脇役 二人目~国王陛下~
世界に住む一部の者たちの人生を弄び、国を腐敗させる最悪の悪神ホワイトキャット。
特に、ホワイトキャットは美しく可愛らしい少女を主人公に仕立てて、将来有望な美少年との『恋愛物語』をさせるのが好きらしい。
ホワイトキャットの性別は、女なのだろうか?
いや、そんなはずない。
結果的に世界に災いしかもたらさない結末になる物語を女性は好むのだろうか?
これは、男性にも言えることだろうが。
この世界における歴代の各種族たちの王は、ホワイトキャットの被害者だ。
国の土台を支える民たちは、各種族の王たちが良好な関係を築いていることを知らない。
これは、意図的に彼らに伝えられないのではない。
民たちは、ホワイトキャットによる情報操作で浸透した噂が真実だと思い込まされているからだ。
その噂を否定できて実績と人気のある冒険者たちの冒険譚あれば、私たちが知る真実を民たちも信じることができるだろう。
冒険譚は、吟遊詩人が各国を回って披露するもの。
吟遊詩人が唄う冒険者たちの冒険譚は、娯楽の少ないこの世界で人気なのだ。
ホワイトキャットがこの世界に住む者たちの迷惑を顧みず、いや、むしろ禍を振り撒きながら作る物語の『主人公』が、教会でする神託の儀式で判明した。
私の幼馴染でかつて近衛騎士に所属し、冒険者に転職した男の娘だ。
彼は、各種族の王たちがひた隠しにしている『ホワイトキャットの真実』に気付いた。
そして、この世界の憂いを取り去るためホワイトキャット討伐の旅を円滑に行うため冒険者となったのだ。
彼は、ホワイトキャットを見つけることができないと報告してきた。
ホワイトキャットは、世界に災いをもたらす時だけ地上に姿を現すということを書いた歴史書の一文は事実だったようだ。
私は彼に会いに行き、ホワイトキャット討伐の旅を続けるのではなく、旅の途中で恋に落ちた女性と一緒になるよう説得した。
近衛騎士としても優秀だし信頼できるのだが、彼には休息が必要だろう。
数年後、彼は自分の願いを叶えることのできる子ども(娘)ができることとなる。
生まれた少女は、魔力持ちだった。
そして、不幸なことに生まれ持った魔力はホワイトキャットが思いのままに弄ぶことのできる唯一の魔力だった。
だがしかし、この少女の性格が本質がホワイトキャットの思惑を見事に打ち砕いた。
私を含め各種族の王たちは普段の口調を忘れて思った。
『マジで!?』と。
少女の使う魔法は、非常に微妙なものだった。
確か生活密着型と言ったか。
ホワイトキャットが弄ぶことのできる魔力は、魔力として誰もが羨む万能さがあるのだが一体どうしてこんなくだらない使い方を思いつく...っ!?
私は、少女が使う魔法のことを考えるのを放棄した。
その数年後、ホワイトキャットは自分が思い描く物語に軌道修正しようと私の最愛の妹を故意に原因不明の病を患わせた。
そして、数ヵ月後(私や王妃にとっては、永遠を感じさせる時間だった)にやっと妹の病はものすごく傷つきボロボロになった謎の生物によって、治らないと思われた病が回復した。
奇跡的に病が回復したと思ったのだが、原因はとある冒険者たちだと調べて分かった。
その冒険者たちは妹が嫁いだ公爵領の領民だったのだ。
例え妹への恩義を感じて妹の病を治したとしても、ホワイトキャットが原因ならこの国を預かる国王として、褒賞を出さねばならぬ。
私はさっそくギルド経由で冒険者たちを呼び出した。
その冒険者たちは口々に、『当然のことをしただけだから、褒賞いらない』となぜか力の限り断固拒否した。
そして、冒険者たちの代表の一人でホワイトキャットの被害者(確か、カーライルという名前だったと思う)が、妹が死に至る原因不明の病に罹った経緯を詳しく書いた報告書を側近を通して私に渡してきた。
その詳細な報告書を読んで、目を座らせる私と宰相部下(もう一人の幼馴染)。
私たちがその報告書を読み終えた時に、冒険者たちの中の少女(かつて近衛騎士だった幼馴染の娘)は、妹を殺そうとした罪人の処罰を迅速に行うことを求めた。
『自害』という方法を。
軽すぎだと思ったのだが、少女は『ホワイトキャットが関わっているならば、適切な処罰よりもこの世界を救うために迅速にできる処罰でないとダメです』と言った。
この時に思った。
あの男の娘だからこそ、いち早くホワイトキャットの真実に気付き自分の呪われた運命に抵抗できたんだなと。
それに、少女の提案はある意味正しい。
ホワイトキャットの影響下にあるなら、ホワイトキャットが出てくる前に処罰できる方法でないとダメだ。
この世界の未来のため、何より子孫のため、この世界からホワイトキャットを切る捨てないといけない。
正直なところ、妹の殺害未遂犯は私は始めから妹の息子だと分かっていた。
本能で感じていたんだ。
それに、私の妃は妹の息子が危険だと何とかしないと妹の身が危ういと警告してきた。
だが、私は彼を小さい頃から慈しみ育ててきたので信じたくはなかったんだ。
それが、この結果か...
もはやこうなっては妹の息子だといっても庇い立てできない。
私は、遅くなってしまったが決意しなければならない。
私は、近衛騎士たちに妹の息子を連行するための準備をするよう伝えた。
そういえば、あの冒険者たちのことを忘れそうになっていたな。
側近たちに聞くと、『あの冒険者たちは、ホワイトキャットの悪事を挫くべく城から逃げるようにこの場を後にした』と言われた。
なぜ、逃げないといけないのだろう?
私は彼らに何かしたか?
私は近衛騎士を引き連れて、ドリエッティ公爵家屋敷に来た。
このために、妹と天使アニーは外に出てもらっている。
妹にはこのことのために、先触れを出していたのだ。
出迎えたのは、ドリエッティ公爵。
現在では、王家に忠誠を誓い信頼できる者の一人だ。
ドリエッティ公爵は息子が、妻を殺そうとしたと伝えると動揺していた。
だが、冒険者たちから受けた報告書をもとに王家直属の調査隊が調べた結果の報告書をドリエッティ公爵に読ませた所あまりの酷さに絶望的な顔をした。
妹には酷なことなので、報告書を読ませてはいないが。
とにかく、この屋敷から罪人として妹の息子を連れ出した。
そして、城の地下牢に連行して罪状を述べた。
妹の息子はそれに納得できないようで喚き散らしたので、彼の罪状の報告書の中で、何も暈したり柔らかい表現をしてない報告書を読ませた。
実は、報告書は三種類ある。
冒険者たちが私たちに提出した報告書(読むのに精神的な何かが削られる)、調査隊が調べた結果の報告書(保存するために優しい表現をしている)、ドリエッティ公爵に読ませる報告書(優しく柔らかくマイルドで少し暈したもの。それでも、酷い)だ。
妹の息子は、それを読んで絶望したが助けに来ないホワイトキャットに泣き叫び縋った。
それを無視し、私自らの手で妹の息子に自害用の毒を無理やり飲ませた。
このことについては、他の者の手を借りるわけにはいかない。
これは、私が犯した過ちなのだから。
あれから一ヵ月後____
ホワイトキャットは、あの冒険者たちによって見るも無残だが相応な殺され方をしたそうだ。
そして、教会から正式にこの世界はホワイトキャットの手から離れたと神託が下ったのだ。
これで、未来に子孫に『負の財産』を遺さなくてよいこと私を含めた各種族の王たちは安堵した。
これからが、この世界にいる王たちの正念場だ。
この世界を正しい方向に進ませるための。
あの冒険者たちが、この世界のためにしたことを無駄にしないことを決意した。