第5話-後半 青春はつくれる()
放課後、朝田先生の言う通り、許可は既に下りていた。
「たのもー!!!!」
「いや、たのもーもクソもないでしょうが。」
その部室は元々占い部が使っていた事もあり、妙な雰囲気を醸し出していた。
そして、我ら………
「……何部だっけ。」
そう言えば、署名の紙にも部活名は書かれていなかった。
正直しょうもない事だが、しょうもない事こそ大切な事なのだ。そう思う。
「ん?占い部。」
「元の方じゃなくって!」
「え?異能力探求部の方?」
いや、異能力じゃなくて異世界だとか、そんなおおっぴらな名前で良かったのかとか、言うべき事はたくさんあった。
だが、結局は。
「名前長えよ……」
「うん、だよね。」
それから30分くらいして、他の5人もクラブにやって来た。
つまりは、校長先生も朝田先生も来た。
「ふむ、かつて未来を求め続けた者共の跡地か。
世界は所詮盛者必衰、未来を知れたところで意味が無い。そして、無駄な足枷になる過去も必要ない。
必要なのは、今どうなのか、だ。」
厨二ロリがなんか言っていた。
「ふーちゃん!そこにいるのが元占い部部長の菖蒲ちゃんで!菖蒲ちゃんの占いは百発百中なので有名だったんだけど、あまりに当たり過ぎるから神格化されちゃって、部員が全員……
隣から後光が差した。
いや勿論、本当に光っている訳ではないが。
「ま、未来は今に繋がってる訳だから!未来も大事!!今を変えて!未来に繋がなければならないな!!!」
言い切った、胸を張ってのドヤ顔。
しかし、
「「「「……………」」」」
(校長先生のキャラが崩壊する音)
一瞬で三角座り状態になった。
「ほんとふーちゃん可愛いー!」
突如、玲音が校長を背中から抱き上げ、頭を撫で回し始める。
抵抗するように両腕を振り回すが、玲音の腕はビクともしない。
「き…貴様ーー!!我にこんな屈辱をーーー!!!
あとふーちゃん言うなーー!!!!!」
「亜流、それくらいにしておけ。
校長先生も……こんなんでも一応大人だ。
羞恥心の一つや二つ……なさそうだが、恥ずかしいらしい。」
「貴様ぁ!擁護するつもりないだろー!!!」
宙吊りのまま更に脚をバタつかせ抵抗を見せる大人(笑)。
そのバタ足を行うのに当たって、別の危険が生まれるリスクを考えていないらしい。
「あぁ、擁護し切れないと思っていますよ。」
そう言うや否や玲音から校長を玲音からひったくって椅子に座らせ、机に何かを叩きつける。
紙の束だ。
「え?え?えぇ?…………ちょっ………!!」
嫌な予感がして、ゆっくりと後ろを振り向くと……
笑顔だった。
「だから、ここで1発、大人らしさ見せましょうよ。
ね?誰も損をしないどころか、むしろ得をしますよ?
いやー本当に良かった、先生と同じ部活で。」
「うぎゃ──!!!!いゃぁぁ────!!!!!!!」
「嫌でもやるんですよぉ!!!」
「…………えーと、その。クラブ、しましょう。」
真面目なのはこのイケメンだけだった。
「はい、じゃあ、この異能力探求部の事なんだけど、活動内容は、主に悩み事の相談、解決、再発防止です!」
イケメンが軽く頷きながら言った。
「なるほど、探偵部に近いものがありますね。」
「え?探偵部ってあるのか?」
「いえ、無いですよ?」
何故、この人当たりの良さそうな微笑はこんなにも人をイライラさせられるのだろう。
「なるほどね、だから占い部の私に声がかかったのね。良き相談相手になる自信はあるわ。」
正直、占い部には暗いイメージしか抱いてなかったが、彼女はその真逆を突き進んでいるように思える。
そして、
「………」
この(多分)異世界人の転校生。
部室に入って来た瞬間から無言の少女は、腕が寂しくなった玲音の次の餌食にされていた。
「後は、解決と再発防止のお話なんだけどねー!
最近割と流行ってる能力所有者達をーーーーー」
「ちょっと待て……スキルマスター?異世界人じゃなくてか?」
玲音、視線を泳がせ暫しの硬直。
混軌や朝田先生まで驚きの視線をこちらに飛ばして来た。
溜息を玲音が吐いた。
「おい、なんだ?なんかおかしいのか?」
「…………まさか、こんな風に優司くんを巻き込む事になるなんて…………。」
「巻き込む?は?」
「このクラブは異世界探究部じゃなくて、異能力探究部。
この街で起きている異能力犯罪から身を守る為の部よ。」
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