探偵
「次は現在巷を騒がせている連続殺戮事件です…」
「頭痛てぇな…ちくしょう…薬有ったかな…」
俺はテレビを消し、寝ていたベッドから起き上がり洗面所へ向かった。棚を漁るが薬は無かった、二日前も同じことをやってた気がする…四日前だっけか…まあいい、俺はそのまま洗面所の水で顔を洗い、その足でタンスに向かいスーツに着替えた。気が乗らないがしょうがない、朝が来て服を着替え仕事へ向かう。これは人間であるかぎり仕方のないことだ、百年前から変わらない人間の義務みたいなもんだ。
そう自分に言い聞かせると車に乗り、電子タバコを咥えながら仕事場へと向かった。仕事場ったってただのおんぼろビルの事務所だが。
ビルの駐車場に着くと俺はタバコをしまい一階の受付の女に挨拶をする。
「あら遅かったのね、遅刻じゃないの?」
「道でお婆さんが困っててね、家まで送ってあげたのさ」
「それは大変ね、でもあなたの車両の位置情報は10分前に家を出てから真っ直ぐここに向かってるけど?」
「便利なのも良いこととは限らないな」
「機械の私を騙すならもっと良い嘘をついたほうが良いわよ」
「練習しとくよ」
俺はそういうと受付の横のポストを漁り、中に入っていた一枚の黒い封筒を見つけた。
差出人も何も書かれていない封筒を彼女に見せながら俺は言った。
「これは何だ?」
「知らないわよ、何もかも電子書に移り変わったこの時代にポストなんて置いて、電子書なら差出人無しなんて出来ないからこういうことにはならないのに…」
彼女は若干イライラしながら言った。
「でもお前はずっとここに居たんじゃないのか?」
「ロボットにも人権はあるのよ?それじゃあ私は休憩だからごきげんよう。監視カメラ位つけた方がいいわよ?」
そういうと受付の奥へと歩いて行った。
「そうかよ」
俺は一人愚痴りながら2階の事務所へ向かい鍵を開けると中央にあるソファーに座り黒い封筒を眺めてみた。
封筒は真っ黒になっていて何も書かれていない。ソファーの前のテーブルに置いてあるハサミを取り封筒の中身を取り出すと白の便箋が入っていた。