第三の眷属
バティはきたる衝撃に身を固めていたが──五感は何も捉えられず、無、だった。ギュッと閉じていたまぶたを開けると、再び視界不良に見舞われた。暗くてどこにいるか伺えない。
(……僕が、死ぬ? 笑えるな。しかも死後も意識があるなんて)
阿字母が創造した異空間とはまた違う。漠然とした空間。絶無でありながら、どこからか雨の匂いを含んだ風が吹き込んでいる。
外は雨が降っているのか?
仄暗さのある景色に目が慣れてくると、美麗之前と従者二人がいる。穴が開き落下したが、奇跡的に助かったようだ。
「どうやら大惨事になってしまったようだな。皆の者」
ハキハキとした声音に、バティは理解する。彼女が導いてくれたおかげでここにいるのか。
「別亜。君も無事だったのか」
「ああ。失礼な事をいうが、あらかじめ予防線ははっていたのだ。何が起きたかはだいたい把握しているが、二人に任せたのに、ここまでこうなるのは己も予想外だ」
「す、すまない……議論中に多多邪の宮が乱入したんだよ」
別亜と呼ばれた上背の女性はフム、と印猫の従者たちを見やった。
「すみません! 私が不甲斐ないばかりにっ」
「い、命だけはっ」
「己にそのような役割はない。まぁ、久方ぶりに5使者がやっと揃ったのだ、話を進めよう」
そう。彼女は5使者の内の一人であった。それも第三眷属である。こうして顔を合わせ、集うのはいつ以来だった。
バティは己らがどこまでも手遅れなのに、苦虫を噛み潰した。
はあ、と美麗之前が溜息をつき、立ち上がる。
「バテイ。異論は無いわよねえ? 印猫は処分、第二眷属の座は従者に譲り……多多邪の宮は……。それよりも多多邪の宮と印猫はどこへ行ったのかしらぁ」
「もう、それでいい。こうなってしまえば否定はできない。別亜、どこに居るか分かるか?」
始祖・阿字母を隠し、また同胞を照らし導く。それが別亜に課された役割であった。監視者である美麗之前とは少し異なるが、眷属たちがどこにいるかを把握する異能を有している。
それは頂点である多多邪の宮も例外ではない。
「ええっ? あの二人とまともに会話ができるとは思えないが……仕方あるまいよ。案内しよう」
杖をカツン、と床らしきものに突き立てると──光の道筋が現れた。
「もう、めちゃくちゃだわぁ。厄年よ! 厄年っ」
疎遠だったんです、この人たち。




