やわい幼心 片生なる
「い、印猫さまはそうじゃないっ!」
カヤスは虚勢を精一杯はり、否定する。「カヤス! やめておきなさい!」
「い、いいのっ! あーしは死んだっていい! 印猫さまが助かれば良いんだから! お願い、多多邪の宮さま、お話を聞いてください」
神に祈るように、少女は訴えかけた。
「なら、印猫は真に友か?」
有無を言わせぬ重圧で頂点は問う。それに彼女はわずかに怯んだ。
「はい、印猫さまはずーっと出会った時から貴方様を慕っておりました! 知っているでしょ!」
ハッ、と多多邪の宮はそれ邪険にあしらった。
「いいや? 印猫にはわえを食い殺そうとする殺意、拒絶が常にどこかにあったの。分かるの。そーいう気色が、わえには」
「……印猫さまは狂ってしまわれています。誰があーしたちを苦しめたのかさえ、もう分からなくなって。でも唯一救ってくれた──」
「うるさいなぁ。黙れよ。小間使いごときがピーチクパーチク」
殺気を含んだ眼光に、美麗之前が子供を庇う。死を覚悟しながらも凛とした佇まいには、普段毛嫌いをしていたバティも認めざるを得ない強さがあった。
「アナタ、いい加減になさいよ。印猫をただの厄介者としか見てないんじゃないの? 親身に向き合った事があるのかしら」
「……。何が言いたい。汝らには友だちになる代わりに願いを叶えてやったではないか。忘れたの?」
「損得勘定での関係は友じゃない」
美麗之前とバティの声が被る。二人は睨みをきかせ、幼い姿をした第一眷属を牽制した。
「貴様の悪い所は人間もこの世の者でない部類も、下等生物だと決めつけているところだ」
「蜾蝃歯禔 仏蛇吊宿禰の言う通りよ。アナタは端から──眷属たちにも、他人にも興味すらなかったくせに」
目を見開いて、彼は唇を震わせた。図星だったのか、それとも逆鱗に触れたのか。
「なれ、お前ら……てめえら、よくも! わえをバカにしたなっ!!」




