ひとだけ が いない しま
数軒、おっかなびっくり探索するも『化け物』は出てこなかった。ペットが悲しげに残されていたり、元々?いた地縛霊もどきの化け物が怒り狂っているのみ。
(なんなのあれ?私が人じゃなくなったから見えてるだけ?)
変な化け物以外、ガランと人がいない。
「なるほど。久田という男性や他の人たちが逃げたのはこれが原因だった、と」
朝食が、食卓の上で腐敗していた。衣服だけがバラバラに床に広がっており、テレビもつけっぱなしで雑音になっている。
ゲストハウスか。
2段ベッドの上にも衣服があった。
衣服がなければ、やはり人間の生身だけがワープして消えたみたいだった。
道にも、バイクが倒れていた。真横には当然ながら衣服があった。郵便局の役員。
「衣服だけ、残るなんて…」
「地球から目覚めたエイリアンに食べられてしまったみたいな、そんな状況ですね」
「え、エイリアン?!」
「知らないんですか?ミス(Miss)さんは今まで娯楽もなく、どうやって過ごしてきたんですか?」
呆れ、そんな気色を察知してムッとする。
「本は読んでましたよ!!魔法使いが活躍する本とか、吸血鬼が成長する本とか!」
「また児童向けの書籍ですか」
「こ、このっ、じゃあ、南闇さんは読書していたんですか??」
「人並みには。貴方よりは頭が良かったので、昔はね」
皮肉でもなく言い放つ憎らしさ百倍の男は颯爽と、食べ物に集るハエを握らり潰した。
彼は虫が嫌いだ。
(虫も、一応は掃除屋って言われてるのになあ)
テレビか何かで耳にした知識。ミス(Miss)は南闇と自然界の掃除屋と言われる虫たちは同じにしか見えなかった。
骨を食う、人を後片付けする生き物。
そんな言葉を吐いたらマジカルシャベルで殴られるに違いない。
ちんまりとした離島にも交番がある。古き良き昭和の駐在所、といった所か?
まあ、交番はどこにでもある。そうして例のごとく警察官の制服が散らばっていた。犠牲になってしまったみたいだ。
二人は堂々と警察のデスクを漁った。拳銃も貰い受け、一応サスマタも持つ。
化け物の姿形が定まっていないが役に立つかもしれぬ。
緊張しながらもよく分からない書類を漁っていると、メモが抽斗に無造作ながら入っている。
倒港へ、通報して本州の警察を呼ぶという内容が残されていた。島の警官は異変に気づき、抵抗しようと試みたようだ。
が、化け物に食われたのか、通報は叶わなかった。
「…。1週間前、と春夏さんは言っていましたよね?実際は2週間くらい前みたいですし、嘘をつかれたんでしょうか」
「いや…、彼女はもう手遅れだったんでしょうね」
フェリーを要請した記録が2週間で止まっている。観光スポットとして島は活動していたらしい。




