第5話-前半 青春の1ページは戻せない
話の飛躍が起きているというご指摘を頂きましたので、第5話前後半含めた一部を修正しました。
これからもよろしくお願いします。
「……ふぁぁぁぁぁあ。」
思わず欠伸が出てしまった。
疲れていたのにも関わらず、昨日睡眠を取ったのは午前2時。
そして、普段の様に洗顔+歯磨きのルーチンワークをこなし、リビングに降りる。
「おはよ!ゆーじくん!」
そして、彼女の表情は普段の様に明るくなっていた。
そのスイッチが切り替わったかのような状況に、
「あ…あぁ。」
言うまでもなく彼は動揺していた。
少し、ほんの少しだけ。
彼はこの世界が怖くなった。
「おっ優司!なんだその顔ー!!真っ青だぜ?学校の七不思議の一つでも体験したのか?」
そんな時でも、コイツは呑気というか、変わらないと言うべきか……。
目の前の友人はカメラのファインダー越しにこちらを見てきた。
「七不思議?そんなのあったのか?だが、スクープにはならなそうだぞ。」
(もうニュースでスクープになったからな。)
「ケイトー!!校長室行こー!!!」
扉を開けるなりそう言い放つ少女がカバンを机に置き、その目の前のケイトの手を引いた。
ケイトがこけた。
「ぐぇっ!?ねーちゃん!?わかった!校長室行くから!じゃ────」
おまけにそのまま引き摺られて行ってしまった。
アニマ姉弟は本当に元気だ。
そう思った次の瞬間、バコン!!
それは机が叩かれる音だった。
「ゆーじくん!!登校中は言えなかったんだけど……言っていい?」
「おっおう……」
夏の太陽が霞む位の笑顔の時点で、怒ってはないと言うことが確定しているのだが、思わずそんな態度を取ってしまった。
「クラブを作ろう!!」
「は……?」
クラブ、トランプの……ではなく、学校の放課後に行う方のクラブだろう。
他の学校よりも緩いと思うが生徒五人と顧問の先生が居ればクラブを設立できたハズだ。
「いや、なんで────」
(クラブ活動なんだよ。)
そう言おうとしたが、やっぱり反論は直ぐに遮られた。
「えーと……青春の思い出だよ!!あとは……私達の知る中で、一番安全なのがこの学校。そうじゃない?」
「まぁ……そう……か?」
どちらかと言えば、統一性の一切無い混沌が絶妙なバランスで釣り合ってるだけだと思う。
幼女校長が何と釣り合っているのかはわからないが。
「顧問は朝田先生がするって言ってたし、私含めて4人分の署名はもう集まってるから、後はゆーじくんが署名するだけ!!」
まるで始めからそうするつもりだったように妙に準備が良いが、気付けない。
今の彼にとっては光明はそれしか無かったから。
「その四人って?」
「えーっと、混軌くんと、菖蒲先輩と、ふーちゃんと私で四人だよ!」
混軌くん、フルネームは混軌才華だ。
幼稚園の時の知り合いだったらしいが、同じ幼稚園だった俺は彼を知らない。
爽やか系のイケメンで、校内人気はすごく高い。
観希咲菖蒲先輩。
確か、廃部寸前の占い部の部長だったハズだ。
そして、もう一人。
「……なぁ、ふーちゃんって誰だっけ?」
「ラ・フェ・シュ・リメド=バルフート校長先生でしょ?忘れたの?」
確かに、名前欄にはそう書かれている。
漢字8文字しか想定されていない空欄いっぱいに。
「あぁ〜〜そうか、校長先生か!!
本当名前負けしてるよな、あの先生。
……てか、先生は部員なの?」
「部員でいいんじゃない?」
ーーーダメだ。バルフート先生は部員として認められない。」
朝礼の時間終了と同時に先生に書類を提出したが、その書類は認められなかった。
「えぇーなんでー?」
「知ってるだろ?あの先生な、既にクラブを5個掛け持ちしてるんだ。
その影響でちゃんと終わらなかった仕事は誰がやると思う?俺だよ。」
目の下の隈がその苦労を物語っていた。
妙に真面目なせいで、いつも損な役回りをしていたのを思い出す。
(そういえば、女子テニス部の練習に参加したり、女子バスケの筋トレに参加したり、写真部の活動の一環で自分のペットの写真上げてたりしてたな校長先生。)
「じゃあ6人目を見つけなきゃいけないね!」
「あぁじゃあ厨二野郎なんて────
「はい先生!これでいいでしょ?」
幼馴染の行動力が凄過ぎる。
人の話は最後まで聞かなければいけないが、彼女の場合は最初から聞いていないのでセーフ。
……だろうか?
「……世与か。
新入生と親睦を深めるのは良いことだ。
あとは、校長先生があの様子じゃあ、今日中には活動可能になるだろうな。
……頑張れよ、俺も仕事頑張るから……。」
コーヒーを注いでまた口に運ぶ。
ぶつぶつと呟きながらキーボードを叩く姿は現代社会人のそれだ。
「……あの先生、ちゃんと寝てるのかな?」
「……心配だね。」
今度、差し入れでもしよう。
そう決意し、授業に挑んだ。
いつも読んでくれてありがとうございます。
部活って良いですよね。