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第9話 吸血姫の現代社会体験

満足そうに目の前の眷属を眺める吸血姫。

だが、そこで異変に気付く。


「……ん?何故かしら、服がぶかぶかだわ。

あれ?…ちょっと、カメリア。私はどうなってるのかしら?」


「エカルラート様は非常に可愛くなられております。」


「具体的に言いなさい。」


「幼女になっております。抱っこしてもよろしいでしょうか?」


そう、原理は不明だが幼女になっていた。

その幼女にそんな事を口走る輩には通報安定だが、普段の過激派な玲音の性格をここまで落ち着かせるとは、吸血姫も伊達ではないのかも知れない。


「ダメ。ダメよ、絶対よ。」


「それはフリでしょうか?」


「ふり……?よく分からないけれどダメよ。」


「……分かりました。」


非常に残念そうに玲音……いや、カメリアが告げる。

そんな眷属から視線を外し、自分の身体に視線を向ける。


「ふむ、不老の力が暴走してるのかしら?

一応前例はあるわね、大魔術師とかの血を飲んだ時だったかしら?」


「お洋服を買いに行きましょう。そのままでも最高ですが、流石に動き難いでしょう。」


「そうね、ヒールもサイズが合わないわ…………」


「抱っこ……」「ダメよ。」


結局、おんぶで仕方なく妥協した。

よっぽどの事がない限り手を出せないだろうという発想からだ。

だが、カメリアは既に満足そんな表情で街路を歩いていた。


「服のアテはあるのかしら?」


「私の勤めていた洋服店が御座います。」


「……店員が変態じゃ無ければ良いわ。」


そんな2人を民衆は珍しそうに眺めていた。




「……えーっと、バイトの玲音ちゃんよね?

その子は従姉妹かしら?」


どうやら練は相当な情弱だったようで、玲音の位はバイトのふりをしている変人から只のバイトにランクアップしていたようだ。


「カメリア、この冴えない店員、腕は確かなの?」


思いっきり人差し指で人の顔を指差しながら吸血姫が言った。


「ちょ…ちょっとお口が悪いわね、最近の子はませてるんだから!」


それに対して店員は相手が相手なので起こるに怒れず、なんとも微妙な表情でそう言った。


「エカルラート様、確かにこの冴えないけど素材は良い、磨けば光る系の店長の腕は信用に値します。」


店員ではなく店長が頰を紅くした。

やっぱり主人公は玲音なのかも知れない。


「れ、玲音ちゃん!恥ずかしいわ!というか、ごっこ遊び?

服の用意なら良いわよ。玲音ちゃん、数ヶ月前からバイトしてるのに一回もバイト代貰ってくれてないものね!」



「ふむ、腕は確かなようね。」


「はい。店長、私の服まで仕立て上げて頂き、有難うございます。」


あれから30分も経たずに服は完成していた。

店長曰く、途中まで作ってたのを完成させただけ……らしいが、靴まで仕立て上げるのは普通に凄いと思う。


「全然良いわよー!私も結構テンション上がっちゃった!またねー玲音ちゃん!」


「カメリア、次は食事に行くわよ。美味いのを紹介しなさい。」


「畏まりました。とっておきのモノが御座います。」


吸血姫の食事。

それはつまり、


「女の子がいいわね。何故かはわからないけど、女の子の方が魔力が高い傾向にあるの。

覚えておきなさい。」


「…………はい、わかりました。」




「く………っ……?…!」


目を覚ましたのは家のリビングでだった。

周囲は特に荒れた様子もない。

ただ異常なのは、机と離れた位置にある椅子と、それに括りつけられている優司の所為だろう。


「この椅子…………」


思い出されるのは、過去の記憶。


『優司、妹ができるぞ。』


『……?妹?』


『あぁ……いや、弟かも……まぁ取り敢えずだ、優司はお兄ちゃんになるんだ。』


そう言って、父さんが4つ目の椅子を買ってきた。

母さんは、早すぎるよって笑ってた。


その2日後に母さんが交通事故に遭った。


「……悪いな、妹、もしくは弟っ!!」


高過ぎる椅子は深く座ってしまうと、脚が地面に着かない。

だが、椅子の脚の前二つを壊してしまえば、支えを失って脚が地面に着く。


「うりゃあっっ!!!!」


思い切り背中を地面に叩きつける。

強化された守備力が無ければ、きっと木片が沢山刺さっていた事だろう。


「あのイケメン……覚えてろよ!…ってそれより玲音だ!!」


その瞬間、携帯の通知が鳴った。

誰かと思えば、写真部のケイトだった。


「……『玲音ちゃんってメイドのバイトしてたっけ?』だって?」


そういう文面のメールが送られて来た。

そして、そのメイド姿の玲音の写真が送られて来た。


「……『いいや、玲音はメイドのバイトはしていないはずだよ。もしかしたら新しく始めたのかも』」


だが、気付いてしまった。

この角度の写真じゃないと気づけない。

風に後ろ髪が靡いた瞬間を激写したこの写真。


「……歯型……だと!?くそっ!!『ありがとう!』」


走り出した。

この玲音が、吸血鬼を連れて向かっているであろう場所に。


「だから異世界は嫌いなんだよっ!!玲音!!待ってろ!!!」

いつも読んでくれてありがとうございます。


玲音ちゃんのヒロインは、全国の女性の皆様です。

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