おちゃかな シゃべる
「精神的にも喰われた人間は何をしでかすか分からない。離れて正解でしたね」
「瓢島も無人化していたりして…」
ゾッとするも、通信機には断続的に同じ地点から連絡が来ている。瓢島なら、人が生存している?
「どうせまともな状態じゃあないでしょうね。行かない方が良いです」
「南闇さん、て冷たいお人ですね」
「はは、お生憎様。僕は血も流れていないし、人ではないので」
「そーじゃなくて!」
──行けたとして?
倒町で見た地獄絵図を再び経験するのなら、我関せずをつらぬいた方がいい。ミス(Miss)は眉をひそめ、疲労に息を吐いた。
「化け物が疲れるなんて、まだまだですね」
「精神的に疲れたんです…」
「そのサスマタ、気に入ったんですか?ヒトを殺りたくて仕方なさそうですね」
「はあっ!?こ、怖いんですっ!」
交番から出て、サスマタを手に辺りを見回しているのを目ざとく観察している南闇に意地悪いヤツだと苛ついた。
「で、これからどうします?」
「……、天竺の渡世さま。島の火口に、いる」
「え?てんじくの?えっ、誰?」
「あたちゃ、」
今まで壊れたテープレコーダーの如く鳴いていた犬が突如、人語を喋ったではないか。
「しゃ、シャベッタアアア!!!」
ミス(Miss)がびっくりして後ずさるが次の瞬間、オチャカナ〜〜~とお馴染みの鳴き声を発した。
「何を今更」
「い、いや、今フツーに女の人の声しましたよ!」
顔つきからしてこの世の者でない部類でしょう。この生き物は。
「なんだと、ドブス」
「ぎゃあああ!!またシャベッタアアア!!」
「チャカナ。チャカ。撃つぞ、チャカでな」
「演技する気もないようです」
犬の真似、舌を出してニコッと笑うもヤツを今更信用できない。
「な、何者なんですか…。また町を破壊する恐ろしい化け物だったりして…」
「チャカナ!」
「チャカナ、という生物らしいです」
「だまれ若造が」
「さっきから別の声が聞こえるんですが。と、とりあえずチャカナちゃんと呼びます!」
「みす、みす」
やっとオチャカナちゃんが、喋りました。




