表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

モブとすら呼ばない~ヒロインの下僕~

ワレは、シルヴァードラゴンのシルヴァである。

シルヴァは、ワレあるじが付けてくれた名前だ。

あるじのネーミングセンスとは不思議なもので、各種族の規格外たちの名前を候補に挙げてそれを付けようとする。

いや、ワレはそんな竜外な竜になるつもりはないぞ。

ごくごく普通の竜だ。

特に、人族の規格外は指先一つでマ物たちを殲滅した人外だぞ。

ワレでも、そんなことはできん!

あるじは本気で真面目に考えてるのだが、ワレはそんな者たちのようになれないので竜生かけて必死で説得した。

あるじワレの説得の不承不承ながらも納得した。

それで、覚えやすくワレの名は『シルヴァ』となったのである。


あるじと出会ったのは、プンクピッグの匂いにいざなわれた時だった。

プンクピッグは、捕獲するのは簡単だが適切に焼くのが難しい。

ワレが覚えている限りは、片手で数えれるくらいだ。

冒険者らしき者たちが、プンクピッグを取り囲んで焼いていた。

その芳しき匂いにワレは抗うことができなく、焼きたてのプンクピッグをその冒険者らしき者たちから、無断拝借した。

ものすごくうまかった。

ただその時、プンクピッグを彼らから持ち去った時に背筋が凍るような殺気を感じた。

人間如きだ。

きっと、気のせいであろう。

人間は矮小な存在だ。

ワレに、比べればちっぽけなのだから気にしなくてよい。

そんな思い込みがいけなかった。

あの冒険者らしき者たちの中で、一番か弱き者がワレの前に現れた。

あるじのことだ。

はっきり言おう。

見た目だけで、侮っていたのがいけなかった。

ワレが使う魔法は人族にとって強力すぎるのだが、あるじは魔法のことわりを物理的に無理やり捻じ曲げてワレの魔法を破壊した。

普通のマ物たちや他種族、ましてや真王でも絶対にできないであろう。

真王でさえ勝てない人族最凶の魔法使いマリーナでもできない。

人族最凶の魔法使いマリーナ。

その昔、真王は魔物とマ物の頂点に立つ者としては相応しくない調子に乗った痛々しい奴であった。

そんな痛々しい奴であった時に、真王はマリーナ(当時、幼女)に出会った。

自分の方が強いと思い込んでいた真王は、あっさりマリーナに敗北。

以降、真王は 幼いため無邪気で残酷なマリーナの気が済むまで魔法による真体実験を受けたそうだ。

その時に、真王は色々なモノがマリーナの手によって折られたらしい。

そして、月日が流れマリーナは新たな獲物を求めて真王の元から旅だった。

ワレたち、マ物の望みを知っているだろうか?

それは、自分より強い者に仕えることだ。

弱者などいらん。

かんたんに言えば、あるじワレの求める要素を満たしていたのだ。

あるじの得意魔法を知った時は頭を抱えたものだ。

だが、それこそ他人を騙すための偽り。

あるじによると、それを知った時の周りの反応が面白いとゲスい思考で笑って言っていた。

そんなあるじは、現在では廃れた『10の水晶玉を集めると願いが叶う』を実行しようとしているようだ。

水晶玉は、『この世界のために、本当に叶えなければいけない願い』を持つ者でないと集めれない。

あるじが、それを実行する経緯を聞いた。

ホワイトキャットが原因だと断定しかできない事件が起きているのだ。

あるじの出身地の国の国王の妹が、原因不明の病に罹ったと噂で聞いたそうだ。

その噂を語るあるじの笑顔が、寒々しいほどでものすごく怖かった。

この時、ワレあるじに逆らわないことを固く決意をした。

ワレは、その水晶を知っているのであるじの所属する冒険者パーティーの人族と連携して、水晶を順調に集めて行った。

その間に、あるじに冒険者パーティーの仲間たちについて聞いた。

その中に、真王を恐怖の底に落としたマリーナがいたのには心底驚いた。

マリーナは圧倒的な暴力(魔力)で他者を蹂躙するが、あるじは最小限の力(魔力)で他者を圧倒する。

あるじの所属している冒険者パーティーのことを聞いている時に思ったのだが、あるじとマリーナだけで世界征服できそうな気がしたのは気のせいではあるまい。


あるじの所属している冒険者パーティーだが、リーダーはその日の朝食を兼ねた会議で全力で押し付け合う。

ワレあるじの下僕なのだが、そんなの関係ないとばかりにワレにも、責任が降りかかってくる。

これは、負けてられんぞ。

ワレも、責任を押し付けようではないか。

「年長者なんだから、お前がやれ」なんて奴もいるのだが、ワレに責任を押し付けようとしているのが見え見えだぞ。

そんなこと考える奴の思い通りになってなるものか。

気が付けば、ワレも残念集団の仲間入りしていた。


願いを叶えるホワイトタイガーを呼び出すための聖地に着いた。

ホワイトタイガーは、水晶玉を集めれば呼べるものではない。

正確な場所、正確な呼び出し方法、本当に叶えなければこの世界が禍に見舞われる願いでないと、ホワイトタイガーは願いを叶えたいと思う者の呼びかけに答えることはない。

そして、我らの呼び掛けに答え現れるホワイトタイガー。

あるじたちの願いを聞いたホワイトタイガーは、「その『願い』を叶えることは、この世界の守護神ホワイトキャットに禁止されているからできない」とほざきやがった。

ホワイトキャットがこの世界の守護神だと。ふざけるな。

アレは、世界に災厄だけをもたらす禍津神だろう。

それを聞いたあるじは、即座にホワイトタイガーを強力な魔法で魔法攻撃。

驚くホワイトタイガー。

攻撃を魔法で追撃するマリーナ。

ここは出番だとホワイトタイガーに私怨を込めて炎を吐きだすワレ

さらに、逃げ場をなくすために追い打ちをかける仲間たち。

とどめとばかりに、最悪最凶の魔法をホワイトタイガーに超全力を出して魔法を放つマリーナ。

追い打ちをかけるように、超巨大ハンマー(ワレを倒した時よりもはるかにデカイ。もちろん、重力軽減魔法をかけている)で、重力を千倍以上乗せてホワイトタイガーをぶん殴ると同時に精神攻撃をするあるじ

あるじとマリーナによるホワイトタイガーへの攻撃を見ていたワレと仲間たちは涙目。

おもに、あるじによる精神攻撃で心が抉られていくホワイトタイガーの様子を見て。

ホワイトタイガーに早く屈服しろと祈った。

変わり果てて何の生き物か分からなくなったホワイトタイガーは、あるじとマリーナに涙ながらに屈服し這いつくばって許しを請うように願いを叶えさせられた。

去り際に、ホワイトキャットへの恨みを言うかのように国王の妹が原因不明とされている病気にかかった経緯を暈しまくってバラしていった。

あるじワレには、暈しまくっても意味がなかったわけだが。

その後、ホワイトタイガーはあるじたちの願いを叶えて国王の妹は病から回復する。

そして、我らはギルド経由で国王に呼び出された。

国王は、我らに褒賞を与えようとした。

あるじと仲間たちは、必死に全力で拒否している。

そこまで拒否しなくても思ったのだが、あるじによると大人しく褒賞を受け取ると後々面倒なことに巻込まれるから、受取りたくないのだという。

なるほどなと思った。

本日の我ら冒険者一行のリーダーのカーライルは褒賞の件を有耶無耶にすべく、ワレあるじの共同制作の報告書を国王に受け取らせた。

その報告書を読んで視線を険しくさせる国王一同。

国王と近くにいる偉い身分の一人は、怒りが突き抜けているようだ。

褒賞の件を有耶無耶にさせるべく我があるじが、国王の妹を病にした元凶の処罰を進言した。

処罰としては軽すぎる『自害』を。

国王は難色を示したのだが、あるじはホワイトキャットが関わっているのだから、手早く処罰が実行できる方法をと求めたのだ。

ホワイトキャットの代々の被害者であるこの国の王たちのためにと。

ホワイトキャットの野望を挫く一つ目の方法としては最適だろう。

国王は納得し、ホワイトキャットが動く前に迅速に動くことを約束した。

そして、その話し合いの最中、我らは城から脱出した。

翌日、ギルド経由で国王の妹殺害未遂犯を国が処罰したことを報告された。


ホワイトキャットは、自分のための遊戯が我らに阻止されたため次の遊戯をするための準備をしているようだ。

カーライルがそれに気付いて、真王を倒そうと言っている。

この世界で、真王が一番平和的な生き物なのだが...

それを聞いたあるじとマリーナが、爆笑しているのを視界の端に見た。

それを見たワレは複雑な気分になった。

カーライルに、あるじとマリーナの方がヤバい生き物だというべきなのだろうか?

真王城に着くと、マリーナの元に全力疾走して真王を見た。

次の瞬間見たのは、土下座をしている真王の頭を全力で踏みつけているマリーナだった。

ワレは、目を逸らして見なかったことにした。

そして、真王はマリーナの下僕になった。

あの真体実験の快感が忘れられなかったらしい。

ワレは、真王の性癖に恐れをなした。

一応、各種族の王に真王のことをギルド経由で報告した。

もちろん、彼らはそのことを当然のように知っていたのだが、実績のある我ら冒険者一行の報告としてこの世界の住民に正式知らせ、各種族と手に取り合って平和を築いていこうと建前を得られた。

各種族のトップに立つ者としては知っていても、下々の者たちに説明するには決定打が欲しかったのだろう。


ワレあるじの本当の目的、『ホワイトキャット殺し』。

われと仲間たちは、傍観することしかできなかった。

そう、あるじとマリーナが本気の本気で魔法攻撃をホワイトキャットにしたからだ。

あるじとマリーナの殺気と気迫が半端ない。

そこにあった小さな島の一つ二つ消滅している。

あるじの怒りは当然であろう。

あるじの持つ魔力は、ホワイトキャットに弄ばれるはずの運命を持つ者の魔力であるのだから。

だが、マリーナはどうなのであろう。

何かホワイトキャットに恨みでもあるのだろうか?

考えても分からぬことだが、ホワイトキャットのことだ。

人族史上最凶の魔女マリーナの不興を買っていたとしてもおかしくない。

ホワイトキャットは抵抗したのだが、あるじとマリーナの手によって殺された。

無残な姿になっていたのは言うまでもない。

すぐさまホワイトキャットの死体を灰塵に帰すべく、あるじは強力な炎の魔法でホワイトキャットの死体を跡形もなく燃やした。



この世界が、守護神という名の禍津神の手元から離れ、本来の世界の在り方に戻った。

長い月日を生きていたが、この瞬間に立ち会ったことは感無量だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ