あの世この世一緒くたに
「いってえ、あれ? オイラ、生きてら……」
ミハルはてっきり穴に落下して死んだのだと確信していた、が、砂利に埋もれて、今にも圧死しそうであった。それも赤々とした砂利に。
力尽でかき分け、地表に出る。暗がりが広がっていた。
「おーい! リャクナシ、カヤスー?」
草原から一転、辺りは禍々しい色に支配されていた。赤と黒。たまに塵のような何かが舞っている。
「ン?」
頭上から仄かに光が揺らめいているのに気づき、仰いだ。頭上には人がたくさん浮いていた。
あれは、水面だ。
(ああ? どういう状況だぁ? )
自らは穴に落ち砂利を貫通した? 人間のような物体は空から『落ちた』?
「なぁにが起きてんだ? わからね。誰かー! 生きてるヤツはいねーんか?!」
いくら呼びかけても返事はない。浮遊している人はもうダメのようで、申し訳ないがまたかき分けて『水面』に顔を出さなきゃいけない。
「うりゃ!」
ジャンプしてみると意外にも身体は軽く、水中を上昇した。死体の壁を押しのけ、筏代わりにしがみつく。空は変に赤かった。まるで大火事が起きているみたいだ。
見覚えのある風景ではあった。だが、晩冬だと言うのに彼岸花が咲き乱れ、血の川が氾濫して流れている。
スーパー堤防と呼ばれたあの河川敷を浸して。
人だらけだった。瓦礫もなだれ込んで──水流に負けた倒木も草も、看板も。
死体は皆、此岸のモノで。この世の者でない部類ではない。
(此岸に干渉したってのか? まさか、落とし穴じゃなくて排出口だっんかよ)
溢れ出した異界。キャパシティを越えた死。日常を反転させる事象。
それは文字通り死の川になり、ゆっくりと流れていく。
生ぬるい風が吹き荒れる。赤い雲から血の雨が降る。奇妙な咆哮が鳴り響き、さらに堤防が壊れた。アポカリプティック・サウンド。
此岸であった世界は冥界の破片に侵食されていた。
「伝書鳩どもはどうした? 勝手に黙示録のラッパでも吹きやがったんか?」
「ミハルさーん」
どこからか声がして、ミハルは漂流物を絡ませる橋に視線を向けた。




