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第6話 日常的

「え?悪い事してるのは、異世界人じゃなくて能力者?」


正に目から鱗だった。

あまりにもタイミングが合い過ぎて、異世界の事しか頭になかった。

まぁ、あの状況を正しく理解出来る方がおかしいと思うが。


「まぁ、簡単に言えばそうだよ。

ゆーじくんにはその身体能力で能力者をぶっ倒して欲しいんだけど……絶対しろって訳じゃない。どうする?」


「勿論手伝う。どうせ力を持ってると狙われるんだろ?だったら、先手を打った方が良い。」


勿論答えは決まっていたのだが、何故だろうか。

一瞬、玲音が悲しそうな表情をした……そんな気がした。


「分かった、ゆーじくん。これからは、幼馴染だけじゃなくて、仲間にもなるからね!改めて、よろしく!!」


「あぁ、よろしく。」


無理してないと良いんだが……心底そう思う。


「じゃあ解散しよ!私はお先にーー!!」


玲音に続いて部室を出る。

幼馴染が遠くで手を振る。

明日も明後日も、そんな日が続く、きっとそうだ。



「ゆーじくん!ゆーじくん!!そっち行った!!」


「よっしゃ来た!!オルァ!!!」


ズカーンという派手な音が響いた。

鉄パイプを全力で地面に叩きつけた音だ。

何故、こんな事をしているかと言うと。


「はい、捕まえたー。女の敵ー!!」


「何だよ!ちょっと入っただけだろ!!」


ニュースでやってた露出狂を捕まえるためだ。

鍵が閉まっている部屋に侵入し、帰ってきた女性にアレとかアレを見せつけて消えるらしい。


「嘘付け、ニュースじゃ判明してるだけでも20件以上って言ってたぞ。」


「何だよ!!俺がこの能力(ちから)をどう使おうが勝手だろ!?」


どうやらコイツの能力は、地面に潜り込む能力らしく、これでドアの隙間を潜って侵入したらしい。

捕まえるのに苦労した。


「取り敢えず、コイツを付けてもらうよ。」


それはかなり目立つ銀の首輪。

それをその露出狂の首に取り付けた。


「な、何だ!?おい!なんだよこれ!!」


「能力封印の枷だよ。二度と露出狂できないね。」


「うわぁぁぁぁ!!!!!俺の神の力がぁぁぁぁぁ!!!!!」


「はいうるさい。そんなの神の力じゃなくて、ゴミの力だから。行こう、ゆーじくん。」


そこには、全裸の男が白眼を剥き、倒れているという地獄の風景が広がっていた。


「あぁ、分かった。」


流れるような手つき。

きっとこの街のこういう奴らを、玲音はこうやって無力化してきたんだろう。

もしかしたら、俺もコイツみたいになっていたかもしれないと考えると、寒気がする。


「あっ、電話。ゆーじくん、向こうも進展があったみたい!」


スピーカー機能をオンにして電話に出る。

通話相手は、あの真面目なイケメンだ。


『優司くん、玲音さん。こっちの、『犬が良く吠える』事件も解決しました。

どうやら、聴覚強化の能力が発現してしまったようです。枷を付ければ解決しましたよ。

まぁ、首輪が二つなのは、ちょっと不恰好ですが。』


「幽霊とかじゃなくて良かったね!こっちの方も解決。露出狂は二度と不法侵入出来なくなったよ!

……うん、じゃあ今日は解散で。もう5時だしね!」


「……なんか、思ってたのと違うな。」


「そりゃそうだよ!異能っていうのは、主に願いによって発現するんだけど……攻撃に転化できるくらいの力が発現するには、本当に強く願わなきゃいけない。

ゆーじくんが戦った炎使いなんてかなりのレアモノだよ!」


命を賭けたバトルを夢見ていなかったと言えば嘘になる。

けれどもこんな日常が、平和で、ちょっと面白いような日常が、一番気楽で楽しいのかも知れない。


「ほらーなにぼーっとしてるのー?行くよー!」


「分かった!直ぐに行く!」


こんな日常が、やっぱり丁度いい。



夜も深まり、月も登ったこの時間。夜は魔の象徴。

太古から夜に関わる様々な伝承があった。


「ぐ……あの餓鬼ども……絶対許さねぇ……でも、先ずはこの首輪をなんとかしないと……!!」


夜に効果を発揮すると言われる魔術や魔法。

悪の支配領域とされる夜。

実際、そんな伝承が無くとも、私達は夜に良いイメージを抱かない。何故だろうか。


「ねぇ、その首輪、外してあげましょうか?」


「ぁ……あぁ!外して欲しい!!外してくれ!!」


あれだけ引っ張ろうが取れなかった首輪がいとも簡単に外れた。

パチンという音が余りにも軽々しく、暫くの間取れたという実感がまるでなかった。


「あ……取れた……取れたぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」


「そう、じゃあ代金を支払って貰いましょうか。」


そのまま右肩にかぶり付く。

ゴクンゴクンと何かを飲み込む音だけが耳元に残る。


「な……、え……?なにを…を……ぉ………」


出血性ショックで倒れようが構わずそれを吸い続ける。

女が顔を上げた。口の端から赤い液体が滴り落ちた。


「ふぅ……マズイわね。貴族か何かかしら?

もっとあっさりした奴は居ないのかしら。」


……先ほどの答えだが。

夜は、こちらと()()()()()()()()()との境界が曖昧になるのだ。

そして私達は、それを本能的に恐れている。

それが答えだ。

いつも読んでくれてありがとうございます!!

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