realgame 5
声が聞こえた。
すぐ近く。そう、まるで俺の中から聞こえてきたようだった。
………………俺?俺ってたしか自分のことを僕って言ってたはずだ。
いや、そんなことはどうでもいい。
俺の中から聞こえてくる声は何なんだ?
俺はよく耳をすませてみることにした。
…………………………だんだんと声がはっきりとしてくる。
「〈……ろ……う、……きろ……や……う、起きろ‼神矢 候!!!〉」
急に声が鮮明になる。
ずっと閉じていた瞼が自然に開いた。
その行動でやっと俺は目を閉じていたことに気づいた。
そうだった。俺は神矢 候だ。全て思い出すことができた。
俺はダウンと勝負をした。
そして勝つことができたのだ。
結果としては恐らく死んだはずだが、どうにかしたのだろう。
目の前にはとても驚いた様子で俺を見るメイがいた。
メイは俺と共に行動をしていた虹野のプレイヤーだ。
とりあえずまだ生きたとか勝ったとかの実感がなかったので手をあげてばんざいをした。
今思うと意味のわからない行動だ。
メイはさらに驚いた顔をしていたが、気にせずに次は自分の頬をつねった。
………………痛い。念のためにもっと強くつねってみる。
「〈い、痛てぇ‼痛てぇよ!何してやがる!!!〉」
またあの声だ。俺の中で聞こえる声。
その正体はおそらく……………………………………。
「ダウンか?」
「〈あ?なんだよ!〉」
やはりそうだった。
俺の中で喋っているこいつは俺のプレイヤー。ダウンだ。
今。この状態がおそらくメイの言ってたアームというものなのだろう。
…………少し不便な気もする。
「…………驚いたな」
「〈何が驚いただよ、てめぇがアームしやがったくせに!〉」
『で、ですが私も驚きました。
まさかあのアームを本当にアームできるとは……、
実はダウンのアームは永久に不可能だと言われていたのです。
それに性格まで変化するとは……やはり恐ろしいですね』
「〈うっせぇ!ちょっと油断しただけだ!!〉」
どうやらこの声は他の人にも聞こえるらしい。
あまりにも現実離れした空間にいたせいで大事なことを忘れていたことに気づく。
「そ、そうだ!はやく元の世界に戻らねぇと!虹野とかがやべぇかもしれねぇ!!
おいメイ!すぐ戻せることってできるか?」
おれ自身はあまり分からないのだが俺の性格はかなり変わったらしい。
驚いた様子でメイは頷いた。
『は、はい。では、いきますよ?………………』
メイの両手からとてもまぶしい光が放たれたかと思うと、俺はあのミノタウロスに殺された場所。いや、虹野があの時にいた場所にいた。
恐らく俺のいた場所の建物が壊れていたからだろう。
「………………すごいな」
やはり現実離れしすぎている。
周りを見渡すと俺のいた場所だけではなく、そこかしらの建物が壊れてい、おびただしい血とばらばらになった死体が大量にころがっていた。
今立っているこの場所がよく残っていたと思えるほどだった。
「…………むごいな」
「〈これからもっとやべぇのが待ち受けてると思うがな〉」
「それは予想か?それともお前はゲームの内容を知っているのか?」
ダウンはめんどくさそうに答える。
「〈俺が知っているのはゲームオーバーになると俺はこのゲームをとめることができる、、〉」
だから放置プレイをしたのか……。
「〈それと自殺されるとやべぇってこと、、〉」
その設定のおかげで俺は生き残れた。
「〈最後にゲームマスターっつうのがいるってことだ〉」
ダウンは付け加えるようにもうひとつのことを言う。
「〈あ、あとアームされるとアームしやがったやつのゆうことを聞かなくちゃならねぇ…………〉」
そうなのか、それはとても便利だ。
いや、そんなことよりも……
「ゲームマスターって?どんなやつなんだ?」
「〈普段はどっかで俺達の様子をにやにやしながら見ているクソみてぇなやろうだよ!〉」
どうやらダウンはゲームマスターのことをよく思っていないようだ。
分かりやすいやつだな。
すると、どこからか声が聞こえてきた。
最近このような事が何度も起こっている気がする。
俺の日常はどこにいってしまったのやら。
〔おやおや、ひどいなぁ。僕は君達にとてもよくしているのに。
今だってこのゲームをプレゼントしてあげてるじゃないか〕
「〈いらねぇよ!こんなクソゲーなんかよ!!
ってか何のつもりでこんなことしてやがるんだ!〉」
ダウンが吠える。
おれの中にいるせいなのか、前のようにおそろしくて動けないなんてことは起きなかった。
ゲームマスターも同じように動揺も見せずに続ける。
確かに嫌なやつだ。
〔全くうるさいねぇ君はー。仕方ない、教えてあげようじゃないか〕
もしかして俺は今からとんでもない事を聞いてしまうのではないのか。
そんな感情がうまれる。
ゲームマスターはそのまま続けた。
〔僕はね、世に言う不老不死なんだよ。
そしてこの世界、運命という名の“ゲーム”をつくり、プログラム化して実行しなければならない。
単刀直入に言おうか。
僕は疲れたんだよ。
だから後継者が欲しいんだ。
そして並みの者には任せられない。
もう分かるよネ?〕
俺は思っていたよりかなりやばいことに関わっているらしい。
「〈…………まじかよ。ってことはこのゲームをクリアしたらこの世界、いや、全ての運命を手にすることができるってことか?〉」
ダウンも驚いているようだ。
〔そうだよー〕
あまりにもあっけなくゲームマスターが答える。
「お、おい。待てよ、そのゲームをもしクリアできたら俺はどうなるんだよ!」
〔おー、神矢 候かー。ダウンをアームしたんだよねー。すごいなー。君はー〕
「話をそらさないでくれよ!」
ついいらいらしてしまう。
さすがに神にむかってため口はやばかったか?
〔君達には申し訳ないけど、特に何もないよ。
その後のことなら元の日常、運命に“戻されてしまう”んだ。
クリアした者だけ記憶付きでね〕
戻されてしまう?
言い方が変だ。
そこは普通は戻してもらえるじゃないのか?
戻されるって言い方は戻されたらやばいって時に使うような言い方だ。
ゲームマスターは俺の考えも無視して、いや、言ってないから無視ではないけどひとまずの別れを告げた。
〔じゃあ僕はもう行くから、僕にもう一度会いたければゲームをクリアしていってねー。
ああ、そうすることにしようか。
神矢 候。君へのゲームクリアのご褒美は“僕と会う”ことにしようか。
じゃあねーー。次にクリアできたらまた会おう〕
その後、ゲームマスターの声は聞こえてこなかった。
「何だよあいつ。いきなり現れていきなり消えやがった」
「〈言うなればお前らの住む世界での神という存在だな〉」
「神……どうやらめんどくさいことに巻き込まれたみたいだな」
「〈はっ!いまさらかよ〉」
「そうだな。いまさらだ」