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手紙

作者: 雪村真月

幸せであると感じるのは一瞬のことで、それを痛いほど感じるのは失ってからである。

「僕は思っていることをただ単純に君に話すことにしたんだ。君に話したいことは山ほどある、だからこうして文章にまとめることにしたんだ。僕が話すように手紙を書いているから、こういう書き方を許してほしいんだ。僕のことなんてどうでもいいかもしれないけど、最後まで読んでほしい。ただそれだけなんだ。」


------


「君はある小説家が好きだと聞いた。だからこの書き方が、その小説家の書き方に似ていると思うかもしれない。だけど僕はもともとこういう書き方なんだ。むしろあちらが合わせてきたと言いたいぐらいだね。

 いや、僕は変わろうとする前に、変わらないんだ。君はそのことを覚えていないだろうけど。そして君は大きく変わってしまった。それが少し寂しいね。でも、本当に変わってしまったか、ということも僕にはわからない。僕らは最初からそうだったんじゃないか、と思うときがあるよ。君も僕も好きなオアシスから言うのであれば。

『並んで歩くには遅すぎるのを知っているから。』


 今の君は、僕が知らない君はたまたまこの手紙を読んだ。それ以前に僕らは同じ高校に入学し、付き合って、君が記憶をなくすまで、歯車が噛み合ったかのように気が合ったんだ。それこそが運命ってものじゃないかな。それが認められなくてもこの文章を読んでくれたことは僕にとって最大の幸せなんだ。」


------


「僕は君の恋人だったんだ。そう言っても君は信じてくれないだろうけどね。それを信じろとは無理に言わない。なにか証拠があるのか、と言ったらそれほどないんだ。あるのは僕の思い出といつか遊んだとき撮った写真だけさ。  

 君と帰路を同じにすることはそんなに無かったね。君は部活があるから、僕は先に帰る日のほうが多かったんだ。それに君が、「待たせるの悪いし」、って言ったんだ。結局、最後まで言い合いになって、僕が譲ったんだ。それでもたまに一緒に帰る約束をしたかな。今考えるともっと一緒に帰りたかったんだけどね。


 ある日、僕はいつも通り自宅に帰っていたんだ。途中で皆、イチョウが植えられている公園を通る。それから駅前商店街を抜けて、改札機に定期を通した。その日も君と帰りたいと少しだけ寂しくなって、一緒に帰りたいと思いながらホームへの階段を下ったよ。 対面式ホームの下り側、四号車のドアのところで電車を待っていた。向かい合った人とは眼を合わせなかった。

 なぜなら、そこには楽しそうに話しながら電車を待つ人々が見えたから。自分のほかの人が幸せに見えて仕方がなかったから。

 先に新宿行の列車がやってきたんだ。そして走り出す、小田急線の青色のライン。その青の線が走り去ると、僕は女の子が階段を登っていったのを見たんだ。顔を見なくてもそれが君だってわかったんだ。同じ制服と同じ鞄だったからね。嬉しそうな、顔をしていたと思う。  


 僕だけなのかもしれないけど、人混みの中でも意識する人がいたのなら、自然に視線が吸い寄せられて、目線が合うんだ。言い方を変えると目的のページを探して本をパラパラと見ていき、ここだ、というところでパッと、止まるような、そんな感じなんだ。それに、僕は見間違えることはないんだ。君の横顔が一番好きだったからね。 長くなったけど、君の存在は特別で、特別興味を惹くもののようにさっと眺めるだけですぐ見つけられるんだ。それと同じ感覚が駅で見た君にも感じられたんだ。だから僕は戸惑った」


------    


「僕は家に帰ってそのことをずっと考えていたんだ。確かに君はその日、授業に出ていたはずだ。一緒に昼ごはんを食べたはずだ。でも君は駅にいた。不思議に思ったよ。「いつの間にか、帰ってたんだ。一緒に帰れたら良かった」、なんて考えたよ。その日もいつものように日付が変わるまで君と電話していたから、なにも変わったことなんてないと思った。けど、次の日学校に行ったら君は休みだったんだ。少し不思議というか心配に思ったよ。あんなに昨夜は元気だったのに、ってさ。  

 更に次の日、君は学校に現れたんだ。いつもと変わらない君だったよ、その時までは。僕は声をかけたんだけど、君はこういった。


『あなたは誰?』


 本当に信じられなかった。自分の耳を疑ったよ。おとといまで、僕を好きだって言ってくれた君が突然、記憶を失うなんて、想像もつかなかったんだ。信じられなかった。信じたくなった。いや、こういうのは信じようとするだけ無理だと思う。でも、それから僕の試みが始まったんだ。

 本来、君と僕は別のクラスだった。だから君の感心を惹くのはなかなか大変なのは十も承知だったよ。だって君と僕は入学式の後にたまたま話したから仲良くなっただけで、何か共通の趣味や同じ部活とか、そんなことは全く無かったんだよね。要するにただのクラスメイトでしかなかったわけさ。最初からね。

 しかも君は記憶を失う前と失ったあとでは人格も、好みも好きなことも、好きな人も違っていたんだ。僕はそれが今までの人生の中で一番ショックだったよ」


 「今思い出すと――


------


「あなたは誰?」そう、シズルは言った。僕は、とても嫌な予感がした。

「冗談だろ、僕を、ムラマツユウタを覚えていないと?」

「ごめんなさい。記憶に空白ができたみたいで、ムラマツ君のこともよく思い出せないの」

 シズルがそういうと、ユウタは青ざめた表情をしていた。自分の考えていた最悪のシチュエーションが今目の前で実行されているのだから。

「そう、ゆっくり治していけばいいと思うよ。だから、お大事に」

 それだけ言い残してユウタはそこから立ち去った。シズルはそれ以上なにも言わなかった。


 雲はいつもどおり空に浮いて、ベルトコンベアを流れる荷物のように風に流されていた。目を腕で覆い、下の自販で買った水を一気に飲み込む。垂れた水がユウタの首筋を流れている。多く飲み込んだせいでむせそうになって、でもそれでも構わないと、水を注ぎ続ける。このドロドロとした気持ちを少しでも薄めたかった。

 それからずっと空を眺めている。僕はどうすればいいんだろうか。付き添ってあげるのが普通なんだろう。でも――

「おい、ユウタ。大丈夫か」

 そう声をかけたのはハヤトだった。ユウタは起き上がり、彼の方を見た。

「いっそ、愛という刃物で俺を刺し殺してほしい」、そう言った。もう全てが良くなったような気持だった。

「冗談はやめてくれ。俺は友達もあまりいないって知ってんだろ」

「それもそうだな」、ユウタが少し笑う。

「それもそうだなとか言うなよ。これでも幸せなんだから」

 しばらくお互いは他愛もないことを言い合った。


「で、君の恋人、タカナミさんが記憶を失っていたと?」

「そうみたい。おとといまでは特になにもなかったはずなのにな」

 今思い返しても、シズルに変わった様子はなかった。その容姿も声もすべてユウタが知りうる限りいつものシズルだった。

「でも、ユウタの中で結論は出てるんだろ?」

 ハヤトはそう言った。ユウタはそれ以上、なにも返事することはなかった。 授業開始の鐘が屋上にも聞こえた。


------


「――いや、思い出すだけでも悲しくなるから、書くのはやめるよ。それにこのことは君も知ってることだと思うからね。

 僕は君とレコード屋で聞いた音楽を思い出したんだ。そのあと、自分で買ってスマートフォンに入れた、オアシスの『ワンダーウォール』。ラジオかテレビでよく流れていた事もあって懐かしい気持ちがしたんだ。君と僕は音楽の趣味も似ていて、特にこの曲だけは特別だったんだ。オアシスを代表する曲だったからなのかもしれないけどね。その日もイヤホンから流れていた。とてもいい曲のすべてが君との記憶を思い出させようとしてたよ。その時はまだ諦めていなかったんだ、今でも思うよ。

 その日も駅の改札に定期を通して、階段を下った。涙が今にでも溢れてきそうで、ユウタは階段から転げ落ちないようにゆっくり降りた。


 スマートフォンに入ってる数々の名曲。それを一緒に聞きながら帰った日もあったよね。そのことばかりが思い出されてただただ悲しかった。僕はホームの白線から一歩踏み出して、快速急行かロマンスカーに轢かれたほうがいいんじゃないか、と思った。だが、一抹の不安と、希望とがその場に踏みとどめさせた。また君に会いたい、なんていうのは図々しいと思うけどね。

 ホームの向こう側の人々は僕や周りの人のことをただ見ていた。そして、下りの各駅停車は扉を開けた。

『とうとうツケが回ってくる。今日はそんな日になりそうだ。どうにか気付くべきだった、どうすべきだったのか、ということを』

 英語の歌詞をなんとなく和訳してから、君について考えるのをやめた。諦めの気持ちがあったのかもね。今考えるとそうとしか思えないね。

 JRを乗り越える小田急の鉄橋の鈍い音が代わりに僕の弱さを笑っているように聞こえたよ。それから僕は必死に考えた。なにを変えるべきで、なにを君に伝えるべきか。でも君は僕の話をほとんど聞いてくれなかったよね。そのうち、僕はまた君に好きだと言いたくなったんだ。もう何ヶ月もそのチョコレートのような言葉を口にしてなかったからね。」


------  


 暫くの間、僕はシズルとあまり話さなくなった。シズルの友達が、別れたの? と訊いてくるのをなにも返事もせず、ユウタは自分の考えのうちに浸っていた。それからユウタは必死に彼女に会おうとした。『今の』シズルの友人に、なにが好きで、どんな話題に興味があるのか、必死に聞き出した。

 そうして、集めた話からなにを話すか決めて勝負に出かけた。シズルは『何か』が起こってから部活動を辞めて、図書室で本を読んでいる事が多かった。月曜日にユウタは図書室に出かけた。

「タカナミさんはどんな本読むの?」

 ユウタがそう言うと、シズルは本をユウタに差し出した。タイトルは『三日間の幸福』。

「この本を書いてる人が好きなの」

 シズルはなにも変わることはなかった。集中は本の中に注がれ、ユウタのことはあまり気にしていない様子だった。それにシズルはそれ以上、ユウタと話すことはなかった。


『でもユウタの中で、結論は出てるんだろ?』


頭の中を通過した言葉の意味をもう一度考えた。その時の『諦め』や、『諦めきれない気持ち』を、ハヤトは見抜いていた。そして、『結論は出てるんだろ?』、まるで答えは一つしかないかのような、そんな釘を僕に刺したのだ。明らかにそれは変わりのない事実であった。だから、僕は心を決めた。   


------


「今思うと、そのときにはもう君が記憶を失ってからもう一ヶ月半が経ってしまっていたね。僕は焦りを少しだけ感じていたんだ。今でも思い出す、あの夏の日。空に綿飴のように浮かぶ雲が見えて、日差しがあたるジリジリとした暑さ。それを一言で言うなら、『焦燥』、それ以外考えられなかったね。

 その時の僕はそんなことを感じながら小田急線を降りた。ホームの階段を登るとき君に会えて嬉しいと思う気持ちと、記憶が戻らないか期待する気持ちを二つ持ち合わせて登ったんだ。


 階段を登って改札をくぐると、少しだけため息をついて炎天下を歩いたよ。今日こそは言うんだ、そう心に決めて歩いているせいか、途中、躓きそうになったね。言うときまで、そのことは考えないようにしよう。そうでもしないと僕が学校に着くまでに倒れると思ったよ。午前中の授業は何事もなかった。僕も勉強して、君がどんな大学に行くと言っても同じところに行けるように勉強しようと決めていたんだ。授業が終わってすぐに購買にパンを買いに行った。僕はパンを一つだけ買って、ラウンジですぐに食べてから図書室へ向かった。君はいつもどおり図書室で本を読んでいた。」   

 

------  


 ユウタの決意とは別に、シズルはユウタのことを全く気にしていない様子だった。

「ねえ、ムラマツ君。君はどんな本が好きなの?」

「『鴨川食堂』。タカナミさんは読んだことあるの?」

「私は、読んだことないかな」

 ユウタは、とても悲しい気持ちになった。その本は、君が教えてくれたものじゃないか。君と僕で本を貸し借りして、全部読んだじゃないか。それでも、ユウタは言わなければならなかった。

「突然で悪いんだけどさ。タカナミさんは、いやシズルは本当に僕のことを覚えてないの?」

 ユウタの声が震えた。

「ごめんなさい。本当に私はここ一ヶ月のムラマツくんしか知らないの」

 心臓が痛いほど強く鼓動しているのがユウタにはわかった。時間が止まって、喉から声がでないんじゃないか、とも思った。

「僕は、君を、いや、君が記憶を失う前、僕はタカナミシズルという女性のことを愛していたんだ。だから、もう一度言わせて」

 シズルはなにも言わない。

「シズル、記憶が戻らなくても、君が好きだ」  返事を聞かなくても、ユウタは涙を流していた。結果は未来に聞くまでもなく、決まっているのだから。


「ごめんなさい。今はムラマツ君のことを異性として好きにはなれない」


「ムラマツ君と付き合っていたことが今の私には信じられないんだよね」    


------  


「いや、それ以上は言わないことにするよ。一度ふられたことをそう言い続ける男って最悪だな、と思えてきたし。まあ、君からすればこの文章もそういうものなのだろう。今一度謝りたいと思う。

 それ以降はなにも君とは話さなかったよね。僕らは本当の意味で元のように、いや、元いたところに帰ってしまったんだ。 そして、僕もついに心が折れてしまったんだ。ある日友達のハヤトに、『でもユウタの中で、結論は出てるんだろ?』と言われて諦めるわけないだろ、と思い込んでいた。けど、僕は最初から諦めていたんだ。その言葉を思い出したんだ。無心のうちに考えてたんだ、「君の記憶は多分戻らない」って、僕は最初から。

 一方的に決めつけていたんだ。   


 ------  


「ダメだったか」

 ハヤトは残念そうに言った。しかしユウタはなにも応えなかった。

「でも、仕方ないな。なんかおごってやるから次に」

 そこまで言いかけたとき、ユウタはハヤトの胸ぐらを掴んだ。

「仕方ないとかそういう話じゃないんだよ!」

 ハヤトはただそれを聞いていた。

「気持ちはわかる。だがユウタは頑張ったじゃないか。これまで必死に。これまでの努力はどうした」  言われて、気がついた。ハヤトはなにも悪いことをしていない。

「わかってる、わかってるんだよ」

 ユウタは手を放し、地面に倒れ込んで泣いた。それをハヤトはずっと見ていた。  

  

------  


「しばらくして僕と君は卒業した。卒業式の日に自宅にあった君からの貰い物をすべて焼却炉で焼いたよ。君の知っている通り、焼却炉は勝手に使ってはいけない。でも僕はどうしても燃やしたかったんだ。紅い火になって君との思い出が灰になるその様子を見ていた。  帰り道、君は友達と帰っていった。その背中になにも言えなかった。僕は弱い人間だ、それを痛いほど感じたよ。

 小田急の駅で帰り道のホームに行くために階段を登った。そこには寂しいという気持ちと、離れてしまうことへの辛さや悲しみを感じたんだ。それでも階段を登った。ふと、そのとき言いたくなった。独り言にしかならなかった。そして、この言葉はもともとビートルズの言葉でもある、君と聴いた曲のように呟いた。


『なすがままに、君が君としてなすがままに生きてくれ』  

 僕達は『崇高なる運命の中』に生きているんだ、その一部でしかないんだ、そう自分に言い聞かせ、君に言うように、ただ呟いたんだ――    


------  


ユウタはホームでいつもどおり電車を待つ。こうしてこの駅で電車を待つのは今日で最後になるだろう。ユウタは少し寂しさを感じた。それは君と帰れない日、こうして電車を待っているときも思った。なのに、どうして僕はシズルにそれを言わなかったんだろう。後悔先に立たず、とは言うがユウタはそれを受け入れられず、ただ泣いた。涙をハンカチで拭いて、ユウタはふと前を向いた。

 対面式のホームは上り下りの人たちが向かい合うようにして待っている。向かい合った人とは眼を合わせなかった。なぜなら、そこには楽しそうに話しながら電車を待つ人々が見えたから。自分のほかの人が幸せに見えて仕方がなかったから。


「電車が通過します。黄色い線より下がってお待ち下さい」

 そうアナウンスが入って、ロマンスカーがユウタの前を通過するとき、確かに向こう側のホームに見えた。


 楽しそうに笑う静流の姿と、同じく楽しそうにしている裕太の姿が。


 ユウタが気づいたときには電車が目の前を走っていた。

 そして、ロマンスカーが通り過ぎたときには二人の姿は見えなかった。    


------  


「春休み、君はどんな生活をしているだろう。僕はぼんやり君と過ごした生活を思い出した。君が忘れても僕は忘れられなかった。どんなに忘れようとしても僕は全くダメだった。それは僕の弱さでもあるし、最低なことだと思う。

 僕は思い出したんだ。必ず、幸せの向こうに君はいる。僕達は幸せだったから同じホームに立っていたことを。互いに、僕や君に会えるのが嬉しくて、幸せだったんだ。

 それを僕はいつからか、満たされないことと勘違いして、君に会いたいと思う一方で不満を少しだけ感じていたんだ。それが、ホームに降りる階段で寂しいなと思うようになって、いつからか僕らは違うホームに立ってしまったんだ。向かい合って反対のホームに。

 

 変わったのは君ではなかった。本当は最初から僕が変わってしまったんだ。それに気づかなかったことに今、気がついてしまったんだ。」    


------


 僕は悔しくなって、電車に乗った。小田急線は今日も人が多い。母校の制服を着た生徒が楽しそうに話している。この生徒たちにとって、学校に行くことは、色鮮やかな青春を感じに行くのと同義なんだ、ということに気がついた。ユウタは学校の前の駅で電車を降り、向かい側のホームを見た。すると、ユウタとシズルが離れて立っていた。そこで待つ人々皆暗い顔をしている。

 その時、警笛とともに快速急行の列車が通り過ぎていった。ユウタは知っていた。その後に二人の姿はない。


 僕は君に、本当の君にもう一度会いたいと思いながら階段を登った。


 僕が階段の途中の窓を覗き込むと、そこには、僅かに村松裕太の姿が見えた。


------


「だから謝りたくてこの文章を書いたんだ。僕は最後まで君にとってひどいことをした。それに今まで気づいていなかったんだ。だからもう一度謝るよ。 本当にごめんなさい。


 もう一度本当の君に会いたいと思うよ。でもそれは叶わない。なぜなら僕らは変容してしまったのだから。それはもう過ぎたことになってしまったことだから。


 でもこれから君がどのように生きても幸せはすべて、自分次第だと思うんだ。だから、僕は君と過ごした日々を一日一日思い出して自分から幸せを求めたいと思う。


 僕らが行く道はすべて険しいし、光が見えないのかもしれない。

 だからこそ、なすがままに、君が君としてなすがままに生きてほしい。


 なぜなら僕らは崇高なる運命の中に生きているのだから。」   





手紙はくしゃくしゃに丸められてゴミ箱に投げられていた。

ある日、イギリスのロックバンド「Oasis」の曲を聴いた時この小説を思いつきました。

小説家や思想家が手紙を送った所出版されるという話も思い出しました。

実際にはこんな手紙を書いたことはありませんし、こんな経験をしたこともないですが、自分が死んだ後そんな出版物が出ないことを望むばかりです。

後悔先に立たず、今できることをして生きていたい。


読んでいただきありがとうございました。

雪村真月

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