第72話 赤
土曜日の補填分です。
紅の閃光が迸る。
袈裟斬りの太刀筋を槍で防ぐ。
「ぐっ…!?」
まるで、地球の重力が一点に集中するような重圧がのしかかる。だが、それで終わりではない。
「期待に応えてくれよ……?侵入者さんよぉッッッ!!!!」
閃光が交わり、変質する。
「二重コード変換『ヴィーグフレイム』ッ!!」
熱は空気中や物質を通して放射線状に移動する。
先程のレーザーもそうだ。着弾地点から熱が発生し、爆発が起きた。
「なぁッッ!?」
だが、今度は違う。
熱は空気も槍も伝わなかった。直接的に熱が叩き込まれた感覚。
溶岩に人体を晒せばどうなるか、知らなくても分かるだろう。
「がぁぁぁぁぁぁッッッ!!?!!!」
肌が沸き立つ。肉が焼けるというよりも、融解するという方が正しかった。
「優司くんっ!!!くっ……このッ!!」
機械のフレームを蹴る。当然、破壊は出来ないが、目的はそれではない。
人間の知覚不可能な領域まで加速。残像すら見えない超速度での移動。
しかし、
「ーーーなッ!?」
エンジン音が空気を叩いた。
残像が重なり、二つの人影が露わになる。
見れば分かる。ロボットよりも玲音の方が速い。
だが、正確さと合理性を以ってして玲音を足止めできているのだ。
「どうだぁ……?肉を直接焼かれる気分はッ!!!!」
アドレナリンが分泌されたのか、痛覚が死に始めた。
全身から発せられる危険信号が煩かった。
「さい…あく……だ…!!」
片膝を突く。たったそれだけの動作だが、戦闘では、重大な損失となり得る。
「このまま肩を切り開いて、ちょっと傷口を炙ってやれば……もうお陀仏だろう?安心しろぉ。そこのガールフレンドちゃんは綺麗に死なせてやる。」
拮抗していた得物の重量がそのまま身体にのしかかる。
限界を超えた全身に、更なる負荷が加算した。
「……くっ……!!」
「どうした?おしゃべりする元気もねぇのか?」
「……いいや?口を開くと笑いそうでな……ただ閉じてただけだッ!!!」
全身を低く落とす姿勢、ゆっくりと、上体を曲げた。
その体制は……
「電光描斬」
黒曜の石槍が赤黒く染まった。
「んなッ!?」
赤黒の雷光が二対の銃剣を辿る。
炎が彼の肉を焼いたように、雷光が少女の肉体を焼く。
「うがぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!?!?!!」
いつも読んでくれてありがとうございます!
……頑張ります。