発見
町外れの大きな屋敷の前に着くと仁とニコは車を降りた。そして屋敷の門のインターホンの前に立ちボタンを押す、すると低い男の声が聞こえた。
「誰だ」
「言わなくてもカメラで見てんだろ、俺だよ開けてくれ」
「待ってろ」
そう男が言うと同時に門が開いた。そのまま屋敷の前に行き、扉を開けると大きな広間の中央に身長180センチ程の白衣を着た男が立っていた。
肌は白く、髪は金髪で腰まで伸びるそれはまるで女性のもののように艶めいていた。そして顔の左側には真っ直ぐ刃物で切られたような古傷があり、痩せこけていた。
「来るなら連絡をよこせといつも言っているだろう」
「悪いなシン、いつも忘れちまうんだ」
仁はそう言って笑うと後ろで縮こまっているニコの手を取り、シンと呼ばれた男の前にニコを連れて行った。
「こいつはニコ俺の依頼人で兄さんを探してるらしい、ほら挨拶しな」
「ど、どーも安藤ニコです…よろしくお願いします…」
シンはニコの顔をまじまじと見つめると何か訝しげな顔をしていた。
「おいおいそんなに見つめるなよ困ってんだろ」
「いや…すまない…まあ立ち話もなんだ奥の部屋で座って待っててくれ、今コーヒーでも淹れよう」
「ああ頼んだ」
仁はニコと一緒に中央の広間を抜け奥の研究室のソファーに並んで座った。
「あの人誰なんですか?顔に傷があって怖そうな人でしたけど…」
「顔は怖いが良いやつだよ、心配すんな」
「でも…」
ニコがなにか言い終わる前にシンがコーヒーを持ってやって来た。
「待たせたな。話とは何だ?」
コーヒーを配りながらシンが切り出した。
「この子が兄さんを探してるって言ったろ?それで一緒に住んでた家に今日行ってきて映像を撮ってきたんだ。手がかりがないか調べてくれないか?」
「成る程…今のお前じゃ調査出来ないからな…分かった、データをよこせ」
「助かるよ」
仁は右手の親指を逆方向に折るとプラグの差し込み口を出しシンに手のひらを向けた。
「仁さん右手も…」
ニコが驚きながら呟いた。
「言ってなかったが俺の身体は脳ミソと心臓以外ほぼ機械さ、まあ機械が無かったら死んでるから本当に共生してるって感じだな。ははっ」
「おい動くな静かにしてろ」
シンはそういうと自分の左手の親指を折ると中からプラグを取り出し仁の親指の辺りにそれを差した。
そして二分ほど経つと静かに口を開いた。
「兄さんが居なくなってから部屋は使ってないんだな?」
「はい…なるべくそのままにしておけば後で調べるときいいかなって…」
「そうか…では端的に言おう、君の兄さんは死んだ」
外はいつの間にか雨が降っていた。