サンタクロースの魔法
【12月24日】
雪が疎に降る夜空。
2人は雪道を歩く。
男性はポケットに手を突っ込み、女性は手袋をはめている。
彼等の歩いた道には足跡が続く。
白い息は星空に吸い寄せられるように上る。
「今日は寒いね」
「ん、そうだな」
「冷たいなー。ねぇ、日向は知ってる?」
「ん?」
「私の気持ち」
「ーー知りたくない」
「ーーいじわる」
2人の軌跡は続く。
「ねぇ、日向は知ってる?」
「ん?」
「サンタクロースの秘密」
「どんな秘密?」
「不思議な魔法が使えるんだって」
「どんな魔法?」
「両想いの2人を繋げる魔法」
「ーーそっか」
【12月25日】
「千冬、メリークリスマス」
「日向、メリークリスマス!」
「珍しいね、日向から話すなんて」
「たまにはね」
2人は雪道を歩く。
「ねぇ、知ってる?」
「何を?」
「サンタクロースが来るのはクリスマス・イヴなんだよ」
「知ってるよー、昨日でしょ?」
「んーん。クリスマス・イヴは本当は今日の夜の事を言うんだ」
「そうなんだーーあれ? もしかして昨日調べたの?」
「なんとなくね」
「ずるいなー。日向は本当にずるいよ。きゃっ!?」
転んで尻餅を着いた千冬に手を差し伸べる日向。
「大丈夫?」
「いたた、これもサンタクロースの魔法かな」
千冬は頬を紅くしながら彼の手を掴んだ時、彼の手首に巻いてあるミサンガを見つけた。
「日向、それって…私があげたミサンガ?」
「ん、そう。大切だから」
「いってよ!」
「嫌われてると思ってたから」
「嫌いだったら! 嫌いだったら、プレゼントあげてないし! 毎日、話してないし! 毎日、連絡しないし! 毎日、哀しい気持ちにならなかった!」
「ごめん」
泣いている千冬の顔はさっきよりも赤く、目も赤くなっていた。
勝手な勘違いが生んだすれ違い。
何時迄も慕ってくれるとは限らないのに、逃げて言葉に出さなかった自分の気持ち。
怖かった。
けど、そんな事は目の前の大切な女性を泣かせる理由にはならないのにーー。
「謝らなくていいよーー許す。今後、私に涙を流させないなら」
「分かった、約束する」
「じゃー、言って。日向の気持ち」
千冬は日向が顔を紅くしながらキョロキョロする姿を愛おしそうに見ていた。
「好きだ、千冬」
「私も好きだよ、日向」
「今日は寒いね。帰ろう」
日向は左手を出し、それに手を被せる千冬。
「うんっ!」
雪道を歩く2人を照らすヘッドライト。
遠くから鐘音が響く。
紡ぐその両手は光輝き、そして2人を祝福する。
それらは何時迄も優しく2人を見守っていた。