第8話 幼馴染がぶっ壊れ
ーーーそれよりアナタ……心身共に、私に捧げる気はあるかしら?」
真紅のドレスを纏う女性がそう言った。
その金髪は暗い影の元でも艶やかな光を放っており、するもの全てを魅了するような雰囲気を醸し出していた。
「遠慮しとく。心はもう奪われちゃってるけど……ね?」
静寂が訪れた、別に玲音が滑った訳ではない。
既に勝負が始まっているだけの事だ。
「どうした?攻めて来ないのかしら?
まさか怖気付いたの?」
数瞬経った後、圧倒的な威圧感をぶつけながら『ソレ』はそう言った。
それに対し、少女は満面の笑みで返す。
「上下黒、上はレース付き。」
「な……ッ!?」
既に玲音の攻撃は始まっていた。
何を言い当てられたかは定かではない。
だが、それにより目の前の相手が動揺し、隙を作った。
ただ、それだけだ。
「ハァァァァッッッ!!!」
「しまっーーーーー」
そして、真紅が空に舞った。
「下着神拳・零式『花弁返し』」
だが、攻撃ではない。真紅の布が舞ったのだ。
驚くべきでもない事実だが、玲音は女性と戦いたくない症候群にかかっているのだ。
……それが治る見込みは無い。
「私は女の子が怪我をするのが嫌いなんだ。
……うーん、くろぱん。イイネ!」
ハイヒールの蹴りが炸裂する寸前、スカートから顔を離して距離を取る。
「『吸血姫』相手ににそんな事が出来るなんて……よっぽどの自殺志願者らしいわね!!」
「いやいや、まだ死ぬ訳にはいかないよ?他でもない、私がぱんつを求めてるってことは、ぱんつも私を求めてるんだから!!!」
「この変態!!決めた……死ぬより屈辱的な目に遭わせてあげるわ!!」
走り出した吸血姫に対して玲音はただ、蹴りを1発虚空に放つだけしかしなかった。
だが、その威力は絶大だ。
「な……っ!?こ、この音はっ!?」
轟音が鳴り響いた。
風が蹴りによって打ち出されたのだ。
しかし、その攻撃を受けようが吸血姫はビクともしていなかった。
「何?このへっぽこ攻撃は?こんな攻撃じゃあ私を倒せないわよ?」
だが、やはり玲音が狙うのはそこではなかった。
この扇風機の弱のような風は対象そのものを狙ったものではない……その真下だ。
スカートの真下に打ち付けられた風の行く先は上だけ。
そして、それが意味する事とはーーー
「下着神拳・壱ノ業『旋風』」
カシャリ。文明の利器のフラッシュが黒を永久保存した。
羞恥に染まるドヤ顔も連写しまくる。
必死にスカートを抑える姿も連写しまくる。
「このぉッ!!!」
目の前の吸血姫に夢中になっている玲音は、普通に迫って来る吸血姫に気が付かなかった!!
「ひゃっ!?」
ひんやりとした牙が左肩に突き立つ。
血が流れ出るのを自覚する。
そして、それが吸われている事も。
「ろうら?いみゃのきふんは?」
「く……………あ。
や、やばい!ゼロ距離!」
「だひゃれ!!!」
更に血液を吸う速度が速くなる。
徐々に身体の感覚が無くなって行く。
「ふぅ……このまま殺せる……だけど、死ぬより屈辱的な目に遭わせる約束だったわ、ねぇ?」
「く……くっぱん!」「く…くっぱん?」
「くっ、ぱんつ見せて。」
普通にビンタされた。
ちょっと可哀想だが、正直言ってされて当たり前レベルだ。
「もういい、とっととその口を塞ぐとする。」
「え?ちゅう?ちゅーしちゃう?きたー!!!」
そんな台詞を全て無視して吸血姫は言葉の羅列を紡ぐ、その一節一節毎に魔法陣が一層二層と多重に構成されて行く。
そして、遂に魔法陣は少女を全て包み込んだ。
「我が名、エカルラート・カラミティ・ブラッドの名に於いて隷属せよ。
おめでとう、今日から貴様の名はカメリアだ。」
「有り難き幸せ。」
さっきまでの状態が嘘のように、しかし蒼い顔のまま立ち上がり膝をつく。
最悪の事態だ。
いつも読んでくれてありがとうございます。
20日までは0時に連続投稿しようかなと思っております。