realgame 4
目を開けるとそこには見たことのない景色が広がっていた。
ただ白いだけの何もない空間。
ぼーっとしていると何かに吸い込まれそうになる感覚さえあった。
はじめてみるものなのになぜか懐かしいような気がする。
既視感というやつだろう。
この空間に疑問がわいてくるが、それよりももっと気になることがある。
ついさっき、僕はミノタウロスに捕まえられて、その後死んだはずなんだ。
なぜ僕が生きているのか、なぜこんな空間にいるのか。
次々とどうしようもない疑問がうかんでくる。
その時だった。
ふと、どこからか聞き慣れない声が聞こえてきた。
不思議なことにその声を聞くとだんだん落ち着いてきた。
『神矢 候。目覚めましたか。
この状態に驚く気持ちは分かります。
ですが、どうか落ち着いてください。
疑問などがあればその後に答えましょう。
ただしできるかぎりですが』
「あなたは誰なんですか?」
一番の疑問であろうことをおそるおそる聞いてみる。
『落ち着いたようですね。
私はメイ。メイ・カインです』
そう聞こえると同時に目の前に白いドレスを着た綺麗な女性が現れた。
『私、いや私達はプレイヤーという立場にあります』
「プレイヤーだって?」
今この状況ではプレイヤーというべきは僕達だ。
このメイという女性も同じ境遇なのだろうか。
だが、メイにはそのようにはとても感じられない。
そして、少し嫌な感じがした。
『いきなりプレイヤーなどと言っても伝わらないので説明しましょう』
「え?あ、はい。お願いします」
『あなたは虹野 華恋と共に牛鬼のゲームをプレイしていましたね?』
牛鬼とはおそらくあのミノタウロスのことなのだろう。
「はい、そうですけど?」
『まあ、単刀直入に言うとあのゲームはあなたを除いて全ての人達が私達。プレイヤーによって操作されて行われていたものです』
操作?僕以外?メイに聞くことによって疑問が逆に増えた気がする。
『あなた達はゲームでいうプレイヤーの操るキャラクターでしかないのです。
この世界、あなた達が生きてきた人生。
それは全てプログラム化された一種のゲームでしかないのです』
…………あまりにも規模がでかすぎる。
今動いていることや思っていることまでプログラムされたことなんて信じられない。
頭が痛くなってきた僕は額に手を運ぶ。
『牛鬼のゲームのことなども含めて全てはそのキャラのプレイヤーによる操作によって行われていました』
「おい、待ってくれよ。じゃあ君は僕を操るプレイヤーなのか?」
焦り、口調が荒くなる。
『違います。私は虹野 華恋のプレイヤーです』
余計にわけが分からなくなってきた。
「じゃ、じゃあ僕のプレイヤーは?
さっきの説明で僕以外はプレイヤーに操作されてたって言ってたけど……」
『今、ここにはいません。
ついでにこの空間についての説明もしましょう。
この空間で私達はあなた達、キャラを操作しています。
今のように私が何もしなければ操作はオートモードとなり、虹野 華恋自身が動くことになっています。
そしてここは私だけの空間。
プレイヤーには各自の空間があります。
私達はこの空間のことをBOXと呼んでいます。
そして今あなたに死なれると私が困るのでここに呼んだということです』
分かりやすい説明だ。
だいたいのことは理解できた。
どうやらとんでもないことに巻き込まれたみたいだ。
「で、僕のプレイヤーは?」
さっきメイはここにはいないと言った。
ということは僕のプレイヤーはいるということだ。
『ああ、話がそれてしまっていましたね。
私があなたを助けた理由はそのあなたのプレイヤーに関わることです。
それは、あなたにあいつをアームしてもらいたいということです』
また話がそれた。
「アームってなんですか?」
『説明し忘れていました。
キャラクターがプレイヤーと勝負をして勝てた場合、そのプレイヤーを取り込むことができます。
これがアームです』
勝負……か。
「僕のプレイヤーはどんな人なんですか?」
『ああ!すみません。また話がそれてしまっていましたね。
口で説明するだけではあれなので実際に見てもらいます』
「あ、はい」
『ちなみにあなたのプレイヤーはゲームを放置しています。
まあ、“あなたは自殺なんてしないでしょうからね”。
だからあなた以外のキャラはプレイヤーの操作によってゲームをプレイしているということです』
自殺…………その言葉が妙にひっかかった。
メイに聞こうかと思ったがその前に僕の体が急に光始めた。
「えっ?うわっ!なに?なにこれ!?」
情けない声がでる。
そして……“なにか”が出た。
それは見ただけで全身が震えだしてしまいそうなまがまがしいオーラを放った男だった。
〈なんだよ。いきなり。俺のじゃましてんじゃねぇ!〉
その場から逃げ出したくなるような悪寒と恐怖がおそう。
メイも怯えている。
『こ、この方の名はダウン。ダウン・ブレイク。
あなたのプレイヤーです。
そしてプレイヤーの中でも恐れられている破滅の権化。
キャラキラーのダウンです』
〈あ?なんだよ。お前は。ん?お前は俺のキャラじゃねぇか。
放置が気に入らねぇってか?
俺をアームでもしてみるか?
やれるもんならな!
はははははははは!!!〉
どうやら僕のプレイヤーはかなりヤバイやつらしい。
最悪だ。こんなやつに勝てるわけがない。
『あ、アームを失敗すればその時点でゲームオーバーとなります』
今、この状況でのゲームオーバーとは死を意味するものだ。
でもこのままもどってもどうせすぐに死んでしまうだろう。
こいつを取り込むことができたら僕はこのむちゃくちゃなゲームをクリアできるかもしれない。
「やるよ。僕がそいつを。ダウンをアームしてやる!」
声が震えている。情けない。
〈……!はっはははははははは!!おもしれぇ!久々におもしろいことが起きやがった!
いいぜ、やってやろうじゃねぇかよ〉
僕はとんでもないことをしてしまったのかもしれない。
だけど今はもうこの方法しかない。
〈勝負方法は簡単だ。
俺をここから一歩でも動かせれば勝ちだ〉
もう後戻りはできない。
僕は雄叫びをあげて突進した。
「う、うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
結果は予想通り。ダウンはびくともしない。
鉄の壁にぶつかったような衝撃がはしる。
『神矢 候。ここでは何かを思い浮かべばその思い浮かべたものがでてくるようになっています。
精密なものこそより思い浮かべるのが難しくなります』
「何で今言うんですか!」
今、この状況では一番大切なことだ。
『すみません。忘れていました』
とっさに僕は巨大な石球をイメージした。
………………出てこない。
〈おいおいどうしたんだよ、あと30分以内に動かせなければゲームオーバーだぞー?〉
完全に面白がられている。
「で、でてこないぞ!?」
『あ!すみません!思い浮かべた後にイメージと言わなければいけないのでした!』
「くっ、いつもいつも大事なこと忘れないでくださいよ!」
巨大な石球をイメージ…………できた!
「い、イメージ!!」
何もないはずのところから石球が現れてダウンへと向かっていった。
ダウンに石球が……ぶつかった………………。
バゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!
凄い音と爆風が飛び交う。
ダウンは………………動いていなかった。
もうこんなにありえないことが続いているのだから今さら驚くことでもない。
その後、僕はいろいろな物をダウンにぶつけた。
だが一歩も動かせない。
時間は後、5分だ。
僕は最後の策を試すことにした。
最後の策は…………自爆だ。
メイは前に説明する時にこう言った。
自殺はしないだろうと!
つまり自殺されるとダウンは困る!
これはただの憶測だ。
ダウンにとって何も困らない、またはそんなに困らないのなら僕はただ死ぬだけだろう。
だがもう他に手はない。
ダウンが僕が自殺するのを阻止するために動く。
この予想に全てを賭ける。
もう自分がどうなろうとどうでもいい。
僕は爆弾を思い浮かべた。
「イメージ!!」
爆弾が出てくる。
〈はっ!それで俺を動かすってか?無理だよ、諦めな!今さら爆弾なんかで吹き飛ばねぇよ!〉
ダウンは勘違いしてくれているようだ。
僕は爆弾を爆発させた。
〈なっ……!はっ!?〉
ダウンが驚く。
意識が途切れる直前。
僕は確かに見た。
ダウンが僕の元へ駆け寄るのを。
ぎりぎりの勝負だった。
ダウンは僕の操作を放置していた。
僕のことなどどうでもよかったのだろう。
だからこそ確信が持てなかった。
怖かった。
メイのあの一言だけに命を賭けた。
僕はその絶望的な可能性に打ち勝つことができたのだ。
意識を失う直前。僕の心は満足感に溢れていた。
だが、このまま死んでしまう可能性もある。
ダウンが僕を助けようとしても、助けられないかもしれない。
もう僕の体はばらばらなのかもしれない。
アームしたりいろいろなことをやってもどうにもならないのかもしれない。
だけど僕は勝ったのだ。
その勝利というものに僕は酔っていた。
ああ、もう一度こんな勝負をしてみたい。
もう一度…………………………
ああ、そうだったね。賭けはまだ終わってない。
どうも読者のみなさま。メロルです。今回はこの作品をご覧いただきありがとうございました。このrealgame 4を出すことがかなり遅れてしまいましたことをお詫びさせていただきます。これからはもっとはやく投稿できるようにつとめますので今後ともよろしくお願いします。よければレビューやコメントなどもしていただけるとうれしいです。では次話でまたお会いしましょう!