怒寂流
「あーあ。あーあーあーあー、アナ、空いちゃった。だれ? だれ? だれ? やったの?」
覃(のびる、ひととなる)は頭を回しながらも、その先にいる犯人を咎める。
「アナ、空けたならそれなり、だいしょーくる。くるくる。のびる、しーらない」
「だいしょう? わらわはそれを承知でやっておるのだ」
ニタリ、と獣は笑う。あの獣。獣が希死念慮、死の沼にやってきていた理由。
「お前もおなじこたえをだしたくせに」
「こたえ? こたえ、なんて、よまいごと〜〜~。じっこうに移さないと、いみない」
「そうだ。のびる、わらわをにくめ! これより此岸は死の淵に落ちる!!」
印猫 我無比女は高らかに笑い、奇妙な咆哮をあげた。歪みが大きくなり穴が肥大化し、そうして『此岸』がなだれこんでくる。
土石流の如く。
「さあ、さあさあさあ! わらわをクルシしめたテキどもよ! くわれろ! 憎悪の化身に喰われればよい!!」
錆びた鉄が悲鳴をあげたかのような、死の淵が限界を迎える。
「あはは、ばーかだね。そんなもので、此岸はほろびーない、よ」
のびるは身を丸めるとスッ、と姿形を無くした。そんな事はどうでもよかった。
印猫は哄笑し、吠えた。感情を放流し、不協和音をもたらした。
「ほろべ! テキどもよ!!」
今や彼女にとって全てが敵だった。世界にいる何もかもが敵になってしまった。




