ヒロイン
とりあえず、説明不要の転生者エレノアです。
乙女ゲーム『カバンから取り出すのは、ホワイト・キャット』のヒロインに転生したの。
内容は、ヒロインであるエレノア(農民)はこの国ホワイトプロジェクトの守護神ホワイトキャットに導かれて、魔法学園に入学し攻略対象たちの誰かと愛を育むというテンプレ(笑)。
もちろん、攻略対象たちは身分の高いお坊ちゃん。
いやですねー、身分の高いお坊ちゃんのお世話係なんて。
誰が好き好んで、乙女ゲームのヒロインなんてなるかってーの。
いや、前世では乙女ゲームをこよなく愛していましたよ。
でも、現実に生贄をしろってなんの拷問ですか!
私、M属性ではないんですよ。
自分をイジメる趣味はありません!!!
この世界は、剣と魔法の世界。
そのお約束は、定番の『ギルド』があること。
まあ、乙女ゲームの世界なのでゆるっとふわっとした設定で、ゲームでは設定があるだけ状態でした。
最高ランクは、『ZAT』。
冒険者の間では、10の水晶玉を集めると願いをかなえるとウワサがあるの。
これは、悪役令嬢のあのイベントに使えるわね。
放浪癖のある叔父さんは、ギルドマスター。
先日、叔父さんの部下は最高級の胃薬を食べながら、泣きながら父さんに懇願しました。
「あの馬鹿を連れ戻して下さい」と。
ちなみに、父さんはギルドマスターな叔父よりも強いらしい。
ってことは、私も強くなれるはず!
私は叔父さんを捕獲することを条件に、父さんに稽古をつけてもらう約束をしました。
私はさっそく叔父さんを捕獲しに行きます!
待っててね、叔父さん。
私の未来の犠牲になってね♪
待ってろよ、乙女ゲーム。
あんたの好きにはさせないわ。
数日後、酒場で酔っぱらっていた叔父さんを拉致し捕獲して、父さんに引き渡しました。
父に冒険者としての稽古をつけてもらった数年後____
パーティーを組んだ冒険者仲間たちとランク不相応な依頼を達成して、夜の森でお祝にプンクピッグの丸焼きをファイヤーして、焼きあがるのを待ってたの。
みんながみんな、期待に満ちた目で焼きあがるのを待っていると一匹の竜が...!
その竜はプンクピッグの丸焼きの食べごろになった時を狙って、私たちから奪って飛び去ったのです。
この時、私たちの心は一つになりました。
「あの竜、絶対にボコる!」と。
竜はシルヴァードラゴンといって、ZATランクでも狩るのが難しいといわれているの。
ヒロイン改め、ただのエレノアは冒険者ランクZATになりました。
最高ランクZATになると特典があります。
魔法学園の入学拒否権です。
普通なら魔法学園から入学許可書が来たら強制入学ですが、ZAT以下でも優秀な冒険者は拒否できるのです。
国としても、ギルドとしても確保したい存在だから。
勉強はしなくてもいいかって?
問題ありません。
この世界はファンタジーにもかかわらず、この世界の言語はなぜか『日本語』なのです。
そう、日本語です。
大事なことなので、二度言いました。
なので、元教師の冒険者仲間から勉強を教えてもらい魔法学園に入らなくても大丈夫なくらい知識を詰め込んだのです。
冒険者だからといって侮られることのないようにと。
魔法学園も私を強制入学させようとしたのですが、ギルドでの私のランク、魔法学園で学ぶはずの知識が私にあったので、その他諸々の要素がすべて邪魔して魔法学園は私を諦めました。
ヒロインのハイスペック万歳!
さて、世間一般では『魔物』と呼ばれる者たちがいますが二種に分かれます。
まず、ゴブリンなどの魔法を使えない魔物はただの『魔物』です。
もう一つは、『マ物』。
こちらは、魔法を使える魔物です。
魔物とマ物に、私たち冒険者一行が恐怖伝説を築いて行っている最中にあるウワサを聞きました。
私の出身領の領主夫人が原因不明の病に倒れたと。
伝え聞いたことしか知らないけれど、領主前夫人が病で倒れた後領主様は領地経営が疎かになり、領民やそこに来る商人に大変な困難をもたらしたそうです。
現領主夫人は、悪役令嬢アニー・ドリエッティの継母。
悪役令嬢が、悪役令嬢と呼ばれるきっかけとなるのが悪役令嬢にとって実の母以上に慕う彼女の死なの。
悪役令嬢の実母は、『女』であることを優先し『母』となることを拒否した美しい人。
対して、継母は悪役令嬢にとって『はじめから母親』。
この悪役令嬢の継母は、領民から慕われています。
領内の子どもたちの識字率を上げ、スラム街などの衛生環境の悪い所を少しずつ改善しているなどなど。
ひょっとして、転生者で内政チート!?
まあ、そんなことはどうでもよくて冒険者仲間たちと悪役令嬢の継母を助けるために、伝説(笑)の水晶玉を集めようということになった。
実は、冒険者仲間たちと私は同じ領地出身なのですよ。
これは時間との戦いなので、私たちは別々の行動をすることに。
冒険者仲間たちと別れた数日後、私たちの食べ物を奪い去ったあのシルヴァードラゴンにやっと会えた。
私は問答無用とばかりにシルヴァードラゴンに襲いかかる。
シルヴァードラゴンは、私の攻撃に対応すべく自分の周りに即座に結界を展開したのですが、私はそこに結界が存在しないというように結界をいとも簡単に壊す。
甘い、魔法なんて気合と根性で破壊したり、紙くず同然に切り刻めるのですよ!
シルヴァードラゴンが驚いている隙に、私は武器を長剣からでっかいハンマーに持ち替え、一方的にシルヴァードラゴンをぶん殴る。
結果、なぜかシルヴァードラゴンは私の下僕になりました☆
シルヴァードラゴン改め下僕のシルヴァの助けを借り、順調に伝説(笑)の水晶玉を集めて行ったの。
旅の途中、シルヴァは私の料理の腕に文句を言ってくるの。
私は、『焼き』専門なのですよ。
冒険者仲間たちといる間は、私の料理の担当は『焼き』でした。
冒険者仲間たちとはそれぞれの得意分野で分けて料理を担当していたのですよ。
食材を探すとかその食材を切るとか。
やはり、食べ物は最高の状態で食べたいですから。
シルヴァに私の得意魔法を聞かれたので、生活密着型と答えたらビミョーな顔をされたの。
しまいには、「魔法の使い方が違う」と頭を抱えてた。
おかしいな。
冒険者仲間たちはそんなことを言わなかったのに。
前世で読んでいたとある小説には、生活密着型の魔法使いがいたので、私は今世でそれに倣ったの。
パクリともいう。
呆れる前に考えても見よう。
前世の発達した科学の恩恵を受けてダメになってしまったダメ人間が、異世界のファンタジーな世界に転生すればどうするのか?
答えはカンタン。
衛生面と精神の健康のために、生活密着型の魔法の開発をするのですよ、必死で。
このことを始めに考えた作者様は、天才ですね!
おかげで私はその恩恵にあずかれて、前世の衛生環境からすればちょっとアレな世界で病を患うこともなく健康に生き抜いています♪
伝説(笑)の水晶をすべて集め終えた私と冒険者仲間たちは、ホワイトタイガーを呼び出し願いを叶えさせました。
そして、やっと悪役令嬢の継母の病気は全快したのです。
ホワイトタイガーは、ものすごく悪い顔をして嬉々として悪役令嬢の継母が病気になった経緯を暈して語りました。
そして、そこから何もなかったかのようにニヤリと嗤って消え去りました。
数日後、私たちはギルド経由で王城に連行されました。
悪役令嬢の継母は、死にキャラだったのであまり詳しい設定がなかったのですが、なんと彼女は王妹だったのです。
国王陛下は、妹である悪役令嬢の継母を溺愛していて彼女が病気になった時に治療法を必死になって探したそうです。
国中の医師と相談しても、治療法が見つからない。
病気の進行度合いから見て、治療法を見つけるのを諦めなくてはいけなくなった時に、ホワイトタイガーが急に現れて悪役令嬢の継母の病気を治して消え去ったそうです。
なぜか、ホワイトタイガーはボロボロの状態で現れたそうです。
そのことを不思議に思った国王陛下は、ギルドに問いただしギルドは
私たちが伝説(笑)の水晶玉で悪役令嬢の継母の病気治すことを願ったことをばらしたのです。
悪役令嬢の継母が、王妹だなんて全く気付かなかった。
気付いていたなら、ギルドマスターの叔父さんを脅して頼んだのに!
国王陛下が、私たちに報奨を与えると言われたのですが私たちは全力で拒みました。
こういう時に報奨を受け取ると、後々絶対に面倒なことに巻込まれかねないですから!
その時に、私たちは悪役令嬢の継母が病気になった経緯を調べた調査書を渡しました。
これを読んだ国王陛下は大激怒。
自分が溺愛する妹を苦しませた原因がアレだなんてと。
国王陛下とお城の偉い役人のみなさんの様子を見た私は、国が信頼する調査団に依頼して、悪役令嬢の継母が病気になった原因を作った罪人を確実に処罰することをお願いしました。
そのことに続く、冒険者仲間たち。
国王陛下とお城の偉い役人さんは冷静さをを取り戻し、確実にその罪人を罰することを約束してくれたの。
この後、私と冒険者仲間たちはマ物たちを泣かせに行く予定です♪
それにしても、乙女ゲーム期間になったのに、どうしてホワイトキャットは私の所に来ないの?
もし来たら、私とシルヴァが全力で殺ってあげるのに。