5使者の二人
かつて世に名を轟かせた阿字母なる高次元の存在がいた。いつからそう呼ばれ、崇められていたから分からず──周囲らは自然とかの存在の使者たちを『アイシュワリヤ』と呼んだ。
日本ではいつしか阿字母は辰狐王菩薩とさ解釈され、人間たちにも崇拝されるようになる。
直属の使者は5人。彼らは真祖からの強い加護を受け、周囲に恩恵を与える。
その霊験さはあらたかで瞬く間に、強烈に、信仰を集めた──
バティはその5使者の内の一人であり、記録する役割を担う。また阿字母を此岸から隠すために、情報を操作する。だが今はそれを全うできず、眼前にいる美麗之前と睨み合っていた。
黒天子 胡仙の美麗之前──美麗之前も使者の一人である。阿字母の全ての眷属たちを監視する、まとめ役だ。
二人はどちらも引けずに、創りあげられた空間で拮抗している。
同胞の印猫 我無比女の処分をするか、否かの話であった。
無とキューブに似た物があるだけの筒状の巨大な空間。第一眷属の多多邪の宮が創造したのではない。
真祖が創りあげた用途不明の迷宮であった。だが、ちょうどいい。
同胞を消すか、消さぬかなど物騒な話をするのならば誰にも悟られぬような場で決める方が。
「5使者の書記長として貴方を呼び出した選んだのはお分かりよねえ?」
「ああ、記録しろと言いたいのだろう。温情、と言うわけか。お前も案外、生易しいな」
「フン。何とでもいいなさいな。アテクシはあのオンナからなあんにも恩を売られた事がないのだけれどね」
鼻で笑うが、双眸はピクリとも動かなかった。
「阿字母はなんと申しておられる?」
「さあ。多多邪の宮が何も言ってこないのだし、我関せずという所かしらァ」
「そうなのだな」
二人は宙に佇みながら淡々と会話を続ける。
「アテクシはアイシュワリヤとして、総てを監視する者として印猫を処分する気でいるわ」




