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二、出陣

(2012/06/16)里菜の外見について、周囲が受け入れているかどうかについての表現を若干変更しました。隊の人に全く受け入れられていないような書き方だったんですが、「あれ、レスティさんのフォローの効果は?」とあとで疑問に思ったので。

 ふはー。疲れたー。……私は、ベッドの上に倒れ伏していた。

 王妃様の部屋に行ったら、王妃様も既に明日出陣ということをご存じだった。で、これからしばらく着せ替えができないと思ったのか、今日の王妃様の熱意はいつにも増してすごかった。とっかえひっかえ着替えさせられた挙句、食事にもドレスアップしたまま出席させられた……。

 ハーレ城での夕食は、基本的には皆で広間で食べることになっている。皆が揃っている場での食事というとやはり作法とかも気になるし、おまけにドレスアップしている時の食事の作法というのは、色々と面倒。そんなこんなで、情けないことに食事で疲れ果ててしまった……。

 倒れ伏してる私を見かねて、レチュアさんが声をかけてきた。

「リナ様?お休みになられるなら、ドレスはお着替えになってくださいね」

 ああ、そうだな……皺になる……。

 着替えて、あと、明日の準備をしておかなきゃ……。あ、しまった。

「……レチュアさん、出陣の時って、何持ってったらいいの?」

 何を準備したらいいかわからなくて、情けないながらもレチュアさんにそう訊いたら、レチュアさんは言った。

「準備なら大体しておきましたから、リナ様はお休みになってください。明日からは大変でしょう?」

 で、私はお言葉に甘えて、とにかく眠ることにした。


 翌朝。私はレチュアさんに手伝ってもらって、出陣の支度をした。とはいっても服装は大して訓練時と変わらない。

 まずは幅広の布を胸に巻き付ける。そうしないと、動くのに邪魔なんだもん、胸が。まあ、つまりブラジャー代わり。

 そういえば、散々騒いだパンツの件は。あんまりにも私が嘆くので、哀れに思ったのか、レチュアさんが作ってくれた。ゴムはないから紐で縛るんだけど、とても重宝している。裁縫が得意な人を世話係にしてもらって良かったなあ。

 で、お次は肌着と胴着とズボンを身につける。その上から鎧を着るわけだけど……私が使うのは、金属片をつないだもので胸元だけを覆うタイプの鎧だ。

 もっと、全身くまなく覆うようなのを使うようにも勧められたんだけど……そうすると重くて動くのがちょっとねえ。で、動きと防御とを秤にかけた結果、最低限の防御でいいや、ということになった。なにしろ、動ければ相手の剣から逃げることも出来るけど、動けないほど重すぎたらどうしようもないもんね。

 もっとも帯も防御になる程度の物だし、肩とか小手とか脛もそれなりの防御はする。小手あてや脛あては、袖やズボン裾を押さえる役も果たしている。というのも、布地自体の伸縮が悪いので仕方がないんだけど、胴着もズボンもかなりだぼだぼしているんだよね。

 さて、これで剣を腰に吊せば、用意は万端、かな。

 レチュアさんが用意してくれた荷物を肩に掛けて、レチュアさんに話し掛ける。

「それじゃあ、レチュアさん。行ってきます。どうも長い間、お世話になりました」

 そうしたらレチュアさんは私の肩にマントを掛けてくれながら、言った。

「ご無事のお帰りを。私はリナ様のお世話をもっとさせて頂くつもりですから」

 彼女は金具で私のマントを留めた。

「……いってらっしゃいませ」

 ――そうして私は城を出て、広場へと向かった。


 広場では、第八大隊の面々がざわざわと集まりつつあった。

 第八大隊は、騎兵約百と歩兵約千からなる。歩兵の大半はあちこちから徴兵された人々だ。私が一緒に訓練をしていた専業兵士達は自前の馬を持っていて戦時には騎兵になる。

 そして、大隊の中は十に分けられて、それぞれを小隊と呼ぶ。私が加えられた小隊は、第三小隊で、騎兵が小隊長を入れて十一人、歩兵は……何人だろうなあ。

 その第三小隊の集まってる場所に行くと、小隊長が馬を引いて現れた。そして私に手綱を渡して、言った。

「お前のだ」

 えええ!私に騎兵の資格はないぞ!――と思って、意見を述べようとしたけれど、意見を述べられるだけの言語力がなかったもので、思わず口をぱくぱくさせてしまった。……訓練中は、相手の言ってることがわかれば特に困らなかったので、小隊長には翻訳機が渡ってないんだよなー。数も残り少ないことだし。

 でも、口をぱくぱくさせていることで、何を言いたいのか察してくれたらしく、小隊長は言った。

「騎兵と訓練してたんだからな、お前も騎乗するといい。乗馬術も、馬上での戦い方も訓練しただろうが」

 あのーでもー、この馬は誰の?と口をぱくぱく。

「馬はリーヴ様からの下され物だ。いい馬だぞ」

 あーうー。

 しかし。無言での反論(?)むなしく、小隊長は手綱を私に押しつけたまま、隊列の先頭に行ってしまった。

 はあ。

 手綱を持ったまま、顔を上にあげると、馬と目が合った。はっきり言って馬は、好きだ。

 言葉も通じないんだから仕方がないけど、三ヵ月も一緒に訓練してる割に、隊の人達とはほとんど喋ったことがないのだ。やっぱり私の風体も悪いしなあ。……レスティさんからの手紙というフォローのおかげで、あからさまに何かを言われたりはしないんだけど。

 でも馬は風体を気にしないし、言葉も通じないのが当たり前だから、一緒にいるのは気が楽だ。乗るのもかなり上手くなったしね。まあ、乗れないことには馬上訓練なんか話にならないしなあ。

 鞍とかの装備もちゃんと整えられてる馬に「よろしく」と挨拶をして、それから荷物をその馬にくくりつけた。――戦場では荷物は外すけど……そこへ辿りつくまでは、旅と変わらないので、騎兵は自分の荷物は自分の馬にくくりつけるのだ。

 準備を終えた頃、王様と共に隊の出発を見送りに広場に出てきていた王妃様が、わざわざ傍まで来て、声を掛けてくれた。

「無事で帰ってきてね、リナ。貴女がいない間に、貴女にぴったりのドレスを作っておきますからね」

 ……何とも王妃様らしい激励の仕方だな、と思って、私はにっこり笑った。――でも、無事には帰ってきたいけど、ぴったりのドレスはちょっと遠慮したいかも、だなあ。

 王妃様は言葉を継いで言った。

「……それから、あの子をお願いします」

 私は頷きながら、答えた。

「はい」

と。王子を守れないようなら私が戦うことに意味はないもんね。

 それだけ言うと、王妃様は王陛下が待つ壇上に戻った。

 進軍合図の太鼓が打ち鳴らされて、騎兵は次々に乗馬した。私もそれに倣って、馬に跨がる。隊列を整えて、壇上の両陛下に拝礼する。そして――。


 そうして、リーヴ大臣率いる第八大隊は、行軍を開始した。


隊の規模とか出陣の時にやることがよくわかりません!

が、まあ、異世界だからいいや……。(これが異世界ものを書く大きな理由の一つです……。変なこと書いても「異世界だから」で済む……)

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