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贅沢者の独白

「なんで、なんでよ。わえは悪くないのに……なんで、誰もわえと仲良くしてくれないの」




 底がない暗がりに落ちるのは初めてであった。今まで誰よりも上にいたから。

 そう勘違いしていたのは『多多邪の宮』だけだったのかもしれない。


(虚しい、むなしい、むなしい)


「──拒絶しないでよ。ひとりぼっちは嫌なの」


 多多邪の宮……になってから生涯、心から親しみを抱いた者はいない。いや、親愛や家族愛の抱き方を知らない。

 遙か昔、始祖に見染められ、森羅万象から切り離された。この世の者でない部類がまだ『神聖さ』を帯びていた時代。自らもその類に迎えられたのだと悟った。


 さして当時、珍しい事象ではなかった時代だったから。


 しかし神聖さを付与されるという事は人間としての自我を捨てなければならなかった。多多邪の宮はそれ以来、成長できなかった。

 阿字母はこの世の者でない部類であり、それ以上に人らしい思考回路や知識を兼ね備えていない。教育係にはなれない。


 穢土へ送り込まれ、さ迷う。いつの間にか天から降り立ったと誤認され、崇拝される。

 天も、黄泉もない。あるのは星に流れるこの時間だけの時代。区切られていく世界。境ができていく人らの認識、国。言葉。


 その都度、神、と崇められ、その際に設えられた供物や、様式を未だ取り入れて、不可思議な髪型にしている。絹のような美しい白に近い茶髪を床に広げているのも動きずらい。雁字搦めに縛られる。


 阿字母は眷属を求め、恨みや後悔、強い願望を抱く人物を救済(・・)した。

 だが掬い上げたものは皆、多多邪の宮へは感謝せず──何故だか疎ましがられたりした。


(さみしい、みちたりない)


 自分自身が求めているのは凡庸な、温かな感情だ。


(ああ、ひとりぼっちだ。いくら、手に入れても)


 ジゼル・クレマンがせせら笑い、いつだか口にした言葉が頭から離れない。

「あはは。社会性を知らない赤ん坊。君は永遠に独りのままだね、これからも、何千年も何億年も。ひとりぼっちさ」

 反論ができなかった。ジゼルとは友だちだと思えたのに。


「残念だけど、ジゼル・クレマンと多多邪の宮は別人だし、この先も親密になれるとは思えない。ごめんね。不格好な君から好意をよせられると虫唾が走るんだ」



「損得勘定での関係は友じゃない」

 美麗之前とバティの声。二人は睨みをきかせ、幼い姿をした第一眷属を牽制してきた──分かっている癖に、彼らだって損得勘定で友人にならざる得ない時があるのを。痛い程経験してきたくせに。



 わざと面と向かって泥臭い言葉をぶつけてきて。

 真似はできても、本物にはなれぬと突きつけられたみたいだ。


(むなしい、悔しい。いつになったらわえは人間になれるの)




 牙だらけの口がバックリと待ち構えている、あれは──

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