橋は黄泉路
あのラファティ・アスケラが橋から手を振っている。もう一人、リクルートスーツ姿の女性がいた。そちらは見知らぬ人。
奇妙な雨に打たれ、ずぶ濡れになりながらも二人は川を覗き込んでミハルに言う。
「最期に貴方に会えてよかった。あちら側へ行く前に渡したい物があったんです!」
「あちら側??」
あっちは県庁所在地があるだけであるが、何か嫌な予感がした。
「今そっち行くけん、待ってろ!」
人を踏みつけるのは気が引けるが、瓦礫やらを足場にして無理やり近寄る。
「ダメですよぉ! 元に戻れなくなってしまいます!」
知らない女性に、慌てふためかれ困惑する。赤い雨は横殴りで髪を染め、風がなびかせる。
「今、橋を渡ったら二度と此岸に戻れなくなるんです。ミハルさん、これ!」
彼が何かを投げたので、咄嗟に受け取った。小瓶。中には白い毛束が入っている。
「なんなんこれ?」
「役に立つはずですっ! パーラムさんからもらいました。お守りになるって、でも俺らには要りません! あっち行っちゃいますからーっ」
ミハル・ミザーンは彼らの佇んでいる巨大な橋が薄ぼやけているのに気づいた。
「おめえら、まさか彼岸にいくのかよ? そんなんありか?! おーい!」
唸る風の中でラファティ・アスケラがニッコリと笑った。
「ミハル・ミザーンさん! 貴方の事、すっげー──」
「え?? なんだ?!」
彼の叫びはかき消され、後味の悪さだけを残して川は流れて行った。
白い毛束はフンワリと光を帯び、普通の野生動物のものと違うのだと主張している。
「こんなんもらってどうすればいいんよ」




