校帰り。オレたちは信号が青に変わるのを待っている。
「そう言えば、和利に無理やり買わされたゲーム。あれ終わったよ」
「えっ、洋治はもう『シエルティス学園』の達成率100%いったのか!?」
「いったよ。あのギャルゲーは完全にクリアしたよ」
「はぇー。お前徹夜でやっただろ」
「徹夜でやったよ・・・。早く終わらせたかったからなぁ」
「お前どんだけギャルゲーが嫌いなんだよ・・・」
「ギャルゲーが嫌いって言うか、あぁ言うシミュレーションゲームが苦手なんだよ。普通のシミュレーションゲームならともかく、ただ出された選択を選んで好感度を上げるのが楽しくないんだよ」
「お前は分かってないなぁ~。相手がいくらゲーム上の人物だとしても、女の子の事を考えて、この選択肢を選ぶかこっちの選択肢を選ぶかを、考えるのか楽しいだろ!」
「オレはそう言うのは分かんないよ」
「あぁー、だから洋治は彼女ができねぇのか」
「和利もそうだろ。ほら青になった。行こうぜ」
オレは先に信号を渡る。
「あっ、待てよ!」
後から和利が来る。
「ようじぃ~。本当に面白くなったのかよ~」
「そうだな・・・。プレイ中に―――」
オレは左から来るトラックが見えた。そのままこっちに突進をして来そうなので、オレは咄嗟に和利の背中を前の方に強く押し込んだ。
「うわぁ! いきなり何するんだよ! よう・・・じ・・・?」
俺は後ろを振り向くと、トラックに轢かれた洋治が目に入る。俺はすぐに洋治に駆け寄った。
「おい洋治! しっかりしろ!」
「・・・ぶ・・・じ・・・かぁ・・・?」
「俺は無事だよ! 待ってろすぐに救急車を・・・!」
無事ならいいか・・・。
「キミ大丈夫か! 119番は!?」
「いましてるっす!」
あぁ視界が・・・。
「洋治? おいしっかりしろ洋治! ようじィィィィィィィィィィ!!!」
――――――っん? 意識がある?
オレはゆっくり目蓋を開ける。先ず目に入ったのが見知らぬ天井だった。
いやここ何処? オレはこんな天井知らないけど。
ゆっくりと身体を起こして、ベッドだと思われる所から下りる。
知らない場所だけど確実に病院じゃないな。ベッドは何か少し豪華だし、周りはどう見ても点滴とかが無い。とにかく何か情報を得られないか?
少し部屋の歩いて、何か情報が得られそうな物を探す。だけど周りが暗くて探すのが大変なので、先ずは窓の方に行って閉じているカーテンを開く。カーテンを開いたら外は朝だった。窓には薄っすら知らない人の顔が映っている
「――――――っあ」
知らない人と思っていたが。オレは知っている。このキャラは【ラザ・メルト・カルバーン】だ。
「ん、ラザ? ラザ・メルト・カルバーン? いやいやまさかな。つい最近まで『シエルティス学園』のギャルゲーをプレイしていたから、記憶が混乱して―――」
すると急に、ラザ・メルト・カルバーンの一部が記憶が蘇る。
・・・あぁ~そうか。確かにオレはラザ・メルト・カルバーンだ。一部の記憶しかないけど。それと同時に江崎洋治でもある。つまり2つの記憶を持っている事になる。でもオレはトラックに轢かれて死んだ。あの後視界が無くなった後はどうなったんだ?
ベッドの方に行って、ベッドに仰向けになる。
「死んだんだ、オレ。何か実感が湧かないなー・・・」
死んでオレはラザ・メルト・カルバーンになったのか。こう言うのって何て言うんだっけ? ・・・・・・忘れたな。とりあえずもう一度周りを見るか。
起き上って今度はちゃんと周りを見る。最初に目についたのが、机の上に置いてある紙に目に入った。オレはそこまでいって紙を手に取る。
えぇっと『シエルティス学園』のパンフレットか。シエルティス学園? ギャルゲーに出て来た『シエルティス学園』と同じ名前だな。学園の内容は・・・。
オレはパンフレットを開いて中を確認をする。
ん? んんんんんんんっ? 全く同じ内容なんだけど・・・。どういうこと? まさか。いやまさか!? オレは死んでギャルゲーの『シエルティス学園』に来てしまったのか!? あっ! 今思い出した。これ転生だ! しかも主人公のサポートするキャラに転生をしたんだ、オレ! 死んだ事よりも驚いてるな。って言ってる場合じゃない。とにかく紙と何か書ける物。
オレは机の引き出しに何か入ってないか、中を確認をする。引き出しの中には紙と鉛筆が入ってた。オレは椅子に座る。
よしこれで状況を整理出来るな。先ずはオレが死んでラザ・メルト・カルバーンになった。これはザックリでいい。問題は『シエルティス学園』だ。そもそもシエルティス学園とは。騎士や魔法師や冒険者を何でも育成する学園だ。ゲームではそう設定していたが、プレイ中はあまり意味をなさなかったな。それはいいとして、これがギャルゲーのシエルティス学園だとして。オレは【エリオット・ヘンリー・パーネル】のサポートキャラになる。エリオット・ヘンリー・パーネルっていう人は、シエルティス学園の主人公だ。
会うのは学園の中庭でエリオットが迷子になっている時に、オレが話しかけて友達になる。その後攻略対象の女性に会ったあと、攻略が始まっていくのがこのゲームの流れだ。で、オレの役割はそのエリオットをサポートする事だ。例えば攻略対象の好きな食べ物や嫌いな食べ物、何処に行けば会えるとか恋人になれる条件とかを教えるのが、ラザの役割だ。設定では、ラザは執事のトーマスっていう人から〈気配遮断〉を学んで。それを生かして攻略対象の情報を探っていた。プライバシーなんてお構い無しかよ・・・。
話を戻して。この攻略対象の女性は3人プラス1人だ。この1人は3人を攻略してから出来る人だ。つまり隠しキャラってやつだ。でもこの隠しキャラは普通にストーリーで出てくるし、その人を攻略しない限りは基本的に協力的だ。最初に攻略出来る3人の名前は。まず1人目は第2王女の【エメリー・ローレン・ウィドリングトン】2人目は第1王女の親友【クリス・アリー・リトリ】3人目は主人公が召喚する精霊【フランシス】最後は隠しキャラの第1王女の【ロザリー・ローレン・ウィドリングトン】だ。
細かい設定は後で思い出すとして。今後どうするかだ。設定が同じならゲームとそう変わらないはず。パンフレットがあるけど、入学試験が終わった後かまだ終わってないかだ。終わってる終わってないかは、制服があるか無いかで分かるな。タンスにあるか?
俺は椅子から立ち上がってタンスの方に行く。タンスを開いて服を見る。
あるな。間違いなくシエルティス学園の制服だ。オレは合格したんだな。
タンスを閉めて机の所に戻って椅子に座る。オレは再びパンフレットを手に取って入学式はいつかを見る。
入学式は4月5日。今は・・・、カレンダーあるんだ。しかも日にちにバツ印が書いてる。今は3月30日だから・・・、今日入れて1週間しかない! いや1週間もあるのか? まぁ今は置いといて。このままいけば、オレはエリオットに会って友達になって、エリオットの恋を応援する事になる。何でオレがエリオットとその攻略対象の女性とイチャイチャしてる所を、見ながら応援をしないといけない。それを回避するのは簡単だが、ラザには重要な事がある。それは・・・、ラザは終盤辺りで死亡する。正確にはルートによってエリオットをかばい死亡する。そのルートは第2王女と隠しの第1王女だ。
エリオットと友達にならなければ、死亡は回避できるが。違う理由で死亡したくもない・・・。ゲームと同じルートをたどる訳にはいかないから、エリオットとは友達にならずに他の人と仲良くなろう。・・・仲良くなれるか分からないけど。とにかく入学して学園生活しないと話にならない。でも学園生活する前に気配遮断を学ぼう。
オレは立ち上がり、寝間着から私服に着替えて。執事のトーマスさんを探しに行く。
確かこの時間なら書庫にいたはずだ。いるよな? いくらラザの記憶があるとは言え、ちゃんと合っているのか・・・。
そう考えながら移動してると書庫に着く。扉を開けて中に入るトーマスさんを探す。
「いた、トーマスさん!」
「これはこれはラザ坊ちゃま、今日はお目覚めがお早いようで。してトーマスさんとは?」
「えっ!? あ、アレですよ。学園にはオレより身分が上の人と関わる時には、敬語を使うのがいいかと思いまして。その練習です」
「さようでございますか。ところラザ坊ちゃま。『ボク』ではなく『オレ』になっていますが」
「ぶえっ!? そそそそそそれはあれですよ! もう少し漢らしくしようと、ボクと言う一人称からオレと言う一人称に変えたんです!」
「さようでございますか」
そうだった。ラザの一人称は『ボク』だった・・・。今のでいつものラザじゃ無いって、バレてるか?
「ラザ坊ちゃま。今日は何用でございましょうか?」
「トーマスさんに折り入って頼みたい事があります。今日入れて1週間でいいです。・・・オレに気配遮断を教えてください!」
「なんと!? ラザ坊ちゃま方から自ら習いたいと!? 老い先短い私の人生。せめて私が持っている気配遮断を誰かに習得させようと、必死に【ジョナス】坊ちゃまと【ノーマン】坊ちゃまに教えようと・・・」
ジョナスとノーマン? はて、ゲームではラザの兄か弟何ていたのか? もうこの時点でゲーム設定から逸脱してるな。
「――――――最後はラザ坊ちゃまに教えていましたが。中々憶えようとして来ませんでしたが・・・。まさか。まさかラザ坊ちゃまの方から・・・」
何か泣いてる。ラザは素直に教わってなかったのか? そう言えばゲーム中に何度かバレそうになった。って言っていたな。
「ラザ坊ちゃま。何故急に気配遮断を学びたいと?」
「今後の学園生活と普通の生活で必要になると。オレが判断したんです」
「ふむ・・・。ラザ坊ちゃまは何をお考えをしているかは、私には分かりませんが。ただ気配遮断を学びたいことは分かりました。私トーマスは全身全霊を持って、ラザ坊ちゃまに気配遮断を教えましょう!」
「ありがとうございます! トーマスさん!」
「では早速中庭に行きましょう!」
「はい!」
オレはトーマスさんについて行って、中庭で気配遮断を学ぶ。