骨肉の争い
両刃の剣──バティが生前から愛用してきた鉄剣である。彼が生きてきた時代の重たい剣、その先に生まれた繊細な刀とは異なる。
無骨な大ぶりな剣を振るうと、瞬く間に豪雨と雷鳴が生じ、電撃が美麗之前を直撃した。
が、美麗之前は手にしていた優雅な扇でひと振りで薙ぎ払う。稲妻は拡散されキューブに当たり、火花を散らした。
「チッ」
さすがは格上。初手では無傷か。
バティは次なる攻撃を行う。吹きすさぶ豪雨に加え、数多の落雷、そうして雹をふらせ──目くらましをする。
「あははっ!」
剣で美麗之前をつき刺そうとするが、そこには姿形もなかった。狐火に加え狐の生首に噛まれ、布を破り毒が皮膚を腐らせるのを知る。
「アナタ、それでも武人だったのぉ?? 相も変わらず弱っちいわ」
「それは阿字母さまに与えられた力の差だ。奢るなど、甚だしい!」
ベルトの尾を薙刀に変形させ、二刀流に型を変える。戦いが不利なのは痛いほど自覚していた。だが、自らのプライドを傷つけられるのが嫌だった。
大人気ないのは十も承知である。武人たるもの、背水の陣であっても戦うものでありたい。
薙刀で狐を切り払い、キューブに一度隠れる。薙刀から更に大薙刀に変えようとした瞬間──周囲が眩いばかりに輝いた。いや、業火の如し赤い炎が空間中を満たし、雨を止ます。
「クソが」
「じゃ〜〜あ、次はアテクシね」
サッと扇をしまうと、彼女は舞うように右手をあげた。「アナタが雨好きなら、針の雨を降らしてあげる♪」
注射が空から降り注ぎ、命の危機を覚悟した。
しかし青火が入れ替わるように加勢し、医療用具を滅却する。炸裂する冷たい焔。身体をバラバラにするかのような痛みを伴い、双方は呻いた。
「お二人とも、おやめくださいまし! 仲間割れはよくないのでっ!」
幼い声音にハッとキューブの向こうをみやれば、印猫の使いがこちらを庇うように立ち塞がっていた。彼女は確か、カヤスといったか。
(第二眷属の威力は凄まじいな。端女であれだぞ。悔しいが、情勢が変わった)
「アナタあ、確か印猫の金魚のフンね?」
「はい! あーしからもお願いをしにきました。お願いです。印猫さまの行いに猶予をくださいっ」




