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二、草原の民《プテス》

予約投稿に初挑戦してみます。

……そして失敗して即日投稿になりました……。(日付を間違えたのでした)

 うとうとうと……と、やあっと、眠れ始めた頃、ムルーに叩き起こされた。うー、もう朝か。眠いよー。

 突然パンが飛んできた。

「ぼーっとしてないで、喰え!」

「あーうん……」

 でもロールパンの仲間だなあ。苦手だなあ。間に何かはさんだりすれば、ロールパンでもまた話は別なんだけど。仕方ないから食べるけど――しくしくおうちが恋しいよぉ。

 私がもぐもぐ食べてる間に、さっさと食べ終わった王子とムルーは、地図を広げて話をしていた。

「今は多分この辺、です。プリチュ王城からここまで、馬でも二日はかかりますから――追い付かれるとしたら、今晩か明朝くらい……」

「うん。でもこんな先まで来てるとは追手も思ってないだろうね」

「それはそうですね。でも油断は禁物ですし――。追い付かれたらやっぱり戦って血路を開くしか道はないでしょうが……」

 ムルーは少し考え込むと私の方を向いて言った。

「リナ、お前剣を使えるか?」

「使えない。――というか、使ったことない」

と私は答えた。

 ムルーは渋い顔をして。

「……男に見えてもやっぱり女だしな……使えないのか……」

「え?私、男に見える?」

と訊いたら王子が答えてくれた。

「背、高いし。髪短いから。――男の人は髪の毛長かったり短かったり色々ですが、髪の短い女の人っていませんからね」

 ふうん。でも背、ねえ……。

「背高いって、ここじゃみんな身長どれ位なわけ?」

「女の人が一テイぐらい。男の人でリナぐらい、かな。ムルーやロッフ王はかなり大きいですけど」

 じゃ、女一五〇センチ、男一六〇センチってとこか。うーん、それじゃ私でも背が高いことになるな。学校じゃ真ん中ぐらいなんだけど。


 私がパンをやっと食べ終わったので、出発することになった。よいしょっと。足に巻きつけてある靴の紐しめなおして。万が一通行人でもいた時の為に、布をかぶって髪の毛全部隠してっと。

「リナ」

 ムルーが呼んだのでそっちを見ると、ムルーが鞘ごと剣を差し出していた。

「使えなくても、一応持ってろ。ないよりはいい」

 ふむ。私はそれを受け取りつつ、言った。

「じゃこれは持っておくけど――それならムルーが保管室から持ってきた物、私に持たせてくれない?今、ムルーが持ってるでしょ」

「? それは別に構わないが――どうせお前にしか使い方わからないんだし――どうするんだ?」

「んー、切り札があるんだ。――どーせ追手は私のことを魔かもしれないと思ってるんでしょ?だったら魔のフリするのも効果があるんじゃない?――上手くすれば魔王並にこわがってもらえると思うよ」

 上手く使えれば、ね。


 そしてそれから数時間、私達は歩き続けていた。色々なことを喋りながら。

 喋っていて知ったんだけど、今日ってここでは八月二十四日なんだそうだ。

「それじゃ、旅を始めた昨日が二十三日で、牢を逃げたおとといが二十二日で……私がここに来たのが、八月二十日?」

「ええと、確かそうでした」

 ふーん。ここに来る前の地球は九月の半ばだったけど。――うーむ。私は今日で四日も学校を休んでるのかな。お父さんやお母さんやお兄ちゃんや、先生とか友達とか、一体私はどこに行ったと思ってるんだろうか。

 あれっ後方から……馬か何かに乗ってる人の集団が。追手?!と私が思うより早く、ムルーは目をこらし、王子は叫んだ。

「ムルー!追い付くにしては早過ぎるけど――追手?!」

「いえ、あれは……草原の民(プテス)のようです」

草原の民(プテス)?!本当に?!」

 王子が、私が見る限り初めて、子供らしくはしゃいだ。

「どーかしたの?王子」

「僕草原の民(プテス)って初めて見るんです!」

「王子は、プリチュ王国にいた時のみならず、ハーレ王国にいた時でさえ、年に一、二度の遠出以外では国から出たことないですからね。――この分だと、あの小群団ごく近くを通りますから、しっかり見ておいて下さい」

 ムルーが言った通り、その草原の民の小群団は近くまで来た。だけど来ただけではとどまらず、その一群の先頭を走っていた、リーダーらしい人の合図で、私達のごく近くで止まってしまった……。

 おおおおお!そのリーダーらしい人の乗ってる馬は、もしかしてユニコーンではないか!一角獣!――黒い綺麗な馬体の額から、白い角がすらっとのびている。……これは間違いなく一角獣!!うわーうわー、きれー。かっこいー!

 お馬さん(ユニコーン)にミーハーしていると、そのユニコーンの乗り手は、ユニコーンに乗ったまま、更に近寄って来て、言った。

「旅人か?お前たちは」

「ああ、そうだ」

とムルーが答えた。

 ふうん、この人若いなぁ。二十ってとこかな。若いのにリーダーってことは、身分があるか、余程きれる人かってことかな。

 と、観察していたら、向こうもじっとこっちを見た。やば。失礼だったかな。かと言ってここで目をそらしたらもっと失礼だろうし……。

 にこっ。

 笑ってみたけど、ひきつっちゃった……。

 すると、その若い男が言った。

「娘。変わった色の瞳をしてるな。どこの者だ?」

 うっやばい!目の色が人と違うの忘れてた!!

「あのですねーどこの者かと言われましても……」

「え?どういう言葉だ?それは」

 へっ。あー私は翻訳機してるから向こうの言葉、わかるけど、向こうにしてみれば、私の使ってる言葉はわけのわからない言葉なんだ~~!

「えーとえーと、ムルー!翻訳機!」

「今朝お前に渡した袋の中だ」

「あ、そうか。えーとえーと」

 何か、あせって探そうとしたら上手くいかない。そうしたらムルーが私から袋をひったくって、落ち着いて探してくれて、そして一組の翻訳機をその男に差し出してくれた。

「これを耳に」

と言って。

「耳?ああお前たちがしているようにか?」

 その人はしばらく、手のひらにのせた翻訳機を観察してから、それを耳にはめてくれた。

「えーと、わかります?」

と私は言った。

「ああ」

「どうも失礼しました。初めまして」

 その人はまたしばらく私を見て、それから言った。

「……変わった奴だな、お前は」

「そうですか?たかだか目の色が違って、言語が違うくらいでしょう?」

「それだけでも大したものだと思うが。この星には言語など一つしかないのだから」

「え……そうなの?」

 振りかえって訊いたら、王子がうなずいた。

「大体、それだけじゃないんじゃないか?」

とその人が言うので、えっと思って正面を向くと、その人の腕が私の頭の布にのびていた。

 げっ。それとっちゃだめだよ――。だめだっつうのに、あーあ。

「ほらな」

 その男は、にやっと笑った。――後ろの、馬に乗った団体さんは驚いていた……。

昔この部分を読んだ友人から「言語が一つなのに、どうして翻訳機があるの?」と訊かれました。うっかりしていた……わけではなく、伏線なのですが、伏線が回収されるのはかなり遠い先の話……。

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