第4話 異世界の侵食
茜色が空を侵食している、混ざり合った部分が紫のグラデーションになっていて綺麗だ。
ふと、差した陽光が眩しくて瞼を開ける。
「ゆーじくん、おはよう。」
空いた瞼の先には純金の様に光り輝く瞳があった。
それは体の痛みを一瞬忘れるほど美しく、とても綺麗だった。
「お前と、幼馴染じゃなければなぁ……」
疲れていたせいか、意識するよりも先に言葉が先走っていた。
「幼馴染じゃなきゃ……毎日起こしにも来ないし、ご飯作りにも行かないよ?あっそうだ!ココア飲む?」
「それは嫌だなぁ……ココアは頂きます。」
ゆっくりと体を起こす、リビングのソファーの上、テレビは爆発事故について煩かった。
そして、テロップには……
『炉洞市、爆発事故』
「……ッ!?」
「ゆーじくん、大分災難な目に遭ったみたいだね。」
それは、あの異世界野郎との戦いで起きた……いや、起こした爆発。
それが『事故』として処理されている。
普通、路地裏のスプレーは突然爆発したりしないし、壁は勝手に黒焦げにはならない。
「ねぇ、ゆーじくん。」
それはつまり、警察上層部には既に異世界人若しくはその協力者が存在しているという事だ。
それが、今回の『事件』を『事故』に変えたのだ。
「ねぇ、ゆーじくん!」
だとすればもう警察なんて当てにならない。
それに、玲音は俺をここまで連れて帰って来た訳だから、既にマークされている可能性がある。
「……ていっ」
滑らかな表面が頰に触れた。
陶器製のそれは……とっても、思考の迷宮入りを焦がす位には熱かった。
「あぁっつぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!」
あの火男の火炎放射の方が熱いはずなのに、『日常』の温度は簡単に彼の緊張を融かした。
「一人で考え過ぎだよ、ゆーじくん?君には素晴らしい幼馴染、玲音ちゃんが居るでしょうが!!!
ほら、全部話してみなさい!」
……その時の俺は、やっぱり疲れていたのかもしれない。
絶対におかしい、絶対に笑われるって分かってたハズなのに。
「実はな。
ーーーー俺、異世界に行ったんだ。」
「………………え……っ!?」
一瞬、玲音の全身が強張った。
唇が小刻みに震える。
笑うのを我慢しているのだろう。
「……あーもう!!笑えよ!!!もう、我慢しなくていいぞ!!むしろ笑ってくれた方がありがたい!!!」
「……そ、そうだよね、冗談だよね……あははは!笑えないよ?ゆーじくん!……ココア、おいとくね。」
……なんなんだろう。率直にそう思った。
普段、いつ何時でも元気全開の玲音。
それが必死に元気であろうとしている。
本当に、ここは俺がよく知る『いつもの世界』なのだろうか。
その非日常は、俺にそう思わせるのには十分だった。
いつも読んでくれてありがとうございます。
七月ですねぇ。