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脇役~悪役令嬢の継母~

私、ジル・ホワイトプロジェクトは国王陛下の命により先日、夫であった人と離縁しました。

夫であった人は日常的に私に暴力をふるう人。

息子チャールズの方にまで暴力を向かわせないことに精一杯でした。

そのことを兄上様つまり国王陛下に隠していたのですが、結局バレてしまって離縁することになったのです。

夫であった人は、顔がよくて将来有望な人だと城内でも評判の人でした。

しかしその実態は、自分より身分の低い部下たちの手柄を取り上げ、自分の評判が高くなるように振る舞い、常に楽をしようとするような人だったのです。

学生の間にその評判を聞かなかったのかといいますと、学校内では様々な対策がされており、他人の手柄を取ることは不可能なのです。

自力でしか評判も成績も上げれません。


息子チャールズは可愛い一人息子なのですが、どうもよくないところが夫であった人に似てしまいました。

そう、『常に楽をしようとする、楽な方に逃げる』というところが。

城に戻ってからは、国王陛下と王妃様のお手伝いをしています。

息子には、王族として生きるための教育を。

やはり息子は、することをせずにワガママを言い、教師たちを困らせています。

私がそのことをいくら注意をしても、ふざけた態度をとり聞く耳を持ちません。


息子が頭痛の種になりつつある今日この頃、ドリエッティ公爵との結婚話が持ち上がりました。

ドリエッティ公爵。

溺愛する妻が亡くなり、どうでもいい娘に対して育児放棄する。

権力欲が強く、自分のためだけに娘を政略道具にしようとする男。

ただ、権力欲が強すぎるなら良かった。

この男は、優秀すぎるのです。

国王陛下は、溺愛する妻が死んでこの男が不抜けている間に過ぎたる権力欲を抑制させろと私に命じました。

結婚して、ドリエッティ公爵家に行くと公爵家と領地経営が無茶苦茶でした。

よくこれで、保っているかというくらい。

継子アニーは、ドリエッティ公爵家の使用人たちから歓迎されていない私に気を使って、使用人との仲を何度も取り持ってくれます。

息子にアニーの爪の垢を煎じて飲ませたいくらいです。

ドリエッティ公爵家に嫁いでからというもの毎日が大変です。

屋敷内、領地経営の立て直しと気を抜く暇もありません。

ここまで酷い状態にできるのも一種の才能としか思えません。

アニーは、ものすごく可愛いです。

ものすごく有名な美形侯爵の後妻になった友人の姉は、継子との関係がうまくいかずに悩んでいると友人から愚痴られたのですが、私にはそれがさっぱりありません。

アニーと実の息子より良好な関係になり、ドリエッティ公爵家の執事とメイド長が私に協力的になりました。

前妻、アニーの実の母上様はドリエッティ公爵家の使用人たちに好かれていたようで私が彼女のことを悪く言うのではないかと警戒してたとのことでした。

そして、息子の状態を執事に聞いたのですが、やはり相変わらずのようです。


執事の協力を得て、なんとか旦那様に仕事をさせることに成功しました。

なぜか、このことに気を良くした旦那様は権力を行使し、甥の第一王子ザイヤー・ホワイトプロジェクトとアニーを婚約させました。

国王陛下にそのことについて苦情を申しますと、私が送る国王陛下への私的な手紙(大半は、アニーの可愛さ語り)のせいだと言われました。

否定できないのが口惜しい。

王妃様も乗り気だとか。

こうなったら、何が何でも旦那様の権力欲を削がなければ!

帰って、執事と今後の『旦那様の権力欲失くさせ計画』の相談しないと。


旦那様を部屋から引きずり出すことに成功し、アニーの可愛さにやられ、アニーの可愛さに癒され、旦那様の権力欲を無くし、領民のために色々した改革がうまくいった頃、私は原因不明の病にやられました。

後は、息子の再教育に力を入れようと思っていましたのに...


私は、病の影響でこの頃はベッドに臥せったきりです。

旦那様は、もちろん仕事に向かわせました。

ベッドの横で息子は無表情で私を見下ろし、アニーの泣き顔にどうしようもなく切なくなってきます。

もうすぐ死ぬのだとなぜか分かりました。

息子とアニーに、心配しなくていいと伝えたい。

『もう、私はダメだ』そう思った瞬間、なぜか体全体に暖かい光を浴びたような感じがして、体力が回復したように思えました。

側に控えていた宮廷医師は、「ご病気が、治ったようですので国王様に報告しにまいります」と部屋を急ぐようにして出ました。

アニーは、私に抱きつきものすごく喜びました。

息子の方を見ると、目を見開き驚きなぜか顔を青くしていました。

翌日、旦那様が帰って来られて私の病気が治ったことに大変喜ばれました。


数日後、国王陛下の側近が内密に私と旦那様に会いに来ました。

私が原因不明の病気になったのは、息子が私の食事にだけに毒を仕込んでいたのがのが原因だったのです。

なぜ?

息子が可愛くて仕方ない旦那様は、私よりも取り乱した様子です。

私と旦那様の混乱を無視し、国王陛下の側近は息子を『国家反逆罪で自害させる』決定を告げました。

国王陛下に逆らっても無駄だと理解した旦那様は、「やっと欲しかった息子なんだが、国王陛下にも何かお考えがあるのだろう。今度、孤児院に行き子どもを引き取ってアニーに弟か妹を...!」と小さく呟いていました。

旦那様の権力欲を去勢させたら、なぜか慈愛溢れる慈善家になっていたのです。

何がどうしてこうなった!?

悪いことではないんですけど、悪いことではないんですけど。

あの時、私と執事と天使アニーは戸惑いを隠せませんでした。


息子の罪状の詳しいことは、結局は私たちに告げられませんでした。

緘口令が敷かれているということぐらいしか分からなかったのです。

後日、天使アニーと甥の初顔合わせです。

できることなら、政略的なものとはいえ良好な関係をあの子たちには築いてもらいたい。

初顔合わせで、あの子たちを二人きりにした時に私はストーカーのように物陰に隠れて、『天使アニーに何かしたら許さないよ』と甥を睨みつけていました。

国王陛下と王妃様も私と同じことをしていました。

その様子に気付いた甥が、私たちを呆れた目で見ていたのは言うまでもありません。


天使アニーが甥と良好な関係が築けた頃、甥の未来の側近たちと天使アニーを合わせようということになりました。

結果は予想通り、天使アニーは甥の未来の側近たちを仲良くなりました。

天使アニーは、マジ天使ということなのでしょう。

ただ予想外のことといえば、学校に入って色気づいた頃に甥の未来の側近たちが天使アニーを口説き始めたことです。

天使アニーは甥と婚約しているのに、甥の未来の側近たちはその婚約者を口説いて、一体どこに向かっているの!?

何がしたいの!?

最近の若い子たちは、分からないですね。


それに最近、天使アニーは「どうして、学校にヒロインが現れませんの?もし、学校にヒロインが来ましたら彼らを押し付けてあげますのに」と言っています。

『彼ら』というのは甥の未来の側近たちだと思うのですが、ヒロインって誰のこと?

ヒロインって子の謎は、これから深く深くなっていくのでした。

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