第7話 異世界転生出来なかったら吸血鬼が襲って来たんですが!?
「ふぁぁぁ。もう9時か。」
現在時刻は朝の9時。
朝日はもう朝日と言えない場所まで昇っていた。
リス地から降り、ルーチンワークを開始する。
いつも通りの朝食を食べて、いつも通りにテレビを眺める。
ただ、今日のニュースはいつも通りとは行かなかった。
『えー続いてのニュースは、惨殺事件に新情報です。
今日未明発見された被害者は全裸で夜な夜な、外を出歩いていたとの事で、なんらかの犯罪に関係性があるとして、警察は捜査しています。』
普段ならば、ただ『怖いな』と思うだけだったのだが、今回は違った。
「これ……昨日の露出狂!?」
それに死亡方法もおかしい。
あれだけ健康そう……いや、生活習慣病にはかかってそうだったが、そんな人間が、たった1日でシワシワのミイラみたいになってしまうのは、異常だ。
『ピンポーン』
軽快なチャイムが鳴り響く。
最近聴く機会の無かった家のチャイムだ。
「爽やか系イケメンか……」
インターホンにカメラ機能があって、本当に良かったと思う。
「優司くん!良かった……大丈夫だったんだね!」
目の前には焦った表情のイケメンが息を切らして立っていた。
「大丈夫って……あのミイラ死体のやつか?」
「うん、知っているなら話は早いね。」
「……戦うんだろ?」
考えに考え抜いた結果、この言葉を選んだ。
「そんな訳ないでしょうが!!」
だが、返って来た返答は、予想していた返答とは真逆の返答だった。
「……なんでだ?玲音は戦ってるんだろ!?」
「だからだよ。正確には、まだ交戦していないけど、玲音さんは戦ってる。はっきり言って、君じゃその足手まといにしかならない。」
不意に拳に力が入るのが分かった。
今までの空虚な人生の中で、この瞬間ほど怒りを感じた瞬間は無かった。
「足手まといだと?そんなのやってみなきゃわからないだろ!!」
「やってみなきゃいけない時点でもう足手まといだ。
僕は君を戦わせる訳にはいかない。」
だがその男は、こちらの意思を一つ一つ、潰す様に淡々と言葉を紡いだ。
「じゃあ一生玲音を見殺しにしろって言うのか?
…………もういい、勝手にする。」
瞬間、下腹部……いわゆる鳩尾に拳が打ち込まれた。
電流が走るような痛みに意識が奪われる。
「が……っ!?ふざけ……っ!!」
「僕は、別に君が嫌いな訳じゃない。
……分かってくれ。」
無様に身体が地面に崩れ落ちるのが分かった。
そして、残った意識も全部、眠りに落ちた。
そして、もう一方では。
「はぁ、女の子に手を出すのは趣味じゃないんだけどなぁ……この首輪、似合うと思うよ?要らない?」
「呪詛の込められた首輪は趣味が悪過ぎるわ。
それよりアナタ……心身共に、私に捧げる気はあるかしら?」
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